ひだまりクリニック~産んだ後にも母親学級~

杉並区で小児科医がひらいている母子で集えるクラスです。

わだっち文章講座から「子育てに疲れているお母さんの実家になりたい」

2012-12-11 16:47:47 | 母親への支援

二年前から参加しているわだっちの活動「親子で街デビュー@和田商店街」はとってもおもしろい活動です。

和田商店街は古くからある街の商店街で、ひだまりクリニックから徒歩数分。

そして、よくある商店街と同じように少しさびしい感じになっていました。

ところが!

この商店街に魔法がかかったようなことが起こりました。

今、区役所からも熱い視線が?注がれている?よう?

お母さんが取材して作った「わだっち」

そして、その延長で和田商店街のHPがこの秋にできました。

第一期の文章講座に参加させてもらたり、ワークショップや商店街ツアーに行ったり。

いろんな経験を通して、商店街の素敵なところ、人とのつながりがたっぷりある商店街は街の財産だっていうこと、

そんなことに気づきました。

文章講座はその取材を文章にするにあたって、ジャーナリストの先生に直接文章修業をしてもらえる貴重な経験ができました。

自分の文章は、説得力がなくて、わかってくれる人にだけ届けばいい、みたいな気持ちであるということを

先生にきちんと指摘していただいたことは大きな収穫でした。

自分の体験を客観的に示して、主観的な意見を伝えるのに、文章の力が発揮されると。

「自分に酔ってる」という意味の指摘をされ、書き直したものをここに書いておきます。

私のひだまりに対しての気持ちを表していて、ぐっとよくなったとお褒めをいただいたので・・・

「子育てに疲れているお母さんの実家になりたい」

 

私は、杉並区和田の住宅街で、「ひだまりクリニック」というちょっと変わった医院を開いている医師です。この医院を運営するきっかけは、私自身の出産の経験なのです。

 

孤独な出産での焦燥

 

私は、初めての妊娠で、思いがけずに切迫早産という診断で長期入院しました。病院の当直勤務もやっていて、退職後、知り合いもいない引っ越し先での突然のことでした。「点滴をやめたらすぐに早産になる」という理由で10週間も点滴と絶対安静を受け入れました。しかし、治療後動き回っても出産にはならず、治療に疑問が残りました。

2週間後、納得できないままの出産になりました。そこでも、十分なケアを受けられず、出産時の裂傷がひどく、再手術を受けました。納得できず混乱と焦燥の中にいた私を支えた人は誰もいませんでした。

実家の母は、三人の入院を抱え、私にまで手が回らなかったのです。「頑張ったのに、なぜこんなことに?つらい・・・」という私に、夫は「『良かれ』と思った処置がうまくいかないことなんて医療者なら誰だって知っているだろう?医療者失格だよ」と言いました。「医療者ではない、単なる傷ついた患者だったのに」と私の心は深く傷つきました。夫として「辛かったね」と言ってくれればそれでよかったのに。

 

その納得できない医療から私は多くのことを学びました。私が受けた医療は自分が医師として病院にいたときには普通にされる標準的なものでした。しかし、「受ける側はこんなに辛かったのだ」ということ。納得できない医療はどんなに人を不幸にするか、その傷ついたお産を抱えての子育てはどんなに大変で不安であるか、ということです。

夫はその後、子煩悩で優しい父親になりましたが、私にはとても厳しい目を持つ夫になりました。「なぜ、そんなに不安なのだ?」「なぜそんなに母親らしくないのだ?」とことあるごとに批判しました。納得できない医療の辛さと夫から支えられなかった私の辛さが今の仕事につながっています。

 

子育てに大事なのは「愛されている実感」

 

「こんな神経質な子どもに束縛されるなんてうんざりだ。子どもは一人でいい。早く仕事をしたい」と思い続け、数年後に小児科医として復帰して、患者の子ども達から教わったことは、子育てに大事なのは「愛されている実感だ」ということでした。そのとき、私は母としても小児科医としても中途半端だと知ったのです。そして、「もう一回、納得できる出産と子育てをしなければ」と思いました。

そこで出会ったのが、自分のお産に満足できずに、「自分が受けたかったケアをするお産をしたい」と産婦人科医になった人でした。自分でも準備の努力をして、その先生にお世話になって自宅で二度目の出産をしました。

「同じ人間が子どもを産む」という事実に変わりがないのに、ありとあらゆることが天と地ほどの違いでした。お産の満足もその後の幸せも子どもに対する感情も、それゆえできるケアも、そして、子どもと自分の身体の状態まで。

一人目の子が神経質だったのは、母親の辛さを子どもが感じていただけのことだろうとわかりました。二人目の子育てが幸せであるのに、一人目の子どもと自分がかわいそうでどんなに泣いたことでしょうか。

「母が支えられる」ということは、子育てで一番大事なことです。

夫から、家族から、地域で、社会で、よい世の中を作っていくためには今後の世の中を作っていく宝である子どもたちをよりよい環境で育てることが大切であり、そのためにも母親を支え、母親が幸せな気持ちで子育てをすることができるようにしなければなりません。

「『夫や家族から支えられていない』と感じる妊婦、母親にこそ、ひだまりクリニックはある」と思っています。「実家よりも自分の家の方がいいわ」という人はいます。そういう人は夫婦の信頼関係がきちんと築けているのでしょう。素晴らしいことと思います。

そういう人にだって、ほっとしたいときや疲れて落ち込むことがありますので、そんな時の場所でありたいです。

 

 母親が自信を持って子育てしてほしい

 

「子育て支援のために母親支援をしたい」と考えているひだまりクリニックは小児科ですが、普通の街のクリニックにはない特徴があります。それは予防診療を中心に考えているので、保険診療をしないことです。

子どもの病気は、母親が自信を持って看ることが一番大事なのです。「その力をつけてもらいたい」という気持ちで、偉そうな言葉でいえば患者教育になりますが、家庭看護のコツと見極めについての話をしています。

また、正解のない子育てで迷いや不安のある人にも、少しずつ自信を持ってもらえる場所でありたいと思っています。

一人の力ではできない、多くのお母さんが集う場であるからこそできることもあるし、一人一人の納得できる子育てを応援する場所作りが夢です。

自分の妊娠・出産・子育てに納得できなかった。育児不安や夫婦関係に悩んできた。多くの失敗を経験してきた。だからこそ、子育て支援を中心にしたクリニックになりたいのです。

 

「正常を正常に保つのが子育て」

 

私の恩師は、「正常を正常に保つのが子育て」「子どもを診れば診るほど正常の範囲は広がる」と言っていました。この言葉はとても深い。妊娠・出産・子育ては「異常をみつけだし正常にする」医療の目だけでなく、「正常を正常に保つために支える」予防医療も重要な分野です。

それを実現していくことこそが私の誇りの持てる大好きな仕事なのです。

以上が、知己先生に添削していただいた後の「私の夢」というお題の作文です。

先日、このわだっちの文章講座の修了式がひだまりでありました。

 

ひだまりクリニックを初めてから二度目の新年を迎えます。

この一年は、いろんなことがありました。

応援してくれていた母との別れも大きなことでした。

最初は小さな集まりでしたが、この一年、ひだまりクラスが多くの方に知っていただけて、多くの方に支えていただけるようになりました。

支えたいといいながら、私自身が支えられているのを感じます。

多くの方と知り合いになり、多くの方とお話しをして・・・

いろいろなところに参加させていただいていることも幸せだと思います。

もうすぐできるHPも、実は、支えてくださる方のおかげでできます。

本当にありがたいことです。

自分の思いのためにも、応援してくださる方のためにも、しっかり仕事をしなければと思います。

明日もひだまりクラス、楽しいひとときをすごしてもらえますように・・・。

 


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6 コメント

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ひだまりの存在に感謝! (西本)
2012-12-14 00:57:15
素敵なエッセイです☆
佐山先生と出会いひだまりにお世話になりました。 本当にたくさんの心遣いありがとうございます♪
赤ちゃんを連れた母たちが、いきいきと集えるのがひだまりの良さです。他にはない!
また、よらせてくださいね♪
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応援してされて循環! (ひだまり)
2012-12-14 03:39:57
西本さん、親子で街デビューのおかげで、商店街の魅力を知りました!
こちらこそ感謝!です。
新しい世界を見せてもらいました。
商店街って、人が関わる生活の場所なんですよね。
お世話をしてる気はないですよ。
応援してるの!
そして、応援してもらってるの!
これは、子育てが終わりつつある私が子育て中のお母さんたちに今まで上の世代の方からもらってきたものを返してるだけなんだと思ってます。
女性が女性を応援しないでどうするのだ!と思う。
女性ならではの苦労だって喜びだって知っているのだから。
支えあうことでよりよくなるものはいっぱいあるものね。
まだまだこれから!と思って、元気で働けるうちは頑張るわ!
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Unknown (Unknown)
2013-01-16 15:06:30
佐山先生、2月のひだまりの会に申し込みました遠藤です。とっても楽しみにしています!
先生の自宅での出産のお話しは、もしかして大野明子先生でしょうか?
私は以前から大野先生や吉村先生の本を読み、出来るだけ自然なお産ができる病院を探して探して(笑)望みどおりの出産をすることができました^_^
もし佐山先生も同じ思いでいらっしゃったら嬉しいなぁと思い、書き込みしてしまいました。
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そうですよ~ (ひだまり)
2013-01-17 07:13:18
遠藤さん
ひだまりクラス、お申込みありがとうございます。
お待ちしています。
お産のお話しもどんどんしてもらえたらいいなと思います。よかったこともいやだったことも・・・
遠藤さんは満足できるお産ができたのですね。
よかったですね~!
私は次男の出産で大野先生にお世話になりました。
「分娩台よ さようなら」には、そのときの写真や感想文を載せていただいています。
その子も中学二年で・・・お産がよくても、親子関係は・・・みたいな状況に突入ですけれど・・・
でも、お産に満足できるというのはとても大事なことだと思います。
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「分娩台よ、さようなら」拝見しました。 (遠藤)
2013-01-25 15:18:17
佐山先生、コメントをありがとうございます!
先生の感想文を拝見しました…。赤ちゃんとお母さんの身体にあったゆっくりと進んだ出産で、信頼できる先生や家族に囲まれてのとってもあたたかい、出産だったのですね。もう、うるうるして感動です!
生まれたばかりの赤ちゃんを抱き上げる佐山先生の表情が本当に素敵です!そして赤ちゃんを覗き込むお兄ちゃんのまなざし…!お産って本当にすごいです。
写真に写っている赤ちゃんはもう中学生なのですね。子供の成長は早いですね~

佐山先生の夢、とても素敵です。私たち母親の応援をしてくださるなんて、とても心強いです。
ありがとうございます!
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仕事の原点 (ひだまり)
2013-01-26 00:04:52
私は一人目に納得できないお産で、その納得できなさと周囲からの支えがなかったことが今の仕事の原点になっています。
全ての人に、納得できる医療を受けてもらいたい、私は納得してもらえる医療に関わりたい、そう思うようになりました。
結果や形でなく、納得があるかどうか。
だから、単純に思い描くお産であるかどうかということだけでなく、思ってた通りにいかなかったときでもそれを納得して受け入れられるかということも大事に思っています。
もちろん。思い描いていた通りのお産ができるのは素晴らしいことですかれど、努力したから100%思い描いたお産になるというものでもないので。
お産の準備というのは、理想を思い、そのための努力をすることと並行して、うまくいかなかったときにそれを受け入れる覚悟を持つということも必要だと思います。
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