hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

金井美恵子『猫の一年』を読む

2011年02月18日 | 読書2
金井美恵子著『猫の一年』2011年1月文藝春秋発行、を読んだ。

題名に反し猫の話よりサッカーの話が多い。なかでもサッカーの中田は、というより彼を賛美する人はボロクソに言われっぱなし。その他の有名人、マスコミも辛口批判、というよりほとんど悪口で、当たるを幸いにバッタバッタとなぎ倒す。一方で、飼っている老猫には高額治療も厭わないと自慢する。多分、猫にやさしさを使いきってしまったのだろう。

あまりにもえげつないので、その他の例を二つだけ。
そして、もともと文章の下品な卑しさ加減で知られているとはいえ、『声に出して読みたい日本語』の齋藤孝が・・・

カルガモの10羽いたヒナのうち2羽が猫に殺されたという立て札を見て、金井さんは「10個も卵を生む動物は無事に1、2羽が育てば大成功じゃないの」と開き直る。


沢田研二も血祭りにあがる。
デビュー当時から、変テコなみっともない衣装をつけて変テコな歌詞と野暮ったい振付で、ポップスというより阿波踊りなのだった。短足で、・・・「イモ・ジュリー」・・・
野暮ったくて田舎臭く洗練を欠いたものについて、「イモ」という言葉は普通使用される。・・・


あとがきで金井さんはこう書いている。
行きつけの美容院の女子は、ヒデさんのことを「金井さんの天敵」というのですが、私が苛立つのはメディアの中で肥大したイメージ(マスコミの作り出した虚像、などという昔風の言葉を思い出しました)で商売しようとするスポーツ関係者なのかもしれませんし、たかだかW杯の16強に残ってPK戦で敗退しただけの結果を、世界的に注目された出来事であるかのように語る、ウソつきの言説に対してなのかもしれません。
ほっておけばいいんですけどね。


20枚ほどの猫の絵が挿入されているが、「装幀・装画・ブックデザイン 金井久美子」とあり、多分美恵子さんのお姉さんによるものだろう。ちょっと好みの絵だ。

初出は「別冊文藝春秋」2006年9月号~2010年11月号



金井美恵子
1947年高崎市生れ。群馬県立高崎女子高校卒。詩人、小説家
1967年「愛の生活」が現代詩手帖賞受賞
1979年『プラトン的恋愛』で泉鏡花文学賞受賞
1988年『タマや』で女流文学賞受賞
著書多数



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

たしかに中田は世界で一流でもないだろうし、あれほどの賞賛を浴びせるのもどうかと思うが、マスコミのいつものやり方に過ぎない。ジュリーも洗練されているとは言いがたいが、一体、洗練された歌手が日本にいるのか? 金井さんがほめる人を教えてほしい。言っていることに大筋では納得しても、その言い方はないだろうと思う。他人の悪口でお金を稼ぐのはいかがかと思う。


コメント
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