『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY      第6章  クレタ  72

2013-04-10 07:50:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 クリテス兄弟の長兄のアクロテスが浜衆らに指示を出していた。荷が舟艇に積み込まれた。
 『アクロテス、今日は突然押しかけて、えらく世話になったな、ありがとう。父上によろしく伝えてくれ。積み荷の品ありがたく頂戴する。ありがとう』
 『ギアス、艇を出してくれ』
 アクロテスがイリオネスに声をかけてきた。
 『軍団長殿、この船はめずらしい型をしていますね。今度、父とそちらに出向いたとき、この船をじっくり見させてください』
 『おう、判った。ギアスに言って、試しに乗せてもらったらいい。そのように手配する』
 『ありがとうございます』
 彼らとのやり取りを終えた。舟艇は、浜をゆっくりと離れた。入り江の風は気ままに吹いた。向かい風かと思えば左手側の山から吹き下ろしてくる。艇の進行は漕ぎかたにゆだねた状態であった。入り江から出た艇は北上し、半島の北のはずれで西に進路をとり帰った。帰路途中は、航走に力を貸す風を得ることは出来なかった。SOUDAの浜から帰着するまで漕走した。漕ぎかたは休むことなく懸命に漕いだ。艇は無事、日没前に帰着した。
 浜に着いた彼らをオロンテスが出迎えた。
 『統領、ご苦労様でした』
 彼は、ギアスの方に向きを変えて声をかけた。
 『ギアス、風の具合はどうであった』
 『SOUDAの浜を出て、こちらに着くまで、漕いで漕いで帰ってきたような始末だ』
 『それは、大変だったな、ご苦労』
 オロンテスは言葉でねぎらった。


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