ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

ただもんじゃないのよ

2011-01-12 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
瑠璃姫「…失礼ながら、お名前伺ってなかったわ。私、三河源氏の浄 瑠璃と申します」
好青年「私は呉の服部ですが、まだ半人前で…。皆には半蔵といわれております。どうかお見知りおきを…」とはにかんだ。
瑠璃姫「…服部 半蔵…さん?」
冷泉院「私は式部※の冷泉院。どうぞよろしくっ。私も京の出なのよ」六條院のあたりね。
※律令制の頃、役人養成機関の大学寮を統括する省の一つでその長官にあたる式部卿は天皇家と縁が深い人々で構成されていたそうです。
瑠璃姫「…(京訛りが出てない)」
初音「私は伊達の佐藤 初音です」
楓「同じく、佐藤 楓です」とそれぞれの自己紹介が終わった所で、
服部くん「では広げてみましょうか。この反物は…」と和の色、和の柄の説明をしながら広げて見せて、徐に「これは姫にお似合いかと存じます」と瑠璃の肩から反物を垂らした。
次々に反物の色柄を説明し、それぞれに似合いそうなものに手渡して行った。
服部くん「美しい方々で、どの反物も見劣りしてしまいますね」とにっこり笑った。
瑠璃姫「お上手ね…半蔵さん。半人前とは思えないわ。それに、とても服部にも見えない。ねぇ、後ろの笈で反物を運んだの?本物の服部さんなら笈を使わないでしょう。反物に傷が付くから風呂敷を使うはずよ」と矢継ぎ早に攻め立て、めっちゃご機嫌斜め顔になっていた。
冷泉院「姫ぇ!?顔が怖い。ご、ごめんなさいね。服部くん。姫ね、機嫌と顔を隠すお面が失くしちゃって…朝から超を通り越してウルトラスーパーエクセレント?に機嫌悪いのぉ」
瑠璃姫「余計な言葉で私の機嫌の悪さを説明しなくていいのよ」と冷を叱った。
服部くんは傷だらけの笈を見つめ「風呂敷では両手が塞がってしまうから…これ使っているんです。譲り受けたもので年季が入ってますね、この笈…」とゆっくり瞬き、眼を伏せた。
瑠璃姫「誰が譲ってくれたのかしらね?」と服部くんを睨んだ。
超機嫌最っ悪の瑠璃に手が付けられない冷とそれにタジタジで口が挟めないのくの一らで、
服部くん「怖い眼ですね、美人が台無しだ。これがどうかしましたか?」とにっこり笑った。
瑠璃姫「他人様とくの一、冷の眼は誤魔化せても、私の眼は誤魔化せないわ」と懐から16年ほど前(かなり前半で書いた)三河“御嶽夏祭り”「夕涼みの宴」後に、羽目外し過ぎて寝込んだ義経の薬代にと貰った龍笛[薄墨(うすずみ)]を取り出し、その先端の小さな傷を見せた。
服部くん「…」その傷を見て、目が一文字になり、服部くんから笑顔が消えた。
瑠璃姫「ただの傷じゃないのよ…これ」