矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

Learning and Teaching, そして心電図がおもしろい!

2010-09-25 22:50:43 | 医学教育
オランダのUniversity of Maastrichtの”learning and teaching ”というUnit の勉強をしています。

教育者としての自分のteaching styleを振り返りつつ、学習者としていまの自分の学び方、小学校高学年から中学高校、大学、と”詰め込み教育”を受けてきた自分の学習スタイル、またUSMLEに始まり、内科系専門医試験などの米国での資格試験の受験経験、在米中の診療に関連した自己学習の仕方、など、さまざなまことを思い出しながら、

”Learning" とは、
”teaching" とは、

について学んでいます。

もっと学習するとはどういうことか知っていれば、あんなに短期間に詰め込みながら
USMLEの勉強しなかったのになあ、と思ったり。しかし当時は試験に合格しないといけなかった事情もあり、正常生理学、病態生理学の深い理解がまったくなされていなかったことをいまになって明確に認識し、とても残念に思います。それはいまでも、自分の臨床能力に如実に反映しているので、なんとかもっと実力をつけたいという気持ちになります。

そんなことを想起しながら、医学教育学の勉強をしています。

手探りの自習なので、どこまで勉強すべきか、課題をこなすだけでは意味がないと思いながら、ああ、もともと何が目的でこのコースを取ったのか、など振り返っています。


こうした”振り返り”は、さっき読んだ、learning functionのうちの、
”self-regulation”ということか、と思いながら、自分を相対化していったりきたりしています。

話はそれますが、

課題をこなすために読まなければならない文献が多く、集中力が切れるとinternet surfing してしまいますが、そのなかで見つけた心電図の解説でとてもおもしろいものがあったのでご紹介です。

医学書院の医学界新聞で、学生・レジデント版で慶應大学循環器内科の香坂俊先生が
連載されています。

香坂俊先生は、チーフレジデント、チーフフェローにも選ばれ米国内でも模範的かつ超優秀な臨床医としてご活躍された後帰国されました。何度かセミナーなどでご一緒したことがありますが、本当に優秀な方で感銘を受けています。


http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02878_09#a

すでに5回連載済みですが、循環器内科はかなり不得意の私にも、とても興味深く書かれており、感動しました!

その上記の正常生理学、病態生理学で、心臓のところは、物理化学の理解が不可欠で、そういう分野は私はどちらかというと苦手です。心電図も、在米中レジデントのときに、ベクトルの考え方で読み方を本で勉強し、少しましになりましたが、全般的に、いまでは心電図は読み方をすでに忘れてしまっています。

そのような”苦手”意識を持っている私が、”心電図がおもしろい!”と思い、一般内科の実力維持のためもう少し勉強してみたい、と思ってしまったぐらい魅力的な文章で心電図が説明されています。

物語風なので読みやすいです。

生理学のバイブルのGuytonで、心臓の正常生理を復習したいです。


このような気持ちになるのは、”Exposure" の仕方(新しい分野への触れ方)によるなあ、と改めて思います。

学習理論からすると、”Exposure" によって”Motivation" に大きな影響があるということかなあ、と習い始めたことをあてはめてみています。


熱帯医学は楽しいです!

2010-09-25 13:08:01 | 感染症関連
1994年にピースボートに乗って、アジア、アフリカ諸国を駆け足で見てまわって以来、国際保健、国際医療協力にとても興味を持っていました。それがきっかけで、感染症科を自分のsubspecialtyに選びました。

テキサス大学で、自分のボスだった抗菌薬の耐性化やVRE バンコマイシン耐性腸球菌の世界的第一人者のDr. Barbara E. Murrayと一緒にリサーチするまでは、熱帯医学にかなり傾倒していました。先進国で診療していると熱帯医学はかげがうすくなっていくのですが、それでも、2000年に初志貫徹、どうしても学びたいと思って、London School に熱帯医学の集中短期コースを受けに行きました。これはいまから思い返してもかけがえのないトレーニングでした。

前置きが長くなりましたが、当時、マラリアのスメアで、途上国で自分で診断をつけられるようになるために、ということで
ぜいたくなほど豊富な検体を使って、顕微鏡トレーニングをさせてもらいました。80名ぐらいのクラスメート全員にそうした検体はあります。

London から戻ってすぐに、テキサスの病院で、アフリカのマラウイから帰国した方でsepsis、意識障害で転送されてきた患者さんのケアにあたったのはいまでも鮮明に記憶しています。真夜中に検査室で、マラリアのスメアを検査技師さんと一緒にみながら、attending 指導医に電話で相談しました。

5年半前に帰国してからも、1-2年に1回ぐらいですが、旅行帰りの患者さんで、マラリアの鑑別が必要な方がきます。

今回もそのような方の診療に携わることができてとても有意義でした。

やはり、”現場力”というのが一番大切であることを実感します。

一生のうち、一度は、途上国で感染症診療や教育に携わってみたいと思っています。

米国感染症学会 IDSAがアフリカ諸国での数週間単位のteaching スタッフをリクルートしたりしているようで、大変、興味深いです。