
16年前にもらわれっ子の子犬が来ました。
長女がジンと名付けました。
昨日、末娘からジンが危篤の報せを受け、見舞いに帰ります。
去る日曜日に会ったときは、ジンはベランダで日向ぼっこをしていました。
痩せこけていました。
長男が、犬が飼いたいと言い出しました。
ペットショップで、血統書つきの犬を買うほどの余裕はありませんでした。
磯子区の蓄犬センターで、殺処分前の犬をくれると言う長女の情報を元に、
かみさんと長男が行きました。選にもれ、当たりませんでした。
長男は泣いていました。かみさんはくじ運がないと評判でした。
Co-opで米を当てて使い果たしたのだとも。
三回目の挑戦は、長女と長男で行きました。
三匹姉弟の一番下の雄の子犬をもらってきました。
袋に入れて、バスに乗って連れて帰ったとか。
顔はゴールデンレトリバー、お尻はイングリッシュコギーのハーフでした。
ブリーダーの掛け合わせの失敗作なのでしょう。
この子は、いきなり「王子」様になりました。
不登校の娘の慰め役、弟のいない長男の付き人、
夫と危機を迎えたかみさんの良き話し相手になったのでした。
私が帰ると、唯一玄関まで飛び跳ねるように出迎えてくれました。
皆が出かけたあと最後に鍵を閉めて出ようとすると、さみしくて遠吠えをしました。
なかなか出かけられませんでした。
私の眼鏡のつる(プラスチック製)をちぎるように破壊しました。
背が届く出っ張りは、ことごとく歯型が付きました。
伸びてくる歯がかゆくてしかたがなかったのです。
ジンは家族の序列をいち早く見抜きました。
誰が一番偉いのか、怖いのか。ジン自身は、お尻から2番目でした。
孫の序列には、戸惑ったようでした。
最初は、当然自分より下でした。初孫の遊び相手がこの犬だったのでした。
遠慮なくのしかかるものですから、迷惑な顔をしていました。動くぬいぐるみでした。
孫が泣くと、周りをうろうろして心配顔でした。
レバー式のドアノブに伸びあがって前足をかけて、ドアを開ける技を覚えました。
閉めることはできませんでした。
冬には、所狭しとリビングにたむろしている家族からブーイングでした。
この子には、大いに救われました。
気に入られようと、家族が抜け駆けのようにおかずを与えました。
みるみる太ったのでした。
2歳の頃まで、大きなゴルデンやハスキー犬に遊んでもらっていました。
相手共々よだれでべとべとでした。
身体が火照ってくると、思い出したかのように公園の池に飛び込みました。
どぶのような泥を付けて、たいそう臭いました。
他の犬の飼い主は遠ざけてしまい、遊びもジ・エンドでした。
私達夫婦の部屋に寝ておりました。二人と一匹の鼾でうるさかったそうです。
ジンは寝言も言いました。フォンフォンと夜中に空吠えをしていました。
ジンが三歳の時に、海の中にそっと抱えて浸けてあげました。
自然と犬かきで泳ぎ始め、病みつきになりました。
末娘が中学生になり、子供達は自分たちのことで忙しくなりました。
夫婦とジンでよく海や山へ出かけました。
かみさんが散歩に行くと海岸線を歩き始めました。
私はたき火の番でした。ジンは、かみさんのお供で付いていったかと思うと
帰って来ました。あっちに行ったり、こっちに帰ったりを繰り返していました。
見かねて二人で行動をするようになりました。これが良かった。
遠ざかっていた夫婦の会話がもどり、家族のことを互いに話すようになりました。
ジンは家族の要でした。
子どもの時期を終えると、気に入った犬としか遊ばなくなりました。
自分より大きな犬が来ると、「僕は見えませんよ」という素振りをするようになりました。
もうすぐ16歳です。人間の年齢になおすとかなりの老齢です。
紙おむつを洗濯はさみで留めてもらっています。待てもお手ももうしません。
かみさんは、いろんなところを掃いた後に、まとめて掃いたものを集めるタイプでした。
掃き終わった端から、ジンが走ってきてゴミですべりまき散らしていました。
かみさんは笑い怒りながら、また掃いていました。
ジンは大事な家族です。
今は、家に残った長男と末娘の二人が面倒を見ています。
ここ数年、さみしくて遠吠えをするようになりました。
「気にしい」の末娘は窓を閉めありとあらゆる防音をしていました。
虐待をしているのではないかと近所の人に注意されたそうです。
最後まで見とってあげたいのです。
むつみごと ジンが仲裁 笑いやめ
2015年10月27日