OZ.

Opened Zipper

映画「シャカリキ!」

2010-08-02 00:00:01 | 折りたたみ自転車(MFWS-206F)
(2010年7月上旬)
文庫版のマンガ「シャカリキ!」はコミックレンタルで読んだ2~5巻を除いて(1・6・7巻だけ)持っていましたが、楽天ブックスやAmazonで注文する際に気が向いたら上乗せして徐々に買い揃え、先日全巻揃いました。
買う度に読み直して、読みながら疲れてしまってます…やっぱこのマンガは石渡山ゴールまでで終わっても良かった気がしなくもない、でも面白いから良いか。
マンガが揃ったところで映画版「シャカリキ!」をまだ観ていないことを思い出します。
WOWOWのWebアンケートを回答する都度、「映画シャカリキ!放映希望」と書き続けてますが、相変わらず放映してくれません。
映像でも観てみたいな~という気持ちが抑えられなくなったので、GEOへ行って100円でレンタルしてきました。
ついでにGEOカードがPontaカードに交換してもらえたのでラッキーだったな。
今まで面倒でPontaカードを作らずにいましたが、今後はローソンでポイント貯めよう。

さて、本題の映画「シャカリキ!」を観てみます。

題名:シャカリキ! (2008年日本)
時間:106分
監督:大野伸介
原作:曽田正人「シャカリキ!」
出演:
 遠藤雄弥(テル:野々村輝)
 中村優一(ポッポ:鳩村大輔)
 鈴木裕樹(ユタ:由多比呂彦)
 原田泰造(監督:由多比呂志)
 南沢奈央(マネージャー:永田桜)
 小林裕吉(将軍:松平健一)
 坂本真(教授:鳥越雅也)
 小柳友(モアイ:斉藤大樹)
 池田哲哉(デイブ:丸山太志)
 中越典子(テルの姉:野々村さゆり)
 柄本明(校長)

自室で筋トレしつつのながら観で観終わりましたが…さて、どう評価したら良いんだろうか。
この映画は原作がマンガ「シャカリキ!」ですが、原作ファン向けの映画ではないようです。
また自転車ファン向けの映画でもないようです。
原作の設定やエピソードを使っている部分もありますが、映画オリジナルな部分が多いのと、まるでマンガみたいな展開など色々ツッコミどころがあるため。
なのでこれはD-BOYSによる集客力を期待した、一般向けのスポーツ青春映画でしょうか。

自分は今後この映画を観る際には、以下のように自分に言い聞かせてから臨むことにしました。
  1. 「原作と違う!」と思ってはいけない。
    この映画は原作を忠実に再現したものではなく、映画版オリジナルの全くの別物。
    むしろ原作と同じ点があったら、それだけで有り難いと感謝すべき。
    できれば原作のことは忘れて、映画の設定を素直に受け入れること。

  2. 「そんなデタラメな!」と思ってはいけない。
    この映画は実はマンガなので、リアリティを求めてはいけない。
    摩訶不思議な展開があっても、広い心で許容すること。

  3. 「うーん、マネージャーの女の子が…」などと思ってはいけない。
    このマネージャーはストーリー上は存在してなくてもほぼ影響無いので、男臭い絵面を緩和するためにキャストされている。
    自分の好みで文句を言ってはいけない、自転車部に女子マネージャーが居るだけでも有り難いと思え。

実際、2回目を鑑賞したときはこの心構えで観はじめたんだけど、(3)だけはどうしても納得いかなかったな…まだまだだな>自分

以下、原作も映画もネタバレしまくるのでご注意下さい。



まず最初に、子供と一緒に観ていた日曜朝のヒーロータイムの番組に出ていた俳優が出ているので、その視点で観てしまいます。
中村優一は仮面ライダー電王のゼロノス桜井侑斗。
「最初に言っておく。俺はかーなーり、強い」とか言ってくれんかな。
鈴木裕樹は獣拳戦隊ゲキレンジャーのゲキレッド・漢堂ジャン。
「ワキワキのゾワゾワだ~」とか言ってくれんかな。
しかし桜井侑斗人はともかく、ジャンは不気味な雰囲気を漂わせるキャラなので、爬虫類っぽい演技をしていて気持悪いです。
息子タイトに見せたらショックを受けるかも知れないので、隠匿しとこう。

原作ファンの立場から見ると、色んな設定や名前やエピソードが原作から使われているんだけど、ストーリーがかなり改竄された感があってデタラメに感じられます。
期待通り、石渡山ゴールまでの映画なのでその点は良いんですが、それにしても…
映画が原作と異なる点は多々ありますが、主なものはこんな感じ。

【設定・ストーリー上の差異】
・亀高自転車部が廃部の危機。(シナリオ上都合だろうが強引)
・原作には居ない自転車部員が準主役で登場。(将軍、教授、デーブ、モアイって誰?)
 ※将軍は役名:松平健一で鳩村は松と呼ぶので原作の松任谷を元にキャラを付けたのかも
・ユタは監督のやり方に反発して鳳帝高校に転校。(って監督=父親(保護者)なのに子供がそんな勝手なことできる? しかも部員多数も同様にって?)
・ユタが鳩村と同級生(3年生)らしい。
・ユタのキャラが不気味、もっと愛想は良いはず。
・テルがそこそこしゃべる。(原作並みに寡黙だったら演出が困難だろうが)
・テルが最初に乗ってた自転車がBMX、そしてロードバイクを知らない。
・鳩村のキャラが妙にソフト、永田桜にポッポと呼ばれている。
・永田桜が鳩村と幼馴染の同級生(3年生)らしい、そこそこ自転車に詳しい。
・永田桜のキャスティングが自分的にはちょっと残念。
 ※個人的趣味の話、元々原作の永田桜も好みじゃないが…
  それ以前にこの点は原作との差異として挙げるものじゃないけど。
  いっそ年齢不問で中越典子がテル姉じゃなくマネージャーで良かったのに…
  なんだったらテル母の奥貫薫にマネージャーやってもらっても良かったくらい。
・石渡山市民レースより前にインターハイのチームロード。
・インターハイでテルが暴走して失格、亀高自転車部がいきなり廃部。
・ユタがヨーロッパへ進出決定。
・監督自ら自転車で先導してテルを指導。
・石渡山は実業団レーサー牧瀬とではなく、ユタとの対決。

また、映画を観ていて疑問に感じる点が多々ありました。
【疑問点】
・50万円もする自転車を、将軍の母親は「そんなもの置いていきなさい」と言い放つ。(あのPanasonicのロードバイクは将軍個人のだよなぁ? 自転車部所有ってことはないよな)
・デーブやモアイがせいぜい1ヶ月くらい練習しただけで急成長。
・画鋲ばらまきテロのエピソードは同じだが、亀高以外のサポートカーが来ていなかった理由が不明。
・ユタの自転車にはディレイラートラブルが無かったにも関わらず、テルが追いつく。(追いつけた理由は? 驚異的な登坂能力?)
・山頂直前で永田桜が鳩村ではなくテルに声をかけて気合を入れたのは何故?

他にも、サポートカーに乗車していた自転車に乗れない自転車部員:教授が山を走って下って、デーブのホイールを受け取り、山を走って登ってテルに追いつき渡している点も謎です。
自転車に乗れないキャラで運動能力があるとは思えないのに、自転車をかついで走っているハンデがあるとは言え、鍛えているはずのテルに対して「下ってから登って追いつく」って、どんだけの体力・脚力かと。

鳩村と永田のエピソードは、入れようとして一部しか入らなかったのか、妙に中途半端。
山頂直前でのテルへの声かけは鳩村にも聞えたはず。
「明日、俺が勝ったら付き合ってくれ」と鳩村が永田に言ってOKをもらっていたのに、ゴール後「勝ったのは俺じゃない、亀高自転車部だ」と言ったのは、チームを思ってのことではなく、山頂手前で永田が鳩村ではなくテルに声援を送ったことで永田の気持ちを悟り、あの約束が無効だと言いたかったのかも知れない。(深読みし過ぎ?)
しかし永田がテルに惚れるポイントが見当たらない、テルってほとんど野生動物みたいなもんだし。(野良自転車バカという珍獣っつーか)
それ以前に個人的美意識から永田じゃ鳩村には釣り合わないと思って納得いかないのかも知れないけど。

ただ、原作と違う点があることはしょうがないと思ってます。
映画の時間枠に収める必要があるとか、マンガのように表現できない部分とか、ターゲットが読者層とは異なるとか、スポンサーの意向とか、色々理由があると思うので、なかなか原作通りに映画化するは難しいだろうしなぁ。

と譲歩した気持ちで、原作は考慮せずにこの映画単体ではどーよ? と考え直してみます。(なるべく好意的に評価する)
理不尽に見える部分などは「所詮マンガだから」と解釈して、広い心で見てあげよう。
※ここで言うマンガってのは原作が漫画という意味じゃなくて、「マンガみたいにファンタジックでご都合主義」という意味。



以下は映画「シャカリキ!」を色々な面でかなり好意的に解釈して、良い点を見出そうとした感想です。

自転車部が廃部になりそうな状況設定なので、普通はその廃部から救うためのストーリーになるはず。
ところがテルが暴走して失格となり、いきなり廃部になる展開。
通常なら主人公が巻き込まれ型のストーリーで、最初は嫌々やっていたのに段々ハマっていく、最後は皆で頑張って廃部から救う、というのが定番。
しかしなにせ主人公があのテルのせいか、イレギュラーな展開で序盤でもう廃部。
テルが巻き込まれたというより、皆がテルの巻き添えを喰った感じ。

廃部になってこれからどうなるんだろう、「次のレースで優勝したら部を復活させる」みたいな条件が出てくる展開?
と思ったら廃部になった後も自転車の練習を続けているテル…この展開はとても良かったかも、確かに自転車部が無くても自転車には乗れる。
部活動やインターハイなど関係なく、「好きだから自転車に乗ってる」というテルの気持ちがうまく表現されたエピソードになってる。

テル自身にとっては自転車部の復活などは考えておらず、ユタと勝負がしたいだけ。
本当は俺が坂で一番だとユタに認めさせるため、ユタに勝つことが目標。
テルにとっては本来、テル個人対ユタ個人のレース。
またテルからの挑戦状を受け、同様に(傲慢さから)チームメイトの力を借りず個人で戦おうとするユタ。

この個人で(独りで)走ろうとするテル(とユタ)に対して、チームで協力して走ることの良さ、大切さ、楽しさを教えようとしている由多比呂志監督。
これがイコールこの映画のテーマ。(なんだろう、きっと)
原田泰造の力の抜けた感じの演技は良い。

石渡山のレースの中で、チームのために自分を犠牲にして頑張るデイブ、モアイ、将軍、教授の姿を見て、気持ちが変化していくテル。
色々とマンガ的なレース展開があるが、それはご愛敬として、苦笑いしつつスルー。
3位でゴールしてもガッツポーズ、「負けた、でも気持ちエエ」と言うセリフで、自分個人ではなく亀高チームとしてユタに勝ったことを喜んでいるテル。
(ゴール直前までテルがチームに協力してた感は全く無くて、最後の最後に鳩村をアシストした形になっただけだが…それは原作でも同じだし)

そして監督(父)に「惜しかったな」「たいしたもんだろ、奴ら」と声をかけられ、悔しい顔を見せた後「まぁ、な」と応じて表情を緩め、この映画中で初めての笑顔を見せるユタ。
ずっと不気味な表情しっぱなしだったんで、一瞬だけどようやく見せたユタの笑顔のインパクトが強くて良い。
ユタにこの笑顔を出させるための石渡山レースだったのか、という感じ。

この笑顔は自嘲でもあり苦笑いでもあり失笑でもあり喜びでもある、と思う。(ここは更に好意的に深読みし過ぎながら解釈)
チームの力に頼らず独りで走ろうとした自分の愚かさへの自嘲。
負けたことの悔しさからの苦笑い。
父親が自分に教えようとしていたことに気付き、気付かなかった自分への自嘲と、不器用で教え方の下手な父親に対する失笑。
父親が自分を認めず、嫌い、疎んじてエースにしなかった…のではなかったことに気付いて、安堵した喜び。

といった諸々含めた笑顔って解釈しとくことにしました。
ユタがヨーロッパへ旅立つ前に、父親(監督)と気持ちが通じあえて良かったよ。



…さて、こんな風に好意的に解釈してみましたが、そうするとこの映画のキモは由多親子のドラマだったんだな。
自転車レースで、チームで協力して走ることの大切さを教えようとする父親と、自身の能力の高さ故に独力で戦おうとする息子。
主人公はテルのはずですが、あんまり感情移入する余地が無いので、振り返って考えてみるとテルは「亀高自転車部の監督・部員を発奮させる起爆剤の脇役」だったように感じます。
そーか、テルは主役じゃなかったのか、なるほど…まぁあのキャラは原作でも感情移入はできなかったしな、スゲーなこいつとは思うけど。

きっと本編に入らなかったシーンが多々あるせいか、所々で意味不明だったり説明不足だったりするので、中途半端感の強い映画ですが、(実は主役かも知れない)由多親子に注目して鑑賞すれば、それなりに楽しめるかも知れません。
原作を知っている人は原作のことは忘れ、自転車好きな人はリアリティにはこだわらずに観るようにすれば、許せなくて暴れたりせずに済むんじゃないかと思います。