『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 1097

　アエネアスの第一声である。
　『おう、これはうまい！』
　『おうっ！いける、いける！』『焼きすぎも、いいもんだ！』
　勝手に口走りながら、音を立ててかみ砕いて、ぶどう酒でのどを通していく。
　パリヌルスが声をかける。
　『この前の会議でも言ったように、構想百出、夢想大言では収拾がつきにくいぞ。また、今の我々の構想はその段階を超えている。枠を決めて話を進めてはどうだ？』
　『言われてみればそうだな。おう、解った』
　『構想の除外は、この前にも言ったように漁業関係、パン関係、これはノーだ。そのうえ、我々のネクスト構想は、もうその構想百出の段階を超えている』
　オキテスが一同の顔を見回す。
　『我々の持てる技術、使える技術、そして、物造り。このあたりでどうだ』
　『いいだろう！』
　『新艇の建造と販売を終えた。現状を解きほぐして、扉を開けて中へ入っていこう』
　『よし、いいだろう。決まりだ』
　彼らのネクストに関するフリートークがスタートした。
　アエネアスが手をあげる。
　『お前らのフリートークの前提条件設定がなかなかいい！そうでなければいけない！『脚下照顧、そして、前へ』俺たちの生きざまに合致している』
　次いでイリオネスが挙手する。
　『実は、このまえ、艇上でギアスと語り合った』
　『ほう、何でしょう？』
　『船舶の修理、改造を手掛けてはどうだろうかということだ』
　『ほっほう、いいですね。オロンテス、木板に書きとめてくれないか』
　『いいですよ。解りました』
　オキテスが準備していた木板と木炭をオロンテスに手渡す。
　パリヌルスが手をあげる。
　『現在の状況を解きほぐすと、１、新艇の引き合いがある。２、発注に近い。３、我が方に新艇建造の技術がある。４、新しい機軸を考えだす能力がある。５、船の建造用材の供給源を持っている。６、建造した船の売り方を知っている。７、建造した船の販売する道筋も持っている。このようないい環境で船という大型の商品を造っている。あとは地道に船の売れ行きの動向に合わせて造っていくかではないだろうか。船舶の建造をいいカタチにしていく。これが私の構想です』
　オキテスは、パリヌルスの考えとその問いかけに大いに意向を示して、彼の言ったことについて深く考えた。
　一同はと見廻すと、アエネアス、イリオネス、オロンテスの三人も目を大きく見開いて、パリヌルスの言ったことに賛意を示していることが見てとれた。