ジョン・グリシャム著、村上春樹訳『グレート・ギャツビーを追え』(2020年10月10日中央公論新社発行)を読んだ。
英語のペーパーブックの裏表紙にある内容要約は以下。(村上春樹による「あとがき」から)
「文学史上最も大胆不敵な強奪計画が実行された。場所はプリンストン大学図書館の厳重警戒な地下金庫。
時価2500万ドル(値段のつけようがないと言うものもいるだろう)のF・スコット・フィッツジェラルドの長編小説5作の原稿は、世界で最も価値あるもののひとつだが、それが消え失せてしまった。間を置かず一連の逮捕がなされたが、強盗団の冷酷な首謀者は原稿と共に忽然と姿を消した。
FBIの精鋭たちが頭を抱え込んだこの難事件に、スランプ中の新進女性作家マーサー・マンが挑むことになった」
原題は “CAMINO ISLAND”。
窃盗団と、盗本の買取人、極めて貴重な本(稀覯本)の収集家に対し、FBIや保険会社側の調査会社、協力するスランプ中の小説家が闘いを挑む。
窃盗団5人はFBIに次々と逮捕されたが、主犯のデニーは盗品を持って逃げてしまう。
一方、本書の実質的主人公ともいうべきブルース・ケーブルはフロリダ州カミ―ノ・アイランドにあって繁盛している新刊本書店「ベイ・ブックス」を経営していた。彼はサイン会を開催するなどして多くの作家を支援する一方で、高額な稀覯本の収集家であり、プレーボーイでもあった。
保険調査会社のイレインは、ブルースを探るために、カミ―ノ・アイランドにコテッジを持ち、学資ローン返還に悩むマーサーに目を付けて、スパイ役を務めるように誘いかける。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)
文句なしに面白く、どんどん読み進めてしまう。
原稿の行方はさておき、さまざまな状況にある作家が登場し、書店の事情などアメリカの出版界の内情が描かれていて、本好きはそれだけでも十分楽しめる。
盗品の購入者と保険会社の戦いに絞ったことは確かに面白く、成功といえるのだが、欲をいえば、窃盗団とFBIの出番がほとんどないのはユニークではあるが、どうなのか?
プリンストン大学でフィッツジェラルドの生原稿を見たことがある村上春樹はこの本を読み、止まらなくなったという。
ジョン・グリシャムJohn Grisham
1955年アーカンソー州生まれ。野球選手になることを夢見て育つ。 ロースクール卒業後、1981年から10年にわたり刑事事件と人身傷害訴訟 を専門に弁護士として活躍し、その間にミシシッピ州下院議員も務めた。
1989年『評決のとき』を出版。以後、『法律事務所』『ペリカン文 書』『依頼人』『危険な弁護士』など話題作を執筆。その作品は40カ 国語で翻訳出版されている。