
S 様
日頃より大変お世話になっております。
私は、ひと段落し、次の作戦を考えております。
まず、これまでの営業活動をまとめなければならないでしょう。
今回はHさんのお話をすることにします。
Hさんは、Fさんと同じ主任です。芸術家です。
毎年、手がける年賀状の版画は絶品です。
普通、プラントを設計する場合、機能重視で建物をそれに合わせます。
Hさんの場合は、違います。外側から見た格好を重視されます。
不必要な片流れの屋根などにします。
外側の建物の見映えに合わせて機能を変更してしまいます。
信じられない、見積もりが高くなる配置に変更しています。
プラント設計家にあるまじき行為です。
Hさんも加わる朝の無駄話は今日も続いています。
私は、Hさんのことを「父っつあん」と呼んでいました。
宴会の幹事をやったことが、ありました。
飲み代が半分、破壊の修理費が半分という予算を組まなければなりません。
主犯格は常にHさんです。
帰りに、秋葉原当たりの焼鳥屋に、一緒によくいきました。
そこで食べた生の肝臓にあたって、会社にいくことも出来ず
3日3晩這うようにトイレに通いました。
帰る方向が逆(千葉方面)の電車に乗れとききません。
なんと、千葉近くの駅についたらきれいな奥さんが待っておられるではないですか。
同じ電車か一つか二つ前の電車に乗られたようです。
有名な服飾デザイナーでした。
酔っぱらったHさんの車は、縁石に上がったりして
命からがらHさんの家に着きました。
奥様は、平然としておられました。慣れとは怖い。
ある時、会社でソフトボール大会がありました。
1係と2係の対抗戦です。Kさんを男にしなければなりません。
私は4番で、スラッガーです。何度もホームランを打っています。
相手は警戒しています。相手ピッチャーはHさんです。
私の打席の時、Hさんが、チームメイトをあつめて指示を出しました。
チーム全員守備に戻りました。
ええっ外野が4人いるではないですか。ヒットならまだ良しの作戦。
動揺を隠せず、見逃し三振。とっつあんは大喜びです。悔しい。
次の打席、同じシフトを敷いてきました。
内角にくるのはわかっていたので、3塁側の観戦者に網の裏に
隠れるように促しました。思い切り3塁側に何度もファールをぶち込みました。
とっつあんは、内角攻めから一転外角をせめて来ました。待ってました。
4人の外野のうえをいく、右中間のフェンス越えです。
うれしかったこと。とっつあんの悔しがること。
そんなHさんには、本当にかわいがってもらいました。
いつも「こいつは、いいやつだ。」と会う人ごとに紹介していただけました。
お陰で、本当に仕事が やりやすくなりました。
S様、お世話になりっぱなしです。
近くにお越しの節は、ぜひ教えてください。いっぱいおごらせてください。
今後とも、よろしくご指導くださるようお願いいたします。
<<現在の感想>>
大学を出たての私は、毎朝続くHさんとFさんの無駄話にあきれていました。
連日の徹夜マージャンで、設計板の前で考えているふりをして、私もよく寝たものです。
この方たちから、人生は何たるかを学びました。
仕事に取り組む姿勢を特に学んだように思います。
HさんもFさんも、顧客に信頼され人気がありました。
二人とも余裕のよっちゃんでした。
40年近くが経ちました。
私はこの方たちのように、仕事を人生を楽しんだでしょうか。
後輩に慕われる人でいられたでしょうか。
雨に打たれた桜の落ち葉が張り付くアスファルトの駅までの道、
懐には何もないのに温かくなりました。
2014年11月28日
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