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動物保護と自然環境は両立するのか?

2022-02-26 16:33:33 | ビジネス

ここ数年、世界各地の動物愛護団体が、ムートンを含む毛皮や水鳥のダウンを人が獲ることに対して、反対の声を上げている。
その効果もあって、欧州の名だたるファッションブランドでは、毛皮をファッション素材から外すようになった。
代わりに登場したのが「エコファー」と呼ばれる、化学繊維でできた素材だ。
ダウンにしても、「エコダウン」という名前で、化学繊維を使った商品が数多くなってきている。

確かに、動物愛護という観点で考えれば、代替素材として化学繊維を使い、同等の暖かさ・心地よさを得られるのであれば、そのような商品を選ぶことは、選択肢としてあっても良いと思う。
ただ自然環境という視点では、どうなのだろう?と、常々疑問に思っている。
それは「化学繊維=石油由来の繊維」だからだ。
かつて「木綿」と呼ばれていた、セルロース繊維であるレーヨンなどもあるが、それらの製品を作るために膨大なエネルギーが消費されているのでは?と、考えるとどうなのだろう?という、ことなのだ。
その中でも、ポリエステル繊維のものは洗濯をするたびに、マイクロプラスチックを吐き出しているようなものだ。
海洋汚染の要因の一つとされている、あのマイクロプラスチックを、何気ない日常の中で作り出している、という指摘がされるようになってきている。

また、第2次世界大戦前に国策として輸入された動物が野生化し、生態系を脅かし始めているという問題も、出てきている。
代表的な動物は、大型のネズミといわれるヌートリアだろう。
国策として輸入された理由は、「毛皮を獲るため」。
水辺に生息するヌートリアの体毛は、外側の毛は硬く水を弾くが、内毛はとても柔らかく、暖かい。
ムートンなどよりも肌触りは良いかもしれない(以前、仕事でヌートリアの毛皮に触ったことがある)。
そのヌートリアが、国策に合わず野生化し全国各地の河川域で繁殖し続けているのだ。
元々外来種だったこともあり、外敵となる動物は少なく、またネズミ目の動物ということもあり「鼠算式」に繁殖する、という状況になっている。
動物愛護団体の方々からすれば、人間の都合で日本に持ってこられたヌートリアが可哀そう、ということになるのだと思うのだが、その一方で河川域で繁殖されることで、貴重な日本の在来種が減少しているという懸念もあるのだ。
このような問題は、感情的な「可哀そう」では片づけられない問題なのでは、ないだろうか?

このような外来種による自然環境という問題のみにフォーカスするだけではなく、他の方法はないのか?ということも、同時に考える必要がある。
例えば、上述した「ダウン」に代わる自然素材の利用だ。
「ダウン」の主な産地というのは、欧州の中でもポーランドのような寒い地域のものが最高級といわれている。
そして面白い(といっては変だが)ことに、注目されている代替品がインドネシアで育つ「カポック」という樹木の実だという。
既に、日本の社会起業家がこの「カポック」に注目をし、製品化にこぎつけている。
KAPOK-KNOT:カポックとは

この「カポック」の栽培によって、インドネシアの栽培地域では安定的な収入を得られるようになる、というだけではなく雇用の創出という点でも注目されるようになるだろう。
とすれば、化学繊維に代わる自然繊維で環境と現地での雇用や安定的な収入が得られるようなシステム作りができる企業が、これから先求められることは暗に想像できるだろうし、そのような素材を世界中で見つけようとするのではないだろうか?

かつて家庭用洗剤のエコ化として注目されたパームやしを求め、大規模農場化され逆に生態系の破壊という指摘がされるようになった。
それと同じことが起きないようにするためには、どうしたらよいのか?ということを、優先して考えることが、これからのビジネスセンスとして必要のような気がする。