日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

いつまで「マッチョな発想」で、いるのだろう?‐吉野家元取締役の発言から考える日本のマーケティング‐

2022-04-20 11:50:19 | マーケティング

一昨日炎上した、早稲田大学の社会人向けのマーケティング講座で、吉野家の元取締役の「生娘を薬物中毒にする」発言。
炎上した内容から、今の社会がとても受け入れられるような発言ではなかった、ということになると思うのだが、意外にもこの発言に対して「大意は間違ってはいない」という方もいらっしゃるようだ。
東洋経済:吉野家常務「生娘シャブ漬け」発言がマズすぎた訳

記事の内容については、読んで判断をしていただきたいのだが、「大意は間違ってはいない」という部分だ。
「例として挙げた内容がセンセーショナルなだけ、問題はない」というようにも、読み取れる。
その後に続く、筆者の体験内容を読んでみると、確かに表現は違うものの言っていることは、ほぼ同じだと考えてよいと思う。
このような内容を読んで、個人的に「日本のビジネスが、グローバル市場で負ける理由」が、何となくわかった気がしたのだ。

私事になるのだが、私がマーケティングという仕事に携わるようになった30年以上前、マーケティングの研修会などに参加すると、私以外は全員男性ということが少なくなかった。
雰囲気も「おい!女がいるぞ」という、奇異な目で見られるということも、多々あった。
それほど、マーケティングという分野では女性が担当することは、珍しいことだったし「女にマーケティングができるわけないだろう」という雰囲気も強かった。

とはいっても、それは30年以上も前の話で、その間に「男女雇用機会均等法」が社会に定着し、女性が様々な分野で活躍できる環境にもなってきた(はずだ)。
にもかかわらず、東洋経済の記事のような感覚を持った方が、今でもしたり顔でマーケティングという仕事に携わっているのだとしたら、日本の企業がグローバル市場で、一人負けのような状況に陥っている現状の理由の一つが、何となくわかった気がしたのだ。
「ダイバーシティ」とか「多様性が認められる社会」などといっていても、その実「マッチョな思考」が幅を利かせ、「自分にとって異質」と感じる人達を排除したい、という潜在意識があるのでは?ということなのだ。
そのため、排除したい相手に対して無神経な言葉を使うことに抵抗がないのでは?

何より絶望的なほど残念だったのは、この吉野家の元取締役がP&Gの企画の担当者であった、という点だ。
マーケティングの世界で、「参考とすべき、マーケティングが強い企業」として、必ずと言ってよいほど名前の挙がる企業の一つが、P&Gだったからだ。
P&Gそのものは、米国に本社を置く世界一の一般消費材のメーカーだ。
そしてそれらの商品の購入者(=顧客)は、女性だ。
だからこそ、P&Gのマーケティングは「女性を中心に考えてきた」といわれている。
「購入者の視点・気持ち」を優先して考え、マーケティングを展開してきたからこそ、マーケティングのお手本企業とまで言われるようになっていたはずなのだ。
その企業に在籍をしていただけではなく、マーケティングを担当していたとなれば、日本における「マーケティング思考」が、このような思考で行われている、といっても過言ではないということになると思う。

ドラッカーは「マーケティングはビジネスの基礎知識」といっていた。
そのビジネスの基礎知識が、30年以上も前のマッチョ思考から変わっていないとすれば、日本企業の時代遅れ思考を取り戻すためには、どれほどの時間を要することになるのだろう?