hiyamizu's blog

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アガサ・クリスティー『春にして君を離れ』を読む

2021年01月11日 | 読書2

 

アガサ・クリスティー著、中村妙子訳『春にして君を離れ』(クリスティー文庫81、2004年4月10日早川書房発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

優しい夫、よき子供に恵まれ、女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に疑問を抱きはじめる……女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いたロマンチック・サスペンス。    解説:栗本薫

 

殺人事件はないアガサ・クリスティーの小説。メアリ・ウェストマコット名義で1944年に発表。原題は “ABSENT IN THE SPRING” 

ジョーン・スカダモア48歳は、地方ながら弁護士事務所を繁栄させている夫・ロドニーとの間に1男2女がいて、よき妻・よき母であると自負している。結婚してバクダッドに住んでいて、急病となった次女・バーバラの手伝いをした帰り道での話である。

ジョーンは途中で偶然聖アン女学院の同級生・ブランチと出会う。女学院時代生徒たちの憧れの的だったブランチは、その後さまざまな恋愛事件を引き起こしながら、平然と過去を語る。ジョーンはすっかり老け込んでしまった彼女の零落を憐れんだ。ブランチは、次女・バーバラに関する社交界の噂をジョーンに暗示し、ジョーンに自分の考えを見つめ直すきっかけを与える。

荒天により列車は砂漠の中のトルコ国境の駅に留まり、彼女は鉄道宿泊所に何日も泊まることになる。何もすることがなくなった彼女は、これまでの家族や人生について、確固としていた自分の考えに疑念を抱き、自信がぐらつくようになる。

長女のエイヴラルは理知的な性格だが、かつて妻ある年上の男性と激しい恋愛に身を焦がした。夫・ロドニーは相手の家庭と男性の社会的活躍の場が破壊されることを冷静にエイヴラルにさとして、恨まれたが諦めさせた。一方、ジョーンはたんなる気まぐれだったと考えている。

クレイミンスターの銀行家チャールズ・エドワード・シャーストンの妻。1930年に病死し、物語の現在時点では故人。ジョーンは「悲惨で気の毒な一生」と考えている。

銀行家のシャーストンは横領事件を起こし、服役した。ロドニーが弁護に当たり、2人の幼子を抱えた妻レスリーの相談相手となった。レスリーは親族からの子供を引き取りを拒み、「現実に存在するものから逃避することが、人生の公正なスタートといえるでしょうか?」と、前科者の子のそしりを恐れず一人で育てた。ジョーンは信じがたい対応であった。また、夫ロドニーとレスリーを賞賛するのにも落ち着かない。

やがて、ジョーンは知らないことにするのはやめにしようと思い、……。そして、……。

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:お勧め)(最大は五つ星)

人の気持ちのわかっていないのに、自分では分かっていると思い込んでいる人。自分の価値観は絶対正しいを思っていて、それ以外は認めない人。大なり小なり、そんな人は確かにいる。
母と娘の間での確執はそんなことで生じることが多いのではないだろうか。
本人に悪気がないだけに、とくに身近に、一緒に生活している人には悲劇だろう。

よく書けてはいるが一つのテーマだけでここまで引っ張るのはどうかとも思ったのだが、結局一気に読んでしまった。

 

原題 “ABSENT IN THE SPRING” も何やら思いを致すタイトルだが、日本語訳の「春にして君を離れ」は原題と少しずれているように思うが、ロマンチックなタイトルだ。

 

アガサ・クリスティーの略歴と既読本リスト 

 

コメント
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