日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

新しい「脱炭素エネルギー」となるか?核融合発電

2022-02-07 11:37:42 | アラカルト

日経新聞のWebサイトに、京都大学のスタートアップが13億円の資金調達ができた、という記事があった。
日経新聞:京大発核融合スタートアップ 日揮などから13億円調達

「核融合」という言葉だけで、拒否反応を起こす方は少なからずいらっしゃると思う。
第二次世界大戦で広島・長崎に投下された「原子爆弾」、東日本大震災時に事故を起こした「東京電力 福島第一原子力発電所事故」などによる、放射能被害。
特に「東京電力 福島第一原子力発電所事故」による、地域全体の避難地域指定は、すべて解除されたわけではない。
10年余り経過しても、元に戻ることはなく、解除地域においても住民の方々の中には戻ることを諦めた方も少なくない、という報道がある。
避難地域の人たちだけではなく、一時期東京を中心に関西以西に「放射能疎開」をされた方々も数多くいらっしゃった。
そのような方々にとって「核融合」とか、「核融合発電」という言葉を見たり・聞いたりするだけで、一種のアレルギーのような拒否感を持たれるのは、当然ではないだろうか?

その一方で、この京大のスタートアップ企業が手掛けるような「核融合発電」そのものが、世界から注目されている、という点も見逃せないところだろう。
何故なら、記事にある通り現在研究が進んでいる「核融合発電」は、「CO2削減の切り札」とも言われている「発電システム」だからだ。
そのため、米国のみならず欧州でも研究を進め、「世界の核融合発電システム」の覇権をとろうとしている、といっても過言ではない、という現状なのだ。

気になるのは、13億円の資金調達という額だ。
記事にある通り、米国などとは比べモノにならないほどの少額なのだ。
有利性があるとすれば、発電技術に必要な「プラズマ」という分野の研究が、比較的有利という点かもしれない。
10年ほど前に、名古屋大学の市民公開講座で「プラズマの医療分野への活用」というテーマで、話を聞きに出かけたことがあり、以来「医療技術としてのプラズマ」とは違う分野での活用の話を、何度かお伺いすることができたからだ。
その話では、研究レベルとしては決して海外から遅れを取っているわけではないどころか、相当進んでいるということだった。

そしてもう一つ注目すべき点は、この「核融合発電」に使われる放射性物質が「トリチウム」である、という点だ。
「トリチウム」という名前の放射性物質は、過去何度も私たちは耳にしているはずだ。
それは「東京電力福島第一原子力発電所事故」で問題になっている「汚染水」に、大量の「トリチウム」が含まれている、というニュースだ。
その「トリチウム」を大量に含んだ「汚染水」を海に放出する、という方法での処理をする、ということで周辺諸国が反対をしている、という現状がある。
半減期が13年くらいだとすると、事故が発生してから11年経過しているので、問題にならない状況かもしれないが、やはり「放射性物質が海洋に放出される」ということは、「環境問題」として反対されるのも当然だろう。
その「汚染水」と「トリチウム水」が分離することができ、「トリチウム」を「核融合発電」に使うことができれば、「負の遺産」である「東京電力福島第一原子力発電事故」であっても、わずかでも社会還元できるのでは?ということなのだ。
事実、すでに「汚染水」と「トリチウム水」を分離する、という技術は、確立してるようなのだ。
電気新聞:トリチウム水の分離可能に。近大などが装置を開発(2018年7月3日記事)

もしかしたら、日本の弱いところはこのような技術がここに確立しているのに、垣根を超えた活用ということが苦手ということなのかもしれない。
厄介者であっても、新しい技術で生活者に還元できるのであれば、しっかり国がサポートをして「世界の基準」を獲ってほしい。