hiyamizu's blog

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知念実希人『祈りのカルテ』を読む

2021年02月17日 | 読書2

 

知念実希人著『祈りのカルテ』(2018年3月29日KADOKAWA発行)を読んだ。

 

諏訪野良太(すわの・りょうた)は、純正会医科大学附属病院の研修医。
初期臨床研修で、精神科、外科、皮膚科、小児科、内科を数か月ごとに回わり、自分の専門になる科を決めなくてはならない。

 

 

「彼女が瞳を閉じる理由」

諏訪野が週一回の救急部での当直のとき、睡眠薬を大量にのんだ山野瑠香(26)が救急搬送されてきた。その腕には、別れた夫岡部彰の名前が「あきら」と火傷(ヤケド)で刻まれていた。離婚して以来、睡眠薬の過剰摂取を繰り返し、1,2か月に1回は睡眠薬の多量服薬で搬送されてくるという。彼女はなぜ、毎月5日に退院できるよう入院するのか……。
精神科での指導医は30代半ばの立石聡美。諏訪野は任された瑠香への面談を行うが、瑠香は「明後日に退院させて」と言うばかり。諏訪野は、立石に「君は相手の顔色を伺うのが抜群にうまいのよ」、「精神科医は少し離れた距離から患者を診ないと、毎日何十人と診るのに、全部受け止めていたら壊れちゃうでしょ」と言われる。

 

「悪性の境界線」

もうすぐ80歳になる近藤玄三(79)は初期の胃癌だった。「胃の一番表面の粘膜層に癌細胞がとどまっていれば、内視鏡での除去だけで完治するが、その下まで達していると胃の部分切除が必要になる」と諏訪野の指導医・冴木から説明を受けた。その後、近藤は胃がんの内視鏡手術を拒否する。何故?

 

「冷めない傷跡」

皮膚科では火傷の患者以外は比較的簡単な対応で済むので女性の医療従事者が多い。諏訪野が桃井佐恵子の指導を受けて数時間毎に包帯交換と採血を行ったのは右下腿に重い火傷を負った守屋春香。見舞いは娘の花南と職場の上司だという鍋島。翌日、火傷が広がっていたのは何故?

 

「シンデレラの吐息」

諏訪野が小児科で研修を受けているときに、救急で喘息発作の姫井姫子(8)が運ばれてきた。入院してよくなってきたのにまた激しい発作を起こした。ゴミ箱に薬が捨ててあった。犯人は母・裕子か、父・洋介か、それとも?

 

「胸に嘘を秘めて」

循環器内科での指導医は上林。新館26階のセキュリティ万全の特別病棟に入院しているのは我が儘な四十住(あいずみ)絵理(27)、かっての人気女優、芸名愛原絵里。拡張型心筋症でアメリカでの心臓移植待ち。女性マネージャー横溝が付き添うだけで、母や、腎臓内科に入院している妹の面会は断っていた。
そんなとき、マスコミに重病で愛原絵里が入院と報じられた。

 

エピローグ

 

 

初出:「小説 野性時代」2014年2月号~2017年11月号

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

よくまとまった話で、面白く読める。

しかし、とくに何者でもなく、単に人懐っこく誰とでも話せるというだけの諏訪野が、謎を次々と解いてしまうのは納得できる展開ではない。患者の心に入り込んで、心を開かせて、謎を解き明かすという展開にして欲しかった。

 

 

知念実希人(ちねん・みきと)の略歴と既読本リスト

 

 

 

 

 

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