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A・ジョリー:ショックとメディアリテラシー

2013-05-25 00:04:56 | 徒然

米国女優のA・ジョリーさんが「予防的乳房切除術」を行った、とニュースになってから10日余り経っただろうか?
今週初めには、日本の2病院で乳がんに対する予防的切除を予定している、と発表があった。
そして、今日の讀賣新聞には、16病院が実施・計画を予定している、と伝えている。
讀賣新聞:乳房切除、16施設が実施・計画…がん予防で

A・ジョリーさんのニュースは、社会的に与えた影響も大きかったようで、いわゆる一般誌と呼ばれる雑誌などにも掲載されていた。
もちろん、女性週刊誌には特集記事として掲載された。

このような情報が一般メディアに出てくると、不安感を覚える人が急増する。
それはある意味メディアという力の凄さだと思うのだが、チョット立ち止まって考えて欲しい、と乳がんを経験した私は思うのだ。
と言うのも、A・ジョリーさんが「予防的乳房切除」を行った大きな理由は、お母様が乳がんで亡くなったからだ。
そのお母様は、10年という闘病の末57歳(だったと思う)で亡くなっている。
と言うコトは、乳がんに罹患した年齢は40代後半だった、と言うコトになる。
ただ、日本と欧米とでは状況が違う、と言う事実は余り報道されていない

WHOのデータより
グラフが読みにくいとは思うのだが、一番左の日本のグラフだけが米国など他の国よりも、低い位置に集中しているコトが判ると思う。
すなわち、A・ジョリーさんのお母様が乳がんに罹患した年齢は、日本女性のピーク世代に近かった、と言うコトになる。
「若年性乳がん」と言っても、年齢だけで素人が判断すべき問題では無い、と言うコトなのだ。
実際、「若年性乳がん」の遺伝子検査は「乳がんリスクを知る」のには、適した検査なのだが、誰も彼もが受ける必要のない検査で、公表されているチェックシートなどで、まずチェックをしてから検討すべき検査だと言うコトも、メディアでは伝えられていないような気がしている。

実は、この様なマスメディアから発信される情報で、ドクター達が困っているコトが最近増えている、と言う話を聞いたことがある。
最近の例で言うと、テレビのワイドショーなどでコメンテーターとして登場するタレントさんが、臨床として治療効果が高いとされる「標準治療(=保険適用の治療)」以外の治療をされた、と話題になると、同様の治療を希望する患者さんが急増する、と言う。
乳がんの場合、臨床どころか治験が始まったばかりの治療法をテレビなどで「手術をしなくても治る」と放送され、自費でその治療を受けたが、効果無く違う病院に駆け込むと言う患者さんがいる、と嘆いていらっしゃった。

A・ジョリーさんの勇気ある告白は、社会的影響は大きいと思うし、それによって多くの人が乳がんに限らず「がん」と言う病気に関心を持ってもらうコトは有意義なコトだと思っている。
だが、マスメディアの情報を鵜呑みにする前に、それらのデータの出典先が信頼できる臨床に基づくモノなのか?日本と海外では状況などが違うコトはないのか?と言う、疑問を持って欲しい。
そして今回予防的切除術を予定あるいは計画をしている病院に「精神腫瘍科」の専門医によるカウンセリングが受けられるのか?と言う情報も一緒に集めて欲しい。
乳房を取り去った後で、後悔するコトがないような準備が、まだまだ出来てはいないのでは?と言う気がしている。



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