本日は、Fさんのことでご連絡させていただきます。
私は、5年間国分寺より上野まで通いました。
部署は、プラント営業部でございます。同じフロアーには、海外営業部もあり良く比較されました。昼休みなど、向こうは上品にトランプで遊んでおられます。こちらは、同じトランプでも「おりゃあ。」なんて声がでたりします。
私は、プラント設計課に所属しておりました。課長はWさん、何の取り柄もない人でした。 係は三つありました。設計1,2係と業務係。全ての人がくせがある方ばかりでした。
本日はFさんの話しをさせていただきます。係長はKさんで北海道大出の男前。Fさんは主任です。葛飾区出身の江戸っ子。
8時半の朝礼が終わると、業務係のOちゃんが来て、早速おしゃべりが始まります。
Oちゃんは20歳くらいでだまってりゃ美人です。同じ葛飾区出身で下ネタも連発です。隣のHさんも加わり、大きな声で無駄話に話しが盛り上がります。話につられて、周りがどっと沸きます。毎朝のことです。Fさんが、仕事を始めるのは、ほぼ一時間後です。
Fさんは、草加せんべい屋の娘の子供です。奥さんの名前は美奈子さん。ほとんどの人が、なぜか奥さんの名前を知っています。
Hさんが、「Fさん、美奈子と昨日もやったか。ガハハ」なんてやっています。 新入社員の私は、下品で無能なこの連中と一緒に仕事をするのが嫌でした。
Fさんは、無類のヤクルトファンでした。応援団長の岡田さん(酒屋さん)とも親しいのです。
「Hさん、昨日も美奈子とやってたんだ。プロ野球ニュースが始まったんで、美奈子のあそこに栞をはさんで、見ちゃったよ。」
「Fさんお前ほんとに馬鹿だな。」回りはまたどっとわきます。W課長もつられて笑っています。
Oちゃんがきて、「Fさん、イヤーダ。」なんて言ってかえって行きます。
ある時、Fさんが私のところへ来て「O君、お願いだから、これを使ってくれる。」と電卓を出しました。私は、見積もりをしていました。どんな時でも筆算です。その日は、合計3億円位の見積書を作っていました。何度やっても合わないので、頭を抱えて悪戦苦闘していました。
Fさんが、「お願いだから使って。」と私に懇願します。仕方がないので使いました。
私は、図版に向かいトレーシングペーパーに図面を描いていました。図面は孔だらけです。鉛筆を強く押しすぎてしまうのです。Fさんが、やって来て「強くひいちゃ駄目だよ。」なんてセロテープで補修してくれます。青焼きでコピーすると所々、数字が見えません。セロテープの箇所です。
3時ごろになると、またFさんの机のまわりに数人が集まります。手に手にはさみを持って紙を切っています。Oちゃんもいます。同じ係のKちゃんも加わっています。ムーミンの「みー」みたいな顔をしています。Oちゃんの上司はH大でのIさん。エリートで、仕事も良くできます。独身。
Oちゃんのことが好きでたまりません。Oちゃんが何をやろうと治外法権です。
いつしか隣の一つ上の先輩も加わっています。紙吹雪が買い物袋に2つ溜まりました。
「O君、今日試合なんだけど一緒に行かない。」
とんでもないこの給料泥棒がなんて思って、「今日は忙しいですから行けません。」一度も行ったことがないのに、毎回誘われます。
5時ごろ、Fさんは大勢の社員をひきつれてヤクルト観戦のため神宮球場に行きました。
もう一人の係長やまちゃんがHさんのところへ来て、牌をつまむしぐさをしています。痔のSちゃんと私は退社です。
今日も麻雀です。飲むか麻雀です。Fさん達が出かけて10分後です。
会社に入り、恵まれた環境で社会人としてスタートを切ることができました。仕事だけではない、会社はこんなに楽しいものだと教えていただきました。プラント設計課の忘年会は、飲み代より修理代のほうがかさむ幹事なかせでした。私がしっかりした観察眼をもっていたら多くの傑作をものにできたと思います。
2014年 6月19日