矢野(五味)晴美の感染症ワールド・ブログ

五味晴美の感染症ワールドのブログ版
医学生、研修医、医療従事者を中心に感染症診療と教育に関する情報還元をしています。

今回の学会で得たキーワード

2010-09-10 22:14:04 | Glasgow 2010
本日なんとか帰国できました。時差ぼけもあり体がだるいため自宅でそうじと片付けをしていました。

今回の学会で得たものをすぐに日常診療・教育・研究に役立たせたいです。

得た知識のAppplication(応用)ということになります。

今回自分のreminderとして、学会で得たキーワードを列挙しておきたいと思います。帰りのフライト中は集中して資料を読めたので効率よかったです。

AMEE 2010の傾向

1.世界的にMedical Schoolのaccreditation(教育内容のpeer-review)の必要性が叫ばれている

2. 医学生(Medical student)が医学教育者(Teacher)になることがクローズアップされている

”Student as a teacher”という考え方


正規のカリキュラムや課外カリキュラムで、”教えることを教える”プログラムを提供しているところとそれに関する研究が多かった



3. Teaching is creative and an application of learning.
2に関連して、「教えること」は「学んだ内容の応用」であるため、学生が教えることを学ぶことで、学んだ内容をより深く理解できる機会になる、との強調。

尊敬している指導者のDr. Steward Menninが言ったことばですが、

”Teaching is a creative work." というのが非常にこころを打ちました。

4. 医学教育のグローバル化

米国からの発表で、米国の医師免許を取る外国人の出身別内訳が出されました。

驚異的ではありますが、インド、中国、フィリピン、などアジアからの供給が非常に多かったです。

なかでも、圧倒的に多かったのが、26%:インド出身者です。そのため、米国は自国医療の質に直接かかわるインドの医学部教育についてもモニターする必要があると判断し、さまざまな統計・資料などを蓄積しているそうです。データに基づく戦略的な調査だと思います。

さらに今回グローバル化が進行する(各国の医学部卒業者が主に米国、英国、カナダ、オーストラリア・ニュージーランドなどに移民医師となって移動する)ため、各国の医学部教育内容の質の担保が重要という見かたもされていました。

学会中に講演者が言ったことばのひとつですが、

"Medicine is delivered

in a sociocultural context
in a specific health care system."


”医療は、社会文化背景のなかで、特定の医療保険制度のもとで提供されるものである”

究極は、この言葉に尽きるのかな、と改めて思いました。

「何が患者にとっての最良なのか」は社会文化背景、医療保険制度のもとで、個人の嗜好や意志が加味されて判断されるもの、という医療の原点を常に見据えた診療を提供したいと思いました。

現在、「科学的に適切である、標準である」という結論に達している「標準治療」も
当然、社会文化背景と医療保険制度のもとで施行された臨床試験に基づいているため、
「日本での最良」を実行したい場合、日本の医療現場という背景と医療保険制度での臨床試験に基づく科学的かつ精緻な判断が必要ということに帰着します。

なんとかこのあたり、「日本での最良」を追究できればと思うわけです。

5.Academic freedom, Decision-making freedom
学習者が、自分の診療上の意思決定を自由に行える(安全を確保のうえで)環境が
必須である


6.Work-place learning 職場での学習

診療の学習者が、職場で経験したことを学習につなげるためには、

経験の”解釈”interpretationと”意味づけ”construcgtion of meaningが必要である。

つまり”経験しただけ”では学習につながっていないので、経験を通して解釈し、意義付けができると次の診療に役立つ、ということです。