hiyamizu's blog

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高水裕一『時間は後戻りするのか』を読む

2021年01月31日 | 読書2

 

高水裕一著『時間は後戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて』(ブルーバックスB-2143、2020年7月20日講談社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

「時を戻そう」は可能になるのか?

自然界の多くは対称性をもっているのに、
なぜ時間は一方向にしか流れないのか?
古来、物理学者たちを悩ませてきた究極の問いに、
ホーキング博士の晩年に師事し薫陶をうけた著者が、
理論物理学の最新知見を縦横に駆使して答える。
量子レベルで観測された時間の逆戻りとは?
時間が消えてしまう宇宙モデルとは?
読めば時間が逆戻りしそうに思えてくる!

 

第1章「時間」に目覚めた人類/第2章 時間のプロフィール/第3章 相対性理論と時間/第4章 量子力学と時間/第5章 「宿敵」エントロピー/第6章 時間は本当に1次元か/第7章 量子重力理論と時間/第8章 サイクリック宇宙/第9章 始まりなき時間を求めて/第10章 生命の時間 人間の時間/第11章 誰が宇宙を見たのか 

 

時間が逆転しないという物理法則の唯一は「熱力学第二法則」=「エントロピーは常に増大する」。しかし、素粒子一つ一つの動きを見る量子的スケールでは、時間が逆転することもありうる。量子コンピュータに関する実験結果からレソビク博士は「量子力学の世界では、失われた秩序さえも巻き戻せることが示された。熱力学第二法則に反する挙動は、量子の世界では達成される」と述べた。

 

超弦理論では主役が弦から「ブレーン」と呼ばれる膜へ移行するブレークスルーがあった。

一方、ロヴェッリが指導する対抗するループ量子重力理論では、時空を量子化して、時間にも素粒子サイズの「大きさ」があることを示し、ついに時間の存在そのものを消してしまった。

 

ホーキングは宇宙の始まりの計算できない特異点を解消するため「虚時間」を導入した。

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

時間が逆転可能かというテーマだけでなく、量子力学の最新理論についても最低限の知識を解説している。語り口は易しく軽快で、興味を引くたとえなどを引用しながら解説している。あえて言えば、へんてこなたとえ話が気になってしまうこともあったが。

 

私は、「ブレーン」と呼ばれる膜へ移行した超弦理論や、ループ量子重力理論は知らなかったので、分かりやすい、というか分かった気にさせる説明には感心した。

 

時間逆転は、それは理論的にはありうるだろうと想像していたので、不思議とは思わなかったが、逆転するとどうなるのかがはっきり書いてないのが不満だ。サイクリック宇宙モデルだと、過去から延々と歴史が繰り返されているとの話があったにだが、どうゆうこと?

 

 

高水裕一(たかみず・ゆういち)

京大学大学院理学系研究科ビッグバンセンター特任研究員。2012年、京都大学基礎物理学研究所PD学振特別研究員。2013年、英国ケンブリッジ大学応用数学・理論物理学科理論宇宙論センターに所属し、所長を務めるスティーヴン・ホーキング博士に師事。2016年より現職。
専門は宇宙論。近年は機械学習を用いた医学物理学の研究にも取り組んでいる。
著書に『知らなきゃよかった宇宙の話』(主婦の友社)、本書。

 

以下、メモ

 

何もない「無」から宇宙が誕生してから「10のマイナス34乗秒」後までのあいだに、クォークができた。3分ほどで水素とヘリウムができた。水素とヘリウムのガスが1カ所に集まって星(自ら輝く恒星)ができ、星自身の重さの圧力で周期律表にある26番目の鉄までが出来た。星がつぶれて爆発し(超新星爆発)、すさまじいエネルギーでコバルト以降の重元素が作られた。

 

周期律表にある元素でできる物質を「バリオン」という。宇宙全体からみればバリオンは超マイノリティーで5%にも満たない。宇宙の7割を占めるダークエネルギー、バリオンの5倍もあるダークマターと、人類にはいまだに分かっていないものが宇宙の大部分を占めているのだ。

 

S=klogW    S : エントロピー、k:ボルツマン定数、W:状態数

 

量子的スケールでは時間が逆転することもありうる。

 

宇宙の形状は、曲率=0の平坦、曲率>0の球体、曲率<0の鞍形のうち、実際の観測では現在のところどこまでも平坦。

一般相対性理論のアインシュタイン方程式

Rはリッチカラー、左辺は時空の曲がり具合で曲率、右辺はその時空に存在する物質やエネルギーの量の大きさ。

 

人間原理:宇宙の構造ができた原因を、それを観測した知的生命(一応人間とされている)に求めるという不可解な考え方

宇宙にはさまざまな自然定数があり、ある量とある量の比が、なぜかあり得ないほど絶妙にチュー二ングされている。だからこそ奇跡的に人類が誕生できた。
歴史が何回も繰り返されるというサイクリック宇宙モデルではこれらがある程度説明できる。

 

トリビア

  • 3月14日は、「ホワイトデー」、「πの日」、「アインシュタインが生れた日(1879年)」、「ホーキングが亡くなった日(2018年)」
  • 秒の定義:古くは「心臓の鼓動の長さ」、「腕の長さ程度(約1メートル)の棒の振り子が反対に触れるまでの時間」、現在では「セシウム利用原子時計での秒の定義」(3000万年に1秒)、次は「光格子時計」(誤差100億年に1秒)、遠い将来は「天体のパルサー」(誤差100億年で001秒)
  • フランスのカレンダーは月曜日から始まる。イスラム圏では土曜日から始まる。
  • アボガドロ数は10の23乗、人の細胞は37兆個=10の13乗、DNAの中の塩基は約60億個=10の23乗個
  • 宇宙誕生から約138億年。地球から宇宙の端まで465億光年。

 

 

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