hiyamizu's blog

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東野圭吾『犯人のいない殺人の夜』を読む

2021年02月19日 | 読書2

 

東野圭吾著『犯人のいない殺人の夜 新装版』(光文社文庫1994年1月光文社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

親友が屋上から落ちて、死んだ。自殺と思えない「俺」は当時の様子を探り始めるが……。(「小さな故意の物語」)直美は死ぬ直前にビデオメッセージを残した。その理由とは……。(「さよならコーチ」)岸田家の中で殺人が起きた。しかしそこには、死体もなければ犯人もいない……?(表題作)
渦巻く人間の欲望を描いた全七編を収録。エンタメの頂点を極めた著者が贈る、珠玉の短編集!

 

東野圭吾初期の7作品が収録された短編集。

 

1990年7月 単行本(光文社)、1994年1月光文社文庫

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

まだ東野さんが若かった頃(失礼)の、謎解きを主体とするいわゆる本格物の短編集だ。つまり、東野さんが、個性ある人、生活、組織などを描いて小説としての面白さを深めていくようになる前の作品集だ。短編集なので、次々と提示される謎解き問題を解こうとする面白さはあるのだが、私の好みから言えば、深みがないのでいまいちと感じた。

 

 

東野圭吾の略歴と既読本リスト

 

 

「小さな故意の物語」 初出:『小説現代』1985年11月号

県立高校の屋上から3年生の行原達也が転落死した。達也が一人で屋上の柵に上り歩いていて、ふらつき、落ちたとの目撃証言があったことから、警察は事件を自殺と考えた。
達也とは小学校時代からの親友・中岡良は、自殺するとは信じられずに調べ始める。達也の恋人で同級生の佐伯洋子、目撃者で秀才の藤尾、2年生で達也にラブレターを渡したこともある笠井美代子、ミステリー好きの木島礼子などから話を聞く。

 

「闇の中の二人」  初出:『小説宝石』1986年1月号

中学の英語教師・永井弘美が担任する萩原信二の、信二にそっくりだと評判の生後3ヶ月の弟が絞殺された。泥棒が戸締りし忘れた萩原家に侵入して泣き出した赤ん坊を黙らせるために絞殺したと考えられた。

萩原信二の実母は数年前に病死。会社重役の父・啓三の後妻・麗子は赤ん坊の死に激しく動揺。信二との折り合いは悪かった。中西幸雄は啓三の側近の優秀な部下。

高間、日野:県警捜査一課刑事。

 

「踊り子」  初出:『小説宝石』1986年9月特別号

中学2年生の孝志は塾の帰り道、女子高「S学園」に潜り込み、体育館で新体操の練習をしている女子高生に目を奪われ、毎週水曜日に体育館をこっそり覗いていた。家庭教師の黒田のアドバイスでスポーツ・ドリンクとファンよりと書いたメモを学校の玄関に置いた。その後、彼女の姿は見られなくなってしまった。
友達の家のアルバムで彼女の写っている写真を見て、彼女の住所がわかった。しかし、黒田が住所を調べ、残酷な真実を知る。

 

「エンドレス・ナイト」  初出:『小説宝石』1987年5月特別号

4年前に結婚し東京で洋裁学校の講師をしている田村厚子は、大阪の支店の経営を任された夫の洋一に、大阪嫌いなので大阪には単身赴任してもらっていた。洋一が殺されたと知らされ、現場の洋一の店に駆け付けると、担当刑事の番場から、洋一がナイフで胸を刺され真っ直ぐに仰向けに行儀よく寝ていたと聞かされた。翌日番場は厚子を洋一の大阪での立ち回り先を巡ることになる。洋一の店は経営状態が悪かった。

 

「白い凶器」  初出:『小説宝石』1988年9月号

A食品株式会社内で材料課課長の安倍が6階の窓から転落死した。次に係長の佐野が交通事故で死亡し、体内から睡眠薬が検出された。当日の夜、材料課で残業していたのは、去年の秋に結婚した夫の洋一を今年の5月に交通事故で亡くし、ようやく復帰した中町由希子と、甘い顔立ちのスポーツマンタイプで、由希子に交際を申し込んでいる森田だった。由希子は洋一を亡くした時妊娠していたが、流産してしまったのだった。

 

「さよならコーチ」  初出:『小説現代』1988年11月特別号

20代の青春の時間をアーチェリーに注いできたある企業のアーチェリー部の選手・望月直美が自殺した。彼女は遺書代わりにビデオで自らを撮影し、メッセージを残していた。遺体を発見した直美のコーチは、直美がオリンピック選考会に敗れたことを悲観していたと刑事に話す。刑事は、コーチに自殺と思われた直美の死の真実を告げるのだった。だがコーチは、直美の死にさらなるからくりが仕掛けてあったことに気付く。

 

「犯人のいない殺人の夜」  初出:1988年3月号

著名な建築家・岸田創介の家で安藤由紀子という女性が殺害された。居合わせた家庭教師の拓也は、岸田から事件隠蔽を依頼され、遺体を隠し、岸田家は由紀子と関係が無かったように、創介の妻・時枝、長男・正樹、次男・隆夫、拓也の恋人で隆夫の英語の家庭教師・雅美と口裏を合わせて、処理しようと画策する。
由紀子の兄という安藤和夫が周辺を嗅ぎまわり、事件の担当刑事の高野小田はしつこく質問をくり返す。

 

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