先日の「吉野家」取締役の早稲田大学社会人向け講座での「若い女性を薬物中毒にさせる」発言については、収まりつつあるように思っていたのだが、決してそうではなかったようだ。
文春オンラインでは、マーケティングに携わる者として、相当耳が痛いような内容の記事が掲載されている。
文春オンライン:吉野家「生娘シャブ漬け戦略」で露呈した、”マーケティング業界”のお寒い事情
記事を読んで反論ができるのか?と言われれば、反論することができない。
確かに、書店のビジネス本のコーナーで大きな売り場となっているのは「ビジネス成功事例」について書かれた本だからだ。
その中でも「こうやれば売れる」的な本は、とても人気が高い。
ややこしくしているのは、そこに「マーケティング」という言葉が付いているからだ。
拙ブログでは、過去何度も「こうすれば売れるマーケティング」などは無い、という趣旨のことを書いてきたつもりだ。
成功のknow-howやhow-toを否定する気はない。
ただ、それらの本に書かれた「成功例は読者の成功例にはならない」ということなのだ。
同様に「こうすれば成功するマーケティング」という、know-howやhow-toを書かれても、成功することは無い。
何故なら、本に書かれた成功例と自分の仕事内容が、まず一致しないからだ。
業種や内容が違うのに、同じことをして成功するはずがないのだ。
ただ、このような「成功事例に学ぶ」ことは、マーケティングに限ったことではない。
営業のknow-howなども「成功事例に学ぶ」コトで、効率よく成果を出すことを、多くのビジネスパーソンはしているのではないだろうか?
とすれば、記事にあるような「実務称賛」のような傾向は、マーケティングに限ったことではない、ということに気付くと思う。
「マーケティング」について、このような書き方をされる理由は、おそらく「マーケティングってよくわからない」という「わからなさ」からきているのでは?と、考えている。
know-howやhow-toを知ることが、悪いわけではない。
それらの「方法」を自分なりに理解をし、自分のビジネスに合わせて行うことで、know-howやhow0toは有益なモノになると思う。
それではすでに通用しない時代になっている、という認識がされないまま、ここ30年という時間が過ぎてしまったような気がしている。
高度成長期~バブル経済の崩壊までの時間は、「需要>供給」という時代だった。
だからこそ、マーケティングのように「生活者の思考・志向・嗜好」を知る必要もなかったし、「良いものを作れば自然に売れる」という時代でもあった。
その後、広告の世界で盛んに言われるようになったのは「十人十色から一人十色」という、一人の生活者の価値観が多様化しているということだった。
それでも「一人十色」という考えから、「少量多品種」というビジネスモデルが登場し、成功した(ように思えた)。
日本のビジネスでは、「生活者の思考・志向・嗜好」というものを重視せず、既存の企業の成功例に習って繰り返して来た、という部分が大きいのだ。
「マーケティングって何?」という本質的な部分よりも、わかりやすく真似をしやすいknow-howやhow-toを「マーケティング」と考えてきた、ということなのだ。
そしてそれは、日本のビジネス全体についても同じことが言えるのではないだろうか?