『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  211

2014-02-18 07:23:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、場を去ろうとしている三人に声をかけた。
 『おう、ちょっと待ってくれ!伝えたい用件がある』
 イリオネスは慌てて彼らを引き止めた。
 『実はだな、俺が担当する特務調査隊の事だ。オロンテス、クリテスの事だが、どうだ、いつ手ばなせる?それからアレテスだ、漁獲の件はいつ終わる?この2点だ。今日の午後にでも返事をくれ、以上だ』
 『判りました』
 彼らは、自分たちの持ち場へと向かった。浜へと向かう道すがらオキテスは語った。
 『なあ~、パリヌルス、どうなっているのだろうか?だ』
 『なにがだ?』
 『テカリオンが来て、奴が帰る。そのあと俺たちが忙しくなる。奴は、風を巻き起こして去っていく。エノスの時もそうであったように、俺たちにとって、全く変わった存在だ。今や欠けてもらっては困る存在になっている。まったく不思議な奴だ。彼奴は、俺たちとは全く異質な世界に身を置いている』
 オキテスは感想を述べた。彼を知っているパリヌルスは、オキテスの感想に同感した。テカリオンは、今、我々民族の役に立ってくれている、心の中では友として、彼に感謝していた。
 アヱネアスがこの民族を率いていく力はどこに?また、イリオネスの統率力の根拠はどこで育まれたものであろうか?と自分たちの知らない二人の見えていない背面世界を知りたいと、ふと思った。『まあ~いいだろう、いつか、それを知る機会があるであろう』とその思いを吹っ切った。
 三人が去り、二人きりになったアヱネアスとイリオネスは話し続けた。
 『軍団長、お前も何かと大変だな。俺にできる何かがあれば何でも言ってくれ。この地が我々トロイの民の居住地として、末が長いか、はたまた、短いかは不明だが、今、民族のためにやるべきことはやらなければならん。この地に来て、いかばかりか心が落ち着いてきたように思っている。集団が何かに向かって体動し始めている、越えなばならない山場に差し掛かっているようにも感じている。お前はどうだ?』
 『そうですね。統領の感じていられることが判ります。人一人の踏み出す一歩、集団として踏み出す一歩、同じ一歩ですが、その質は全く違うと私は考えています。統領の一歩は、民族の一歩という大集団の一歩です。その集団の中の小集団が踏み出す一歩が勝手な一歩であろうが、大集団の一歩は、それを包括しての一歩であると考えています』


最新の画像もっと見る