『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  343

2010-11-18 07:30:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 それから日を経ず、3日ぐらいの間にメネラオスの軍団もオデッセウスの軍団も、トロイから姿を消していた。
 オデッセウスの軍団は、ギリシアのアウリスの港を出航したときは12船の船団であったが、トロイ戦役を終えた今は、7船になっていた。トロイからの戦利品は軍船一船を占めていた。彼の船団は、北エーゲ海の島しょの一つである、イムロス島の東の海域を北上して、サロス湾の入り口に到達すると右手に見える半島の沿岸に沿って北東へ進み、湾奥のエブリジエの浜に上陸した。
 オデッセウスの軍団は、海賊としての本性を現して、エブリジエの集落を襲ったのである。軍団の兵たちは、無抵抗の集落の住民たちの殺戮は控えたが抵抗する者たちを容赦なく虐たげた。
 エブリジエの集落を襲ったのには理由があった。オデッセウスの奸智で狡猾な考えがあったのである。彼の軍団が、これからの長い船旅を続けるのに食糧が不足していたのである。彼の軍団は掠奪をほしいままに行った。
 集落には、季節の収穫物や穀物を豊富に蓄えていたのである。兵たちは兵たちの性的な欲望に飢えていた。トロイには、彼らの性的欲望を満足させる女性がいなかった。彼らは女と見ると見境なく凌辱に及んだ。彼らはトロイからの落人狩りを名目として、エブリジエの集落に海賊行為を働いたのである。
 トロイからの落人は集落にはいなかった。オデッセウスたちは目的を遂げて、4日ばかり、エブリジエの集落に滞在して、この地を去った。
 彼の船団は、大陸からの風を利して、一路、南への航路を進んだ。
 これが、彼らの航海が10年の長きに及ぶ海上の迷走の始まりであった。