ひだまりクリニック~産んだ後にも母親学級~

杉並区で小児科医がひらいている母子で集えるクラスです。

意を決して書きます。舌小帯のこと

2013-03-23 02:38:17 | 医療情報

もう随分長いこと、話題にしたいけど・・・と思ってたことがあります。

私が研修医の時代にはすでに問題になっていた、そして大昔に決着している問題です。

舌小帯のこと、知ってる?と聞いても多くのお母さんは知りません。

かなり情報通のママでも知らないことは多いです。

(それはとてもよいこと、そんなもん知らないままでいい)

でも、一部のお母さんがある場所、勧める助産師に出会ってしまって深刻に悩んでいます。

子どものためならと選択することもあってそれを悔やんでいる人もいて、正しい情報がなかったために・・・と

本当に気の毒になるとともに、そういう親の思いを利用しているとも思える行動に怒りを感じます。

その舌小帯のことを説明しますと・・・

桶谷式の母乳マッサージの看板をあげているところの一部の助産師さんが勧めています。

決して多くではないと思います。以前よりも随分減ったのも事実です。

でも・・・やはり、まだ存在する。そして、それは身近にあるのです。

杉並区の助産院でも、少なくとも二か所の、それも一部の助産師さんによる勧めのようですが、

舌小帯の心配をお母さんに伝え、

積極的に保険治療適応でない手術をする、ある決まった耳鼻科(早稲田にある)に誘導する、そして、小児科には相談しないようにとまで言っているのです。

今の時代、セカンドオピニオンを聞かないようにということ自体が危ないことだと思いませんか?

十万円以上の手術を勧めるのに、いろんなことが言われます。

舌小帯のために哺乳障害があるだけでなく、

髪が立っている、むきぐせがある、股関節が固い、よく泣く、寝ない、鳴き声が甲高い、顔色が悪い、呼吸が苦しそう、ゼロゼロいう・・・湿疹がひどい、アトピーになるかも・・・

非科学的ないろんなことを言い立てて、切除さえすれば、すべてよくなるという言い方をします。

大昔は、助産師が出生直後にはさみでちょんと切ってたようです。

その時代を、卒後25年の私は知りません。

すでに、助産師がするこの医療行為は禁止されていて問題になっていました。

研修医時代、指導医が助産師を強く指導していた記憶があります。

当時、この桶谷式の一部の助産師とわずかな耳鼻科医による舌小帯切除の問題はすでにあって、

極端な言動のために問題になっていました。

その名残でと思うのですが、「桶谷式」というだけで、うーむとなってしまう小児科医がいます。

(私もそう・・・ただし、母乳マッサージの効果は否定しません。私も助けられたことがあります)

その後、ある耳鼻科医が国際学会で「日本で突然死が少ないのは、私たちが積極的に舌小帯を切除しているからだ」と発表して、

大問題になりました。

そして、小児科学会小児外科学会も正式に舌小帯を切除するのは問題である、と見解を出すに至り、

強力にこの切除を勧めていた助産師さんが亡くなられたので、この問題は決着済みだと思っていました。

平成13年の小児科学会誌のものですから、やはり12年も前のことです。

ところが!

やはり、まだ本当に一部、この手術を勧める助産師がいて、さらに、杉並区で子育て応援券も使える助産院なのです。

(阿佐ヶ谷と荻窪にあります)

その保険のきかない治療を勧める助産師は、杉並区の助産師さんのグループには参加していません。

できたら、そちらでなく、杉並区の助産師グループのケアを受けてほしいなと思っています。

おへその緒」というグループを作って、母乳育児支援の勉強会を重ねています。

母乳のケアだけでなく、母子の集まる場を提供したり、新生児訪問をしたり、各地の子育てメッセに参加したりと地元での子育て応援をしています。

最近は、杉並子育てメッセにも参加されていました。

独自の理論で暴走する人とは一線を画しているということですね。

もしも、この助産院と縁があって舌小帯切除を勧められたら、ちょっとまってください。

普通の小児科医・耳鼻科医・歯科医に相談してみていただきたいなと思います。

小児科医ではまず勧められません。

ひだまりクラスにも、すすめられたけど、かかりつけ医で同じことを言われてやめたという人が参加されました。

哺乳障害の原因はそんなひとつの原因だけで解決するような単純なことではないのです。

そして、哺乳障害がなくならないどころか、傷の痛みのために母乳を飲まなくなった赤ちゃんだっています。

「よかった」という意見ばかりを出してきますからご注意を。

(よくなかったという声はそもそも出てこないことが多いです。後悔しても始まらないことだし、そう思いたくないという心理が働くだろうこともわかります)

舌小帯の問題は育つにつれて解決することも多いですし、

後にしゃべり方、発音の問題が起こったら、そのときに治療すれば大丈夫と言われています。

切除を勧める耳鼻科での保険のきかない治療は10万円以上の自費の手術だそうですが、

どうしても切りたいと思われたら、歯科・口腔外科での治療は保険対応で数千円です。

その治療でも、決してスタンダードなことではなく、ちゃんとインフォームドコンセントをとった上での処置です。

つまり、どんな結果が出ても納得できていますね?ということです。

そもそも、それが本当に必要かは単純に比較することもできないため、わからないのではないでしょうか?

この点でも、おかしなことだと思えます。

理論的にも非科学的なことばかり言い立てていると思います。

「信じるものは救われる」という、民間療法的な色合いの濃い治療でしょう。

保健センターでの健診では、保健師さんと舌小帯の問題が出るたびに、顔を見合わせてため息をついています。

おかしいなと思ってやめたという人もいる一方、切ったという人、

その中でも、よかったという方も一部いますが(しなきゃよかったとは思いたくない?)変化のない人も多いです。

その助産院では、明らかな体重増加の問題があっても、ミルクを足さないようにとされているのも問題です。

おっぱいは出ている、この子のペースで育っていると。

中には、ミルクを足していることを言わないで、通っているという人もいます。

ケアをしてもらって感謝されているのをよいことに、学会でも認められていない科学的な根拠のない、保険の効かない一部しか勧めない方法を迫るのは、本当に悲しいです。残念なことだと思います。

全てを赤ちゃんの責任にしないでもらいたいです。

自分たちの力のなさを赤ちゃんと母親の責任にすり替えている、そんな支援でいいのでしょうか?

また、母乳を上げながらミルクの力を借りることも、どうしても足りない場合は考えた方がいいでしょう。

ミルクを足してしまったら、母乳を飲めなくなってしまうということはないです。

母乳のよさも保ちながら、母乳育児を続けながらミルクを足すことは可能です。

母乳の上げ方次第です。

そういう指導がいい指導だと思います。

自分の力の足りなさを赤ちゃんの舌小帯の責任にすり替えているようにも見えます。

そして、お母さんを苦しめていると思います。

やめてほしい、本当に・・・

自己責任だということなんでしょうか。

そこに持っていけばなんだって許されるんでしょうか。

苦しむお母さんが減るように、と願っています。

母乳を上げること、そこだけに焦点が当たってるからおかしなことになるのです。

母乳育児は、お母さんがささえられて幸せであってこそ素晴らしいと思います。

母乳を上げることだけが目的で、ミルクを上げることが敗北と思ったり、自責の念に苦しんだりするお母さんを増やしてはいけないです。

お母さんにそういう気持ちを持たせてしまうこと自体、決してしてはいけないこと、母乳育児支援とは程遠いことだと思います。

嘘をつかせてしまうという態度であるということがそれを表しているでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 


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142 コメント

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私の周りやってます (かか)
2013-03-24 18:18:14
かなりの人数がやってました。大人も子供も。
コレやれば首痛が治る、痩せる、体の不調はすべてよくなる、夜泣きが無くなる…など、いろんな理由で。
保険効かないから8万とか言ってました。
手術後は息がよく吸える!とか感動してましたけど、誰一人良くなった人はいません。
今は誰も勧めなくなりました。話題にもなりません。言っちゃいけないみたいな雰囲気なのかな?
私も勧められましたが、疑問を持ったのでやりませんでした。お金も無かったですし(笑)
これを読んでやらなくて良かったなと思いました。
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Unknown (Unknown)
2013-03-24 23:57:38
まさしくこちらの助産院で言われ悩んだ経験があります。
あの時、産院の先生や家族に相談して手術しなくてよかったと思っています。今も全く問題なく成長しています。

助産師に舌が癒着してるからなんだか顔色が悪く見えると医療従事者があたかも占い師のような言いぶりでした。こちらの助産師と早稲田の耳鼻科医は親戚かなにかでそこが癒着しているらしいです。

母乳マッサージは確かに効果を感じられたので通いましたが、全て信じるのではなくセカンドオピニオンは必要なんだと切に考えさせられた事柄でした。
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舌小帯切除と桶や式 (カルトと思う。)
2013-03-26 18:57:26
舌小帯に熱心な先生は、舌小帯しか見えない、かたわな先生と思います。ほとんどカルトです。
桶や式も熱心な助産婦が、ビタミンAだったか、生後1週間とかに投与すべきことすらいらないと言って、新生児メレナで死亡させたじけんがありました。
舌小帯も、発音がおかしくなるとか、言ってました。
普通に考えれば、舌小帯が、あるから舌根が後ろに下がらなくして、気道が上向きつまり仰向きになった時、後ろに落ちこむのを防いでいるのに、
これらの先生は、根本的に医学の素養が無いか、発想がチェックできない人たちです。
舌小帯切って、知恵遅れの子が良くなった例は知りません。おかしくなった人は知ってます。オオム医学まがいの、新興宗教です。
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Unknown (Unknown)
2013-03-26 19:53:31
むずかしい話、勇気をもって書いてくださってありがとうございます
このオペにより虐待から救われたケースなどが1人歩きするなか、泣き寝入りしている人もきっと少ないのでしょうね
舌小帯短縮症と舌癒着症…全く別のことなのに混同されていることがまず問題
そして、本当に舌癒着で喉頭偏位があれば保険が適応されてしかるべきなのに、特定の医師が誰もかれも自由診療で高額な報酬を得ていることも問題
「突然死~」の話は絶対言いすぎだと思いますが、(ちなみにこれを国際学会で発表したのは佐山先生が書いている早稲田の先生ではなく、神奈川の先生ですが…)、「ある程度の月齢になっても睡眠時無呼吸があることはSIDSに結びつくことがるのでこのオペをする(≠単に舌小帯を切る)こと自体はやぶさかではない」と仰る一般の小児外科医や耳鼻科、口腔外科の先生もいらっしゃいますから、希望者を募って治験でもしてみたらいいんじゃないでしょうか? 医学の世界は5年前の常識が覆ることも当たり前にあるし、何度研究しても変わらないものは変わらないってこともありますから、双方エビデンスを出せばいいんだと思います
いろいろな人がいろいろなことをいうし、結果主体でしかない子どもを前に母親は立ちすくむばかりですが、いろいろな情報を与えられてどんな選択をしても母親が納得して安心して子育てができる社会を心から望みます
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かかさま (ひだまり)
2013-03-27 00:41:56
かかさま、コメントありがとうございます。
なんだか、よくなったという人もいるんですけど・・・本当のところどうなの?という疑いがぬぐえません。
まぁ、納得できる結果でよかったという人を否定してもいけないとはおもうのですが。
でも、よくなる理由が科学的にわからないし、でも、本当のところ、実はそうなのかも?とか、ちょっと焦ったりしたこともあったのです。知り合いで普通の人がやってよかったと明るい顔でいうので。
でも、泣いてるお母さんに出会ったとき、このままじゃやっぱりいけないと思いました。保健センターでであう、舌小帯のことを言われたお母さんの半分以上はやめてるんですけどね。自分も疑問を持ったり、家族やかかりつけ医の反対があったり、で。
私が聞いた話では10万円以上と聞きました。
保険で処置すると数千円なんですけどね。
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よかったですね。 (ひだまり)
2013-03-27 00:51:26
占い師のような口ぶり、中野江古田で一生懸命布教?していた助産師さんのお弟子さんかもしれませんね。
あまりに早稲田を勧めるって。早稲田のクリニックはその教祖の息子さんのようです。名前が同じですし、噂で聞きました。
母乳マッサージはとても効果があると思うので、ミルクを足さないようにと言われて、でも足さないわけにもいかず(あまりに泣くので)嘘をついて通っているという人もいて・・・なんだか、そんなの支援っていえるの?と疑問に感じたこともあります。
そもそも、この人にマッサージしてもらわないとと思わせることは支援ではないですよね。自分なりのコントロール法を伝えて自分でできるようにしてあげることこそが一番の支援だとおもいますけれど。
コメントありがとうございました。
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コメントありがとうございます。 (ひだまり)
2013-03-27 00:59:57
ホメオパシーのビタミンKのレメディー事件ですね。生後2か月の赤ちゃんはビタミンKだと言われてレメディー(ホメオパシーの砂糖玉の薬)を投与され、死亡した事件ですね。
ホメオパシーはあの事件で、いろいろな問題が明らかになり、社会的には表立って活動しにくくなってきたと思います。問題があることは社会で知られるようになったのは、勇気を出して問題提起してくださったご家族のおかげと思います。
ホメオパシーも舌小帯も、「信じるものは救われる」という自己責任の世界だと私自身はそう思います。
あまりに、悩んで苦しむお母さんが多いので、それぞれの問題だと思っていたけれど、書くことにしました。
結果、悩んでいた人が各地にあまりに多いことに驚きました。都内の一部分だけかと思っていましたが・・・
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ありがとうございます。 (ひだまり)
2013-03-27 01:23:50
オペで虐待から救われたケースというのは知りませんでした。
お母さんの心理面で、よい影響があるケースはあり得ると思います。
というか、あまりに思い詰める妻の精神面を考えて、反対だったけれど、死ぬわけでないからと承諾したという方を知っています。
誤解を招く書き方でしたね、国際学会の発表の先生は向井診療所の向井先生です。
早稲田の先生は中野で強力にこの治療を勧めていた(90%が異常と言っていた)助産師の息子さんです。国際学会の発表の頃はまだ開業されていないと思います。
本当に古くからある問題で、いまだに多くの方が振り回され悩んでいます。
ネットでは、いい情報も得られますが、とんでもない情報で苦しんでしまうことも多くあるように思います。
いいとこどりができること、自分に必要なよい情報を選び取る力が必用なんでしょうね。そして、そういう目を養う教育も必要だと感じます。
エビデンスを出すのは賛成ですけれど、乳児期に手術をするとどんな効果が出るのか、と示すということでしょうか?
少なくとも、突然死が減るというデータはとても出そうにないですよね。証明できるほどの治験データが集まるとはとても思えないです。
月齢の高い乳児期での睡眠時無呼吸は手術をすることによって明らかに減る、減ることで突然死を減らすことができるというエビデンスが出るでしょうか。
新生児期の無呼吸はむしろ普通にある現象ですね。多かれ少なかれ。母親が気づいているかどうかもありますし。
息がおかしいという訴えは一か月健診では多いです。
呼吸中枢が成熟している赤ちゃんはそれだけではなんともないですよ、きちんと呼吸しなさいと呼吸中枢が命令してくれるからと説明しています。
そして、3~4か月のころには、なくなっていることがほとんどです。
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やりました。 (hana)
2013-03-27 12:19:43
産後、世田谷区が派遣する助産師さんに勧められました。桶谷ではなく、自然育児と仰ってた様な。
困っている事を聞かれ、私が母乳があまり出ず、体重が増えないことなどを相談したら早稲田の耳鼻科を勧められました。泣きや反り返りが激しく、機嫌も悪い事が多い事も伝えたら、来た瞬間に顔色を一目見て原因が解ったと言われました。
口の周りの顔色が白いのも呼吸が出来ないチアノーゼで、全てが舌小帯に原因がある症状に当てはまってると言われ、今すぐに連絡取って、明日にでも行ってきなさいと。何人もそこを紹介して、皆良くなってると言ってました。二ヶ月以内にやらなければいけないとも。
本当に悩んでいた私は、救われた思いがしてすぐ予約を取ったのですが、気になったのは筋?筋肉も切断するのがセットになって勧められている事でした。また、特定の医院を紹介して、小児科に相談すると反対されて悩むだけだからしないでと言われたこと。
気になって小児科の先生や、別の耳鼻科医にも相談し、小児科は全体で勧めない事になっているし必要ないとの事でした。他の先生も同じでした。

それでも結果、歯医者さんで手術をお願いしました。踏み切ったのは発音の問題だけでした。神奈川の歯医者さんです。呼吸が楽にとは言わないが、下が少し癒着してるので、したったらずは改善できると説明を受け納得してやりました。ただ、筋を切断は必要ないと言われました。保険が効いて、二千円程だったと思います。
結果やりましたが、強く思ったのは産後事業で区がやっているものに、一部の偏った考えの助産師さんを派遣するというのはどうなのかなと思いました。産後すぐは外出も出来ず、赤ちゃんと2人不安な毎日な中、初めて悩みを打ち明け頼もしく思ってしまう精神状況です。
そんな中、お世話のしにくさは全てそれが原因で手術をやることで全部楽になると言われれば、洗脳ではないけれど近いものがあると思います。
筋肉まで切断なんて、本当にしなくて良かったと思います。

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やりました。 (ゆうまま)
2013-03-27 22:35:05
二年前、息子が一歳の時にやりました。十万以上払いました。気になっていた症状は一向に改善せず、一体なんだったんだろうと思っています。とにかく痛そうで可哀相でした。しなくて良いものだったとすると、とても胸がいたみます。
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