ひだまりクリニック~産んだ後にも母親学級~

杉並区で小児科医がひらいている母子で集えるクラスです。

舌小帯を切ったことを後悔しているお母さんへ・・・

2013-03-28 22:37:04 | 母親への支援

前回の記事は、私は本当に思い切って書きました。

えいっと勇気を持って「投稿」をクリックしました。

・・・やったことに疑問を持っている人を傷つけるのではないか、子どもに不要な手術をしたと後悔させるのではないか・・・

その思いがあったから、今まで書けないでいたことなのです。

もちろん、目前で診る縁のあった方には、舌小帯のことを聞かれたら、

その人の表情を見て、どんなことを言うか考えながらいうこともできますから、

言えることを傷つけないように言っています。

また、やってよかったという人にも稀ですがいます。

そういう場合は、「自分の選んだ方法で納得できる結果が出てよかったね」と言っています。

「それは間違っている」などとはいいません。

(ただ、やってホッとした効果があるかもとは思いますし、「信じる者は救われる」効果を感じます。)

でも、ブログの記事は違う。

傷つけたこともわからないし、どのようにもフォローのしようもない。

未然に防ぎたいという気持ちで書いたけど、すでにしてしまった人を傷つけるかも・・・

でも、防ぎたい。

伝えなきゃいけない。

このことを知ってもらって、きちんと納得できていないでするのはとても危険な手術だと伝えなければと思いました。

(命の危険ではなくて、納得できなかったときの精神的なダメージという意味での危険です)

ツイッターでは、多くの方がおかしなことだという反応をしてくださいましたし、反響の大きさが問題の根深さを示しています。

そして、切除した人、それに満足している人も、後悔している人も反応はほとんどありませんでした。

複雑な気持ちで、でも口をつぐんでいる人は、反応がなくても多いだろうと思います。

そんな中、ブログのコメントで「やりました」と書いてくださった方がいました。

ゆうままさんです。

少ない言葉の中に、いろいろな思いがあるのだろうと思います。

「二年前、息子が一歳の時にやりました。十万以上払いました。

気になっていた症状は一向に改善せず、一体なんだったんだろうと思っています。

とにかく痛そうで可哀相でした。

しなくて良いものだったとすると、とても胸がいたみます。」

とのことでした。

保健センターでの健診で出会った、混乱して泣いていたお母さんと私の中で重なりました。

追いつめられて切除してしまって、辛い思いを抱えているお母さんへ・・・

苦しまないでほしくて、返事を書きました。

前回の記事を読んで苦しくなったお母さんに読んでもらえたらな・・・と願っています。

 

ゆうままさま、(そして、切除してしまったことを苦しく思っているお母さんへ)

辛い経験をおもいだすことで、また辛い思いをされているかもしれないですね。

それなのに、お話しを教えてくださってありがとうございました。

しないで済む手術だったと知ることはとても切なくて辛いことだと思います。

今日も、ひだまりクラスで(私がクリニックでしている母親学級です)お話ししてたんですが、

後になって思うとあれは失敗だったなぁということを、だれだってしてます。

後悔のない母親なんていないのではないでしょうか?

もちろん、一人の未熟な母親だった私も同じでした。

小児科医なんて誰にも知られたくない、そう思って子育てしていました。

思い出すと辛くなり泣くことをよくしていました。

特に、二人目の出産で幸せなお産を経験した直後、一人目の出産子育てを思い出しては泣いたものです。

小児科医だから子育ては楽にできるなんてとんでもないことで、

私の場合は、逆に辛かったです。

医学と育児は全く違います。

多くの専門家といわれる人が「私はママとしては赤ちゃんなのよ~」と思ってます。

周りから「専門家でいいわね~子育て上手でしょうね。」と言われてプレッシャーだという共通の悩みを多くの人が持っているのですよね。

(小児科医だけでなく、看護師さんとか助産師さんとか、保育士さんとか学校や幼稚園の先生とか・・・)

どんな専門家であっても、新米のママからですから。

私も、失敗談だけで子育て相談できるくらいいろいろな後悔があります。

私の失敗で安心できるならいくらでもしてあげるっていつも思っています。

失敗はつきものですけど、でも、自信を持って言えることが一つあります。

その未熟で無知な母ながら、そのときそのときのベストで一生懸命やってたことだけはまちがいないと。

だから、しかたなかったな・・・ごめんね、って子どもには思ってます。

自分を責める気持ちは持たないようにしてます。

(それは時に難しいことではありますが)

子どものことを一生懸命考えて、その時よいと思ったことをしただけなんですから。

ひどいのは、そういうお母さんの一生懸命なわらにもすがるような気持ちを利用するようなやり方をする人たちなんですから。

お母さんを支えるということは、お母さんの不安を取り除くのが一番大事なのに・・・

お母さんが望む子育てをするために、自分のできることをする、お母さんの苦しさをとるためのことをする、そういうことだと思います。

理想と現実はちがってくることが多いし、子育てもそう。

その中で、自分の納得できる選択をするしかなくて、

その自分なりの選択をするために、お手伝いするのが支援者の仕事だと思います。

お手伝いの中には、正しい科学的な医療知識を伝えることが入ります。

こうしなければと脅すことは絶対あってはならないことです。

今やらないと後で大事になる、思春期に大きな隔たりが生じる、

そんな先のことなど、どうして、舌小帯を切って全面的に解決できるというのでしょうか。

今の、悩みが舌小帯のせいだと、その悩みに苦しむお母さんを不安に陥れることのどこが母親を支援していることになるのでしょうか。

・おっぱいが飲めない、せっかく出ているおっぱいを飲みとれないので乳腺炎になる

・肌が白い、口の周りが青白い。

・よく泣く、あまり寝ない、鳴き声が甲高い。

・身体が固い、股関節が固い、むきぐせがある。

・湿疹、アトピー性皮膚炎

・髪の毛がたっている

・手足が冷たい

・活気がない、目がうつろ・・・などなど

そして、これらの育児の悩みが解決できるといいます。

そうやって、体力的にも限界でフラフラになって子育てして、

冷静な判断ができない状態の、不安でつぶれそうな気持ちでいる母親を脅すなんて、こんなひどいことはないです。

支援とは逆のことをしています。

さらに、小児科医には相談に行ってはダメという人までいます。

(小児科医は、この処置、まちがいなく止めますからね)

普通の歯科・耳鼻科も、乳児期早期にはこの処置をしません。

少なくとも早くやったほうがいい、とはいわないでしょう。

だから、日本に数カ所しかないクリニックを紹介しています。

 

切除する耳鼻科医は入室した赤ちゃんを見るだけで(診る前に)これはひどい状態だったねとよく言っています。

ネットで捜すといろんな手術体験記に、一目見るなり「これは重傷」と言われたとあります。

が、一目で子どもを見抜くなんて小児科医には思いもよらないことだと思います。

いろんな状態があるのがあたりまえで、泣いているときも笑っているときも眠いときもあるのに・・・

大人のように、取り繕うということは絶対しない時期ですから。

いつでも、どこでも寝てしまう、ぐずることもあるのですから。

診察室だとお利口にする赤ちゃんなんていませんから。

 

そんな特殊な人に出会ってしまって、悩んでしまい、でも、「子どものために決断しないと」と言われ・・・

冷静になれないときに、母乳マッサージで助けてもらってありがたいと思っている専門家からたたみかけられ、

言われるまま手術してしまったお母さんを誰が非難できるでしょうか?

非難されるべきは支援とは程遠いことをしている助産師と、

エビデンスのない手術をしている耳鼻科医ではないですか。

(ことさらエビデンスエビデンスと言い立てるというのは、私は好きではないのですけれど、

あまりにもひどい勧め方なので、こう書いています。

本当に正しい処置だというなら、学会できちんとデータを出して、多くの人に証明して

納得してもらうべきです。

これは、新しい認められていない治療をする人が、自説の正しさを主張するには必須の事だと思います。

これは、いろんな民間療法に言えること。

癌の治療、アトピー性皮膚炎などなど、困っている人の弱っている心を利用しているひどいものが多くあります。

どれもが、学会での発表やデータを出しているわけではないのです。

単純な症例報告をいくら報告しても、納得されるわけではありません。

 

 一生懸命な、子どものためなら何でもする気持ちでいる自分が

そのとき選んだことを後悔したり、思い出して後ろ向きになったりするのは、やめましょうね。

お子さんは元気にそだってくれているのでしょう?それが答えなんですから。

私の辛い経験だった息子も(もう21歳)神経質で、夜泣きがひどくて、食べなくて、小さくて、私から離れなかった赤ちゃん。

本当にそのたびに辛かったものですが、優しいお兄ちゃんに育ってくれてます。

それだけで充分だと思っています。

もちろん、小学校中学校高校と・・・いろんなこともありましたけどね。

理想通りには子育ては行かないけど、その時々、親は良かれと思うことをやっていくしかないのですよね。

まだまだ、元気に楽しくやっていかないとね。親が楽しそうに暮らしてると、この世は生きる価値があると思うものだと思います。

余計な心配なことを書き散らしたかもしれませんが・・・

保健センターで泣かれたお母さんに話しかけるつもりで書いてしまいました。

失礼しました。

子育てはまだまだ続きますよね。

終わったことは否定しないで受け入れて(一生懸命子育てした自分を褒めてあげてください)

いつも新しい気持ちでやっていけばいいのだと思います。

苦しい経験が自分を育てているのだから。

問題を突き付けてくれる子どもが自分を育ててくれているのだから。

だから、過去のことをくよくよ考えないで、これからを見ていきましょう。

苦しんだからこそわかったことを大事にしたらいいと思います。

苦しんだからこそ成長した自分っているのではないかなと思いますよ。

そういう自分を愛おしんで、自分を活かしてあげることを考えてみたらいいのではないでしょうか。

 


意を決して書きます。舌小帯のこと

2013-03-23 02:38:17 | 医療情報

もう随分長いこと、話題にしたいけど・・・と思ってたことがあります。

私が研修医の時代にはすでに問題になっていた、そして大昔に決着している問題です。

舌小帯のこと、知ってる?と聞いても多くのお母さんは知りません。

かなり情報通のママでも知らないことは多いです。

(それはとてもよいこと、そんなもん知らないままでいい)

でも、一部のお母さんがある場所、勧める助産師に出会ってしまって深刻に悩んでいます。

子どものためならと選択することもあってそれを悔やんでいる人もいて、正しい情報がなかったために・・・と

本当に気の毒になるとともに、そういう親の思いを利用しているとも思える行動に怒りを感じます。

その舌小帯のことを説明しますと・・・

桶谷式の母乳マッサージの看板をあげているところの一部の助産師さんが勧めています。

決して多くではないと思います。以前よりも随分減ったのも事実です。

でも・・・やはり、まだ存在する。そして、それは身近にあるのです。

杉並区の助産院でも、少なくとも二か所の、それも一部の助産師さんによる勧めのようですが、

舌小帯の心配をお母さんに伝え、

積極的に保険治療適応でない手術をする、ある決まった耳鼻科(早稲田にある)に誘導する、そして、小児科には相談しないようにとまで言っているのです。

今の時代、セカンドオピニオンを聞かないようにということ自体が危ないことだと思いませんか?

十万円以上の手術を勧めるのに、いろんなことが言われます。

舌小帯のために哺乳障害があるだけでなく、

髪が立っている、むきぐせがある、股関節が固い、よく泣く、寝ない、鳴き声が甲高い、顔色が悪い、呼吸が苦しそう、ゼロゼロいう・・・湿疹がひどい、アトピーになるかも・・・

非科学的ないろんなことを言い立てて、切除さえすれば、すべてよくなるという言い方をします。

大昔は、助産師が出生直後にはさみでちょんと切ってたようです。

その時代を、卒後25年の私は知りません。

すでに、助産師がするこの医療行為は禁止されていて問題になっていました。

研修医時代、指導医が助産師を強く指導していた記憶があります。

当時、この桶谷式の一部の助産師とわずかな耳鼻科医による舌小帯切除の問題はすでにあって、

極端な言動のために問題になっていました。

その名残でと思うのですが、「桶谷式」というだけで、うーむとなってしまう小児科医がいます。

(私もそう・・・ただし、母乳マッサージの効果は否定しません。私も助けられたことがあります)

その後、ある耳鼻科医が国際学会で「日本で突然死が少ないのは、私たちが積極的に舌小帯を切除しているからだ」と発表して、

大問題になりました。

そして、小児科学会小児外科学会も正式に舌小帯を切除するのは問題である、と見解を出すに至り、

強力にこの切除を勧めていた助産師さんが亡くなられたので、この問題は決着済みだと思っていました。

平成13年の小児科学会誌のものですから、やはり12年も前のことです。

ところが!

やはり、まだ本当に一部、この手術を勧める助産師がいて、さらに、杉並区で子育て応援券も使える助産院なのです。

(阿佐ヶ谷と荻窪にあります)

その保険のきかない治療を勧める助産師は、杉並区の助産師さんのグループには参加していません。

できたら、そちらでなく、杉並区の助産師グループのケアを受けてほしいなと思っています。

おへその緒」というグループを作って、母乳育児支援の勉強会を重ねています。

母乳のケアだけでなく、母子の集まる場を提供したり、新生児訪問をしたり、各地の子育てメッセに参加したりと地元での子育て応援をしています。

最近は、杉並子育てメッセにも参加されていました。

独自の理論で暴走する人とは一線を画しているということですね。

もしも、この助産院と縁があって舌小帯切除を勧められたら、ちょっとまってください。

普通の小児科医・耳鼻科医・歯科医に相談してみていただきたいなと思います。

小児科医ではまず勧められません。

ひだまりクラスにも、すすめられたけど、かかりつけ医で同じことを言われてやめたという人が参加されました。

哺乳障害の原因はそんなひとつの原因だけで解決するような単純なことではないのです。

そして、哺乳障害がなくならないどころか、傷の痛みのために母乳を飲まなくなった赤ちゃんだっています。

「よかった」という意見ばかりを出してきますからご注意を。

(よくなかったという声はそもそも出てこないことが多いです。後悔しても始まらないことだし、そう思いたくないという心理が働くだろうこともわかります)

舌小帯の問題は育つにつれて解決することも多いですし、

後にしゃべり方、発音の問題が起こったら、そのときに治療すれば大丈夫と言われています。

切除を勧める耳鼻科での保険のきかない治療は10万円以上の自費の手術だそうですが、

どうしても切りたいと思われたら、歯科・口腔外科での治療は保険対応で数千円です。

その治療でも、決してスタンダードなことではなく、ちゃんとインフォームドコンセントをとった上での処置です。

つまり、どんな結果が出ても納得できていますね?ということです。

そもそも、それが本当に必要かは単純に比較することもできないため、わからないのではないでしょうか?

この点でも、おかしなことだと思えます。

理論的にも非科学的なことばかり言い立てていると思います。

「信じるものは救われる」という、民間療法的な色合いの濃い治療でしょう。

保健センターでの健診では、保健師さんと舌小帯の問題が出るたびに、顔を見合わせてため息をついています。

おかしいなと思ってやめたという人もいる一方、切ったという人、

その中でも、よかったという方も一部いますが(しなきゃよかったとは思いたくない?)変化のない人も多いです。

その助産院では、明らかな体重増加の問題があっても、ミルクを足さないようにとされているのも問題です。

おっぱいは出ている、この子のペースで育っていると。

中には、ミルクを足していることを言わないで、通っているという人もいます。

ケアをしてもらって感謝されているのをよいことに、学会でも認められていない科学的な根拠のない、保険の効かない一部しか勧めない方法を迫るのは、本当に悲しいです。残念なことだと思います。

全てを赤ちゃんの責任にしないでもらいたいです。

自分たちの力のなさを赤ちゃんと母親の責任にすり替えている、そんな支援でいいのでしょうか?

また、母乳を上げながらミルクの力を借りることも、どうしても足りない場合は考えた方がいいでしょう。

ミルクを足してしまったら、母乳を飲めなくなってしまうということはないです。

母乳のよさも保ちながら、母乳育児を続けながらミルクを足すことは可能です。

母乳の上げ方次第です。

そういう指導がいい指導だと思います。

自分の力の足りなさを赤ちゃんの舌小帯の責任にすり替えているようにも見えます。

そして、お母さんを苦しめていると思います。

やめてほしい、本当に・・・

自己責任だということなんでしょうか。

そこに持っていけばなんだって許されるんでしょうか。

苦しむお母さんが減るように、と願っています。

母乳を上げること、そこだけに焦点が当たってるからおかしなことになるのです。

母乳育児は、お母さんがささえられて幸せであってこそ素晴らしいと思います。

母乳を上げることだけが目的で、ミルクを上げることが敗北と思ったり、自責の念に苦しんだりするお母さんを増やしてはいけないです。

お母さんにそういう気持ちを持たせてしまうこと自体、決してしてはいけないこと、母乳育児支援とは程遠いことだと思います。

嘘をつかせてしまうという態度であるということがそれを表しているでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 


「母性」って種みたい・・・

2013-03-18 22:53:53 | 母親への支援

先週、お話をさせていただけるということで、母親を支援する仕事をしている専門家の方々に講演会をさせていただく機会がありました。

私には、ほぼ初めてのこと。

お母さんにお話しすることには少しずつ慣れてきたけれど・・・

よい話ができるだろうかと心配で心配で。

でも、母親支援ということは、私にとっても子育て支援と並んで(というかより重要視してるかも)

大事に思っていることなので、チャレンジすることにしました。

結果は・・・がんばってみてよかったなと思います。

私自身、よい学びになりました。

自分の母への思いと、多くの子育て中の母たちへの思いと、自分が若かった母だったころの自分への思いと・・・

いろんな思いが渦巻いて・・・ぐるぐる・・・そんな二日間でした。

母への思いというのは・・・少しだけできた市内観光の神社でのお参りで、神様と同時に母にも自然に話しかけてました。

「あーちゃん、見ててね。頑張るね。」と。

(あーちゃんは母のあだ名、おばーちゃんなんていわせないわよ!って、息巻いてたの)

そして、子どもに読み聞かせた絵本を思い出しました。

「おおきなのはら」という本。

かわいい動物のこどもたちが、おかあさんにやってごらんといわれて、

「みててね」といって、がんばってみるという繰り返しのお話しです。

絵がとてもかわいい、ほのぼの絵本です。

母は、亡くなっても私と一緒にいる、見守ってくれてる、見ててねと語りかけて頑張れる、そんな存在です。

その母が、理想的な母だったかというと・・・どうなんでしょうね?

叩かれたこともあったし・・・厳しかったです。

でも、私が子どもに厳しくしてしまうとしょげていたときに

「子どもは愛情が通じれば大丈夫よ!」といつも励ましてくれました。

そこが難しいとも思ったりもしたのだけれど・・・

 

母親が生き生きしていることは、子育てには必要なことだと思っています。

その母親が生き生きできないのは、子育てそのものに自分自身が取り込まれ過ぎてるのかも・・・と思ったりします。

自分がうまくできないのは自分のせいだと思い込みすぎ・・・。

なんでもかんでも自分のせいだと自分を責めるのはやめた方がいいのですけどね。

「可愛いと思えなくて母親失格ではと悩んでいる母親がいる」という質問を受けました。

 長い間、たぶん次男が生まれるまで、私は、自分が母性的でないかも・・・ということに悩んでいました。

そのことを見ないようにしていた。目を背けていました。

確かに可愛いけど、辛いこともあるし、泣きたくもなりました。投げ出したいときもあった・・・

「母性」ってなんでしょう?

そして、そんなものないよという人もいます。(そんな言葉に気が楽になったこともあります)

でも、そんなことはないと私は思います。

やっぱり母性ってあると思う。

母性的な人はいると思うし、とても母として幸せそうに輝いている人もいます。

(自分でそうでないと思ってる人は幸せそうな人を見てて辛くなったりもするんです、かつての私もそうだった)

みんながそうなれないのはどうしてなんだろうか?

それは、その人の持つ母性の素というか種というか・・・それがいろいろなんじゃないか?

その種がある場所がいろいろなんじゃないか?

そんな風に考えています。

その人の性格や育った環境や背景で、もともと芽の出やすい種とそうでない種がある。

さらに、種の蒔かれた土地がどんな土地かによって(母親の生活環境によって)母性は育ちやすくも育ちにくくもなる。

固い芽の出にくい種が、日の当たらない乾いて荒れた土地に落ちた場合と・・・

もともと芽の出やすい種が、陽のあたる豊かな土地、潤った場所に落ちた場合と・・・

全く母親としての感情の育ちは違ってきます。

 

お母さんが周りから大事にされない、尊重されない、そんな環境では、子育てはとても難しいものになります。

お母さんは取り巻くすべての人、地域や社会から大事にされるべき存在です。

だから、お父さんは重要な人だし、お母さんを支援する人は、重要なキーパーソンになりえるのです。

種の芽が出るように・・・おひさまは見守ってくれている。

だから、お母さんを取り巻くすべての人は種に水をあげたり、養分を土にあげたり・・・

そういう支援を大丈夫だよといってあげながら見守ることが大事なんです。

なかなか芽が出ないということだってあるかもしれない。

お産が辛かったり、身体が元気になれなかったり、経済的な困難があったり、DV家庭だったり、そんな過酷な環境だってあります。

その種に一番よいものもそれぞれでしょうし・・・

支援者は、いろいろなアプローチをすること、連携してやっていくこと・・・。

温かく見守って、ゆっくりじっくり待つ姿勢で支えていくこと・・・。

そのお母さんの背景にヒントがある場合もあるでしょう。

 

聴いてくださった方の中には、虐待家庭の支援者もいらっしゃって、うまく答えられない質問もあったのですけれど。

でも、多くの方々が一生懸命できることに取り組んでいらっしゃることを改めて知って、本当によかったです。

私も、自分の置かれた場所で、出会うお母さんに元気でいてもらうために自分にできること、

これからも捜して取り組みたいなと思っています。

なかなか種が出ないと苦しい人もいるかもしれないけれど、時間がかかるのも悩むのも悪いこととは思いません。

そういう悩む時間が、また母親を育ててるのだとも思うからです。

助産師さんが素敵なお話しをしてくださいました。

一人目の子どもが発達に問題があって、自分もつらくてかわいいと思えなかった日々の後で、

二人目が生まれて可愛いという感情が持てたとき・・・

一人目の子との関係もよくなって、今までの苦労も受け入れられた上で、一人目も可愛いと思える自分になってたという・・・話。

母としての自分にとって、必要なことだったのだと思えたのだと思います。

本当に素敵な話ですね。

私も同じです。

一人目のお産や子育ての苦労、こんなものではないはずだという想いがあったからこその二人目のお産と子育て。

繋がっているんですよね。

悩みそのものが、母を育てているということなんでしょうね。

苦しい最中は、気づかないことも多いのですけどね。

今回、よい経験でした。

質疑の時間によいお話しをしてくださったみなさま、拙い話を聴いてくださったみなさま、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 


ひだまりの誕生日、そして、震災の日のこと・・・

2013-03-12 16:31:20 | クラス日記

ひだまりクリニックは多くの方に背中を押してもらって、二年前の3月3日に誕生しました。

(開業届を出しました)

お母さんに母親学級が必要だという思い込みから始まったのだけど、思い込みじゃないよ、

本当に必要だよと多くのお母さん仲間に応援していただきました。家族にも。

そして、それは今も続く、ずっと続いてる・・・

当時から、講座の資料の作成から、チラシ作りから、このブログもつくっていただきました。

パソコン作業の苦手な私をいつも誰かしらがフォローしてくれて・・・

本当にありがたい!ことです。

講座をするときはどうしたら話しやすいかとすごく考えてくれて、私が話しやすい、お母さん達が聞きやすいということを一番に考えてくれて。

知ろう小児医療の会の講座はいつもとってもあったかいです。

(ご一緒に活動しませんか?)

本当に素敵な仲間、としかいいようがないんですよね。

そして、さらにその仲間はどんどん増えてるような気がする。

最近はひだまりクリニックのHPまでつくっていただきました。

昨日の記事の最後に書いたさくらちゃんとさゆりちゃんの二人組に作っていただきました。

またまたありがたい!

そんな多くの方達に支えられています。そして、その輪はどんどん大きくなってます。

たとえば、わだっちもそう。

(そのうちにスライスさんの産後エクササイズにも参加してそこでも、仲間を増やす??産後のママに加わるのは勇気が確かにいるよね・・・)

ひだまりクリニックに来てくださる方たちもそう。

クラスの運営をお手伝いしますよ~といろんな方に声をかけてもらったりします。

「実家になりたい」とブログに言った通り、そういう気持ちなんだから、甘えてねと思うものの、一人では限界もあり。

多分春からはお手伝いしてくださる方が来てくださるので、きっともう少しひだまりクラスはスムーズに運営されるはず。

 

この二年間・・・

立ち上げた途端の震災でした。

そして、我が家にも激震、母の病気がわかったり、闘病を支えたり、みおくったり・・・すごい一年を経て、また母の命日が近づいてきます。

震災もそうだし、母のこともそうだけれど・・・

いのちは不確かなものなんですよね。

今日あるいのちが明日ないということだってあるのだと、突き付けられた日でした。

あの震災の日、江戸川区のまつしま病院で仕事をしてて・・・自転車で帰りました。

あのころに、おなかにいた子はもう一歳を過ぎたね。

あの後にお母さんのおなかに来た子だって、もうすぐ一歳になるような、赤ちゃん卒業しそうな子になってる。

本当に時は確実に過ぎる。

いろんなことがそれぞれにあり・・・

でも、しっかり生きなきゃってみんな思っていると感じます。

私自身も、母を見送ったけれど、しっかり生きなきゃって思います。

昨日、ひだまりクラスの午後、いつものようにおしゃべりしてて、黙とうをしようか?と聞いたら、

みんな、しましょう!と言ってくれた。

一人が、「しっかり生きてかなきゃね」といってくれて・・・

みんながそれぞれに受け止めて感じてることが素晴らしいなと思いました。

子どもは育つ。そして母も育つ。確実に育っている。

人は育つんですね。学べるんですね。

いつでも、その気になれば、その気さえあれば、変わっていけるんでしょうね。

おばちゃんはおばちゃんでも、憧れられるような羨ましがられるような、楽しそうなおばちゃんになりたいな。

若いママ達に、10?~20?年後、あんなおばちゃんにならなってみたい、と思われるような。

そのためには、元気で健康な身体よね。

うん、やっぱり来年度、どこかで、スライスさんの産後エクササイズ行こう~

一人じゃ心配だから、にしもとさんさそお!

来年度、月曜日に替えたのも、水曜日に行きたいからなのです(裏事情・・・)

運動不足を解消しなきゃね~~

元気に楽しく生きていくぞ~

最近久しぶりに再会、ゆっくりお話しした研修医時代からのあこがれの先輩産科医にも言われたところなんだよね。

やりたいことの追及!って。

出会い、やりたいこと、できること・・・その中から自分の道は自然と開けるんだって。

彼女ならではの説得力があったな~

おばちゃん党のコアメンバーなんですよね。

私も党員です!

おもしろいですよ~自分の中の無意識のジェンダーに気づくことが多いです。

いろんなことを考え、また新たに歩き出そうと決意する震災二年目でした。

忘れちゃいけない日、ですね。

それぞれの場所で一生懸命生きること(幸せを求めて)がまず大事なんだと思っています。

先輩にも言われたのです。

「幸せになることが親孝行。子孝行」って。

幸せになるために生まれてきたんですよね。

みんなそれぞれの幸せを求めて生きようということです。

幸せになろうという気持ちで結婚するし、家族になるし、子どもを産むのよね・・・

つまづきのない人生なんてないから、簡単な幸せは手に入りにくいけど、でも、

それでも、幸せになりたいですね。

みんな、幸せになりたいですね。

なんだか、とりとめのない文章ですね~~あいかわらずだなま、いいか

 

 

 

 


初イベント「からだノート作り」・・・反省も多々ながら楽しかったな

2013-03-12 00:15:26 | クラス日記

今日は、はじめてのひだまりの初スペシャルイベント「からだノート」作りを楽しみました

(社)知ろう小児医療守ろう子ども達の会主催講座です。

主催講座のひだまりでの開催は一年ぶりくらいでしょうか・・・

スタッフのさくらちゃんは、からだノートの実践者で、自分のノートを持ってきてくれてスタッフ参加してくれました。

パルシステムさんの助成(『2012年度パルシステム東京市民活動助成基金』)で行いました。

「からだノート」ってなんなのか・・・というと。

ママのカルテといってもいいのかも。

「お母さんが主治医」を体現することなんですねという嬉しい感想ももらいました。

発熱のホームケアで、冷やすこととか、水分のこととか、熱と一緒にある症状での話とか、解熱剤のこととか・・・

いろいろお話ししますけど、記録ってとても大事だよと加えます。

熱の一日目でその熱は何日続くか、は誰にも、どんな名医にもわかりません。

で、その多くは数日内におさまるのですけど、そうでない場合も時々はあります。

そんなときに、どんな経過で熱が続いてるのか、他にどんな症状が起こってきてるか、どう悪化してるか、解熱剤はいつ上げたか・・・

そういうことはとても大事な情報なんです。

でも、何日も続くと、わけがわからなくなったりもするし、親の方が看病疲れで朦朧となったりしたり。

ですから、簡単なメモでもいいから残しておいて、後で役にたつから、とお話ししています。

そんなメモから、立派な熱型票が完成するわけです。

熱型票は、いろんなクリニックでダウンロードできるようになっています。

今回は、(社)知ろう小児医療守ろう子ども達の会が『2012年度パルシステム東京市民活動助成基金』の助成を 受けて講座を行ったため、

会が作成協力した熱型票をお配りしました。

嘔吐や下痢などが正の字でチェックできるようになっていて、一日4回くらい検温した記録がかけるようになってます。

(まぁ、きちんと時間になったら4回!としなくてもいいんですけど)

熱と他症状(たとえば発疹)との関係で特徴的な病気が診断できたりもするのです。

そういうお話しもしつつ、その記録を書く、そして、残すノート、が「からだノート」なのです。

ママが主治医という点では「ママカルテ」って感じでしょうかね?

一番外来で困るのは、連れてきてくれる方と看病してる方が違っていて、情報が全くないというときです。

経過のメモがある人が多いですけど、ただ病気の子どもを連れて、

「何も聞いてなくて・・・昨日から熱があるみたいなんだけど・・・」という場合が本当に困ります。

情報の共有という点でも、とても活躍します。

スタッフとして、講師としても参加してくれたさくらちゃんは、離乳食の進み具合を書いておいて、

おばあちゃんにお願いしたときにとても役に立ったというお話しをしてくれました。

数年記録しておいて振り返ると、この季節にはこれに注意、とか、子どもの病気の特徴もつかめてくることもあります。

どう利用してもいいと思います。

たとえば、親の予防接種記録を残してもいいですよね。今更母子手帳でもないでしょうし・・・

季節のインフルエンザとか、今話題の風疹予防のためのMRワクチンの記録とか。

自分が使いやすいように楽しくね!

子どもの病気でもがんばってるなぁ、私!って気分になれるかも?

そうなったら素敵ですね。

小児科医は熱型票を作ってくれて、どこで薬(解熱剤)を使ったか、どんな症状が続いてるか、

おしっこは?ご飯は?機嫌は?など、がわかる経過表があったら、よく看てくれているママだなぁと安心するでしょう。

私は、とても安心します。

そんなノートを自分で作って、記録も看病も乗り切ろうと思います。

病気をしたら、子どもは免疫を獲得。ママは病気を看る目が育ちます。

そんな風に、病気をとらえると成長ともとれるわけですね。

「子どもは免疫力を獲得、ママは看病力を獲得」です。

看病力って経験値ですね。

悪いことではないんだと思えたらいいですね!

そして・・・実際のノート作りですが・・・

これは、反省点いっぱいです

もっとあらかじめきちんと用意すべきでした

キット作っておくとか、手順をわかりやすく書いておくとか・・・失敗。

ちょっとあたふたしちゃったなぁ・・・もっと楽勝かと思ってて・・・いやいや失敗、ごめんなさい。

次回からは気をつけます。

なんちゃってカルトナージュとマスキングテープでおめかし、の2パターンを用意しておきましたが、

布張りを選ぶ方が多かったですね。

あらかじめ写真を持ってきてねとお願いしてあったのですが、とっても素敵なオリジナルのものができましたね!

厚紙に布を張って、窓をつけて写真をセッティングして・・・という作業はみんな真剣、

とっても丁寧に仕上げてました。

ストライプやチェックだとまっすぐ張るのも割と楽ですしね。

木工用ボンドでの作業で工作なんですよね。

角を布できれいにくるむのがポイントです。

実は、私、カルトナージュの本を何冊か持っていて、独学ですが好きでよくやってます。

布も結構持っていて、薄くてはりやすいものだけでもいっぱいあります。

布好きで、ついつい買ってしまう・・・こういうときに使ってもらえて嬉しいです

そして、完成~

自分の作った子どものカルテはなかなかいいいですよね?

楽しく使ってもらえたら、と思います。

「子どもは免疫力獲得!ママは看病力獲得!」を忘れないでね、

大丈夫、治る!と自信を持って乗り越えられるように・・・と祈っています

☆講師でスタッフのさくらちゃん、ありがとう~

そして、さゆりちゃん、またどこかでやろうね~