ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

松殿 伊子(いし)

2011-01-29 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
童ちゃん「大丈夫ならいいんだ。ハッハッハッ!よかった、よかった」
鞍馬「よかねぇ!ヨッ」と上半身を起こし「で、あの烏野郎、何もんだ?」と胡坐をかいた。
能子「…藤原の…松殿 基房(まつどの もとふさ)…」
弁慶「あん?誰それ?」
鞍馬「あんまり知られてないが…義仲の正妻 松殿伊子(いし)の親父だ。なぁ、能子」
能子「えぇ。そして、父の敵…」
鞍馬「最初は平家に肩入れしてたんだが、義仲がクーデターを起こした時、源氏に寝返った。んで、松殿は義仲に和議協定の証にって、当時16、7の娘を嫁に差し出した。が…」
義隆「が…?」
能子「その翌年…義仲の死後、松殿家に戻ったって聞いたわ」
鞍馬「出戻るも何も最初から松殿に16、7の娘なんていなかったんだ」
弁慶「替え玉か」
能子「ねぇ。先生…確か、あいつ『郷(ごう)はどこだ?』って私たちに聞いたわよね?」
鞍馬「あぁ。問題はそこ。なぜ、郷(さと)じゃなくて、郷(ごう)を探してるのか?」
義隆「母上たちの事、知ってるんだ!」
鞍馬「母上たち?何だそれ?」と経緯を知らない鞍馬に、
義隆「ほんとの母上はご病気で代わりに母上がこっちに来たんだ」とえらく簡単に説明した。
鞍馬「…。その母上らの大切な話を冷静に説明されても納得出来ん…義経、知ってんのか?」
能子「疑いは持ってるみたい…よ」
鞍馬「って事は、知らないのか?」と義隆を見た。
義隆「聞いて来ないもん。分からないことは自分から聞かないとダメだって、母上が…」
鞍馬「おいおい。どんなすんばらしい教育を受けたら、こんなクソが付くほど真面目に育つんだ。確かに、分からない事は自分で質問するのが筋ってもんだが、こんな質問し難い事、どう聞くんだ…俺、疑ってます!ってアピールするようなもんだ。あいつ、また荒れるぞ」
弁慶「ふーむ。でもなぁ、今、郷御前の話題に触れると手に付けられんくらい暴れっぞ」
義隆「父上の早とちり!最後まで話、聞かないから」と後生掛温泉 足湯での話を思い出した。
鞍馬「なんだ?どいう事?」
弁慶「あぁ。高館に火を放つ時、郷…葵だが、髪に火が点いて…」
能子「ちょっ、ちょっと!義隆の前で!」と弁慶の口を押さえた。
義隆「父上と同じ、早とちり。父上ね…母上が死んじゃったって思い込んでるんだ」