『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  53

2012-05-17 08:25:39 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『諸君、いま、聞いての通りだ。では、詳しく話す。明早朝、空に星のある間に出航する、いいな。この打ち合わせが終わり次第、出航準備に取り掛かってほしい。明日一日は天候のくずれはない。朝は大陸からの陸風が北寄りの東風であろうと考えている。かぜに船を押す力があるか、ないか。それは夜が明けてみないと判らない。海上に出れば北からの風になると期待している。だがだ。期待はあくまでも期待であって、外れることが多い、だが、これだけは約束する。南からの風だけは決して吹かないことを約束する。日中の大半は漕がなければならないかもしれない。これは何んとしても一同に頼みたい件である。よろしく頼む。尚、明日一日分の糧食はオロンテスが各船に配る。出港準備が終わったら、今日は時間的に少々早めだが夕食とする。いいな。以上だ』
 今日、明日の予定を伝えたパリヌルスは、一同を見回した。
 『質問はあるか。ないようであれば打ち合わせはこれで終わる。出航準備は抜かりなくやってくれ』
 船長、副長が船に戻っていく。打ち合わせを終えた場には、統領、軍団長、パリヌルス、オキテスの四人が残った。四人は浜に立って海を眺めた。パリヌルスが話し始めた。
 『統領、軍団長それにオキテス隊長、ここだけの話です、実は、キオス島へ行って来ようと考えていたのです。ところが天候の回復が早いじゃないですか、キオスへ出かけているヒマがなくなって取りやめた次第です。明日は、ミコノス近辺の事情が全く判らないまま、船団は南下します』
 パリヌルスは言葉を切った。