『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  261

2014-04-30 07:56:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おッ!お前ら、昼めしの真っ最中か。俺の分もありそうか』
 『え~え、あります。どうぞ』
 『パンだけでいい。そこでだ、この俺を小島へ運んでくれ、ハシケで行く』
 『おいそぎですか』
 『おう、急いでいるといえば急いでいる。それはいい、めしを済ませてくれ、それからでいい』
 『判りました、急ぎます』
 やりとりを終えて、パリヌルスは小島へ渡った。
 小島へ渡った彼は、アレテスの姿を探した。
 『あっ、隊長!アレテス隊長は、今、向こうです』
 『呼ばなくていい、俺が行く』と言って歩を進めた。
 『おう、アレテス、ちょっと聞きたいことがあって来たのだ。お前やりかけの仕事があるなら済ませろ。俺は待つ』
 『判りました。私の方からも連絡事項があります。では』と言って背を向けて10人くらいで取り組んでいた仕事の場に戻っていった。
 やりかけの仕事を終えてアレテスがやってくる。二人は、波打ち際に立って話し始めた。
 『アレテス、連絡事項とやらを先に聞く。何だ』
 『例の魚の件です、うまくいきそうです。明日の夕めしに間に合います』
 『明日の夕めしか、いいだろう。俺は明日の夕めしをこちらで食べる、よろしく頼む。ギョリダも同席させてくれ』
 『判りました。では、用件を』
 『あのだな、事情調査だ。今使っている船は、皆が乗って来た軍船のみだな』
 『はい、そうです』
 『小島を見渡した限りでは、船の姿が見えん。海賊どもが使っていた船は、あの海戦ですべて燃やしてしまっていたか』
 『そうですが、この島の北西の突端に朽ち果てた船が1隻ありますが』
 『ほう、どれくらいの大きさだ。我々が保有している船で大きさを言ってみてくれ』
 『舟艇より一回り大きいくらいの船です』
 『それはちょうどいいくらいの船だな。見に行こう』
 二人は連れ立って歩き出した。船の在り場所に着いた。パリヌルスは船を見つめた。
 傷んでいる。致命的な傷みである。船底部分が痛んでいた。座礁による傷みであると見て取れた。パリヌルスは、修理して使えるか、どうかを丹念に観察した。
 『アレテス、判った。側板は何ともない。船底を修理すればいいな。明日、船の修理について詳しい者をこちらへよこす、その者に船を見せてくれ。メインマストと帆の事も考えねばならんな、ということだ』
 『判りました』
 『用件は、船の事なのだ。出来ることならこの船を修理して使えるようにしたい。そのほかにハシケが1艘いるな。本島と連絡用にとちょっとした小用に使うやつだ。これから忙しくなる、小船がいる。それの調達を考えて、今日、ここに来たのだ』
 『それは、ありがたいことです』
 『おう、それからだが、今日、漁に出ているのか』
 『はい、出ています。ギョリダの話では、今日は新しい漁場でやっているはずです』