hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

白石一文『砂の上のあなた』を読む

2011年02月11日 | 読書2
白石一文著『砂の上のあなた』2010年9月新潮社発行、を読んだ。

『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞した白石一文の受賞後第一作の書下ろし。

主人公の美砂子は、結婚後も仕事が面白く、子どもをほしがる夫には、「こんな時代に子どもを産むなんて」と言って拒否していた。3姉妹でもっとも愛された末娘、35歳の美砂子は、父の死後、どうしても子どもが欲しくなる。仕事もやめ、基礎体温を測り、体調やスケジュールの管理をし、この日という日を指定する。夫婦に微妙な溝が生じる。
そんな時、突然、父が遺した手紙を渡したいと見知らぬ男から電話があり、平凡な日常は波乱に飲み込まれていく。

ミステリータッチで進む前半が、様々な人々が入れ替わり立ち代わり登場し、そのすべてが、実はという形で、網の目のように繋がっている。相関図でも書かないと混乱する。

白石一文『砂の上のあなた』刊行記念インタビューで著者は語っている。
ですから、この小説自体も、一度読んだだけでは分からない部分が残るように、とにかくごちゃごちゃした感じを出したいと思って構成しました。読んだ後、何が書いてあったかはよく分からないけど、すごく強いイメージだけが残るような、そんな小説にしたかったんです。




白石一文(しらいし・かずふみ)
1958年福岡県生れ。早稲田大学政治経済学部卒業。
文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。
2009年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞
2010年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。
他に『不自由な心』『すぐそばの彼方』『僕のなかの壊れていない部分』『私という運命について』『どれくらいの愛情』『この世の全部を敵に回して』『砂の上のあなた』など。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

何しろ登場人物が次々出てきて、それが互いに何らかの関係で結ばれている。記憶力をテストされているようだ。

魅入られたように子作りに励む彼女が自分の体調に神経を尖らしたり、相手の言い方にその感情の揺れを汲み取ったりと、女性でないと分かりそうもないことを描いている。(巧みなのかどうか、私には評価する力はないのだが)。しかし、女性心理をメインにするなら、なにも男性作家が書くことないのにと思ってしまう。現在は、優れた女性作家(昔は閨秀作家とか言っていた)は山ほどいる。

描かれる男性は勝手で弱さを持ち、女性は危うさもあるが、生命力に溢れている。そこかしこに、男女や、人生に関する思索的な文章が挿入されるが、本文の筋道にはぴったりしていないように思う。


コメント
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