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Opened Zipper

迷路館の殺人 / 綾辻行人

2005-12-07 23:59:59 | 読書
綾辻行人の「殺人方程式 切断された死体の問題」は自分にはちょっと合わなかったんですが、館シリーズも1つは試しておこうということで「迷路館の殺人」を読んでみました。


書名:迷路館の殺人
著者:綾辻行人
発行:1992年 講談社(講談社文庫)
ISBN:4061852264
価格:620円


■ストーリー

高齢の推理小説作家・宮垣が還暦祝いとして、以前から特に目をかけている若手作家4名、評論家、編集者とその妻、推理小説マニアを4月1日に自分の屋敷に呼び集める。
宮垣の屋敷「迷路館」は入口以外は地下に作られており、ミノタウロスの神話をモチーフに迷路のような廊下でつながれた18の部屋から成っていた。
呼び集められた全員が到着した後、秘書から宮垣が病苦により自殺したと告げられる。
宮垣の遺産10億円を賭けて4人の作家に懸賞小説を書かせ、どの作品が一番かを評論家達が判定するよう遺言で求められていた。
条件は舞台を迷路館とした殺人事件、被害者は各作家自身、期日は数日後で、それまでは作家・評論家達は外出しないこと。
皆が遺言に従うことを承諾し、懸賞小説の執筆が開始された矢先、1人の作家が殺害される。
その死に様は、作家自身が自分を被害者として書きかけの小説と全く同じ見立てになっていた。
迷路館の中には招待客以外では宮垣の秘書と家政婦しかいなかったが、秘書の姿が消えており入口の扉は厳重に閉じられたまま。
電話線も切られており、外部との連絡ができない状態。
招待客達の家族・知人が異変に気付いて迷路館に来るのを待つしかなく、それまでこの異常な状況の中で懸賞小説執筆が続けられることになった。

■感想

「殺人方程式」を読んで合わないなと思っていたせいもあって、あまり期待せずに読んだのですが、予想以上に楽しめました。
作中作の構成なんですが、本の中にその表紙やあとがきまで構成されてて凝ってるなかと感心します。
いかにもというかありえねーっつー感じの舞台・状況設定で、起こるべくして起きたような殺人事件だし、どう考えてもトリックや犯人はあいつだろ、と思いながら読んでいました。
実際、作中作での解決としてはその通りだったんですが、さらにどんでん返しが待っていて最後の最後で楽しませてくれました。

個人的には、作中作の中で起きる殺人事件が、実はやっぱり各作家の小説だったというオチを期待しながら読んでました。
話あった結果、皆で遺産は分け合おうということになり、各人が殺害されるシーンを各自で書いて連作とし、最後に全員で解決編を合作したと。
読んでいる側には実際に事件が起きて、懸賞小説どころではない事態になったように見せつつ、実は全部懸賞小説の内容をそのまま載せているだけだった。
誰も殺されてないし、宮垣も実は死んでない、という展開を予想してたんですが…全然違った。

面白いのは面白かったんですが、作中作が長過ぎたような気がしなくもないです。
あれを引っ張ったからこそ、最後が楽しめるのかも知れないですが、ちょっと冗長だったかなと。

綾辻行人の小説ですが、「殺人方程式」「迷路館の殺人」を読んだ限りでは、あまり人間がちゃんと描かれていないように感じます。
何だか軽いというか薄っぺらいというか、登場人物達に人間味が感じられないです。
どうもトリック優先というか、まずトリックありきというか、クイズの本を読んでいるような気持ちになるんです。
自分も読みながら、コレがひっかけか? 伏線か? コレもトラップか? などと疑いつつ読んでました。
そういうクイズ本を読むような感覚で楽しめる人が、綾辻行人を読むんでしょうね。

面白いかもとは思うんですが、宮部みゆきのような小説が好きな自分としては、イマイチ合わないタイプのような気がします。
綾辻行人、もうちょっと他の作品も読んでみるか、もうこれ以上はやめておくか、現在思案中です。



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