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ファッション業界も変化

2022-04-14 19:46:07 | ビジネス

Business誌・President on-lineにこれまでビジネス誌では取り上げてこなかった?ファッション業界についての記事があった。
President on-line:半年ごとに新作を大量生産、大量処分・・・ファッション業界は「流行を煽る」という商売を捨てられるか

ファッション業界もビジネスの一つの業界だとは思うのだが、やはり特有の世界を持っているのがファッション業界だということだろう。
私事ではあるが、会社員時代紙媒体の仕事をする上で知っておくべきモノの一つが、「ファッショントレンド」だった。
紙媒体とは言え、その時々の生活者の気分を惹きつけるという意味では、ファッショントレンドは外すことができない要素だったからだ。
そのため、毎シーズンごとに発表されるファッションショーの記事を集めた雑誌を複数冊購入することは、当たり前のことだったし、そのような雑誌を見るコトで、「翌シーズンのトレンド」を知り、そこから様々なアイディアをもらうこともできた。

このようなコトを書くと、ファッションの追っかけのように見られるのだが、あくまでも仕事の一環であったし、そもそもファッション誌に登場するような服をシーズンごとに購入できるような財力は持ち合わせていなかった。
そのため、どこか醒めた感覚で見ていたような気がする。

ファッションの世界ではこのようなトレンドに身を包むような人たちの事を「ファッション・ヴィクティム(=ファッションの奴隷)」と呼んでいる。
最新の流行を売る度に「ファッションの奴隷」を作っていた、というのがこれまでのファッション業界だった、ということになるのかもしれない。
そのサイクルも、ここ20年ほどの間で短くなっていた。
これまで「春・夏」と「秋・冬」という2シーズンであったものが、「早春」「春・初夏」・・・というように、半年どころか3か月~4か月サイクルのようになっていた。
これほどの短期サイクルになってしまうと、逆にデザイナー側から「クリエイティブ面」でクレームが出るようになっていた、と記憶している。
このような短期サイクルになってしまった背景には、生活者の気持ちをつかみきれないクリエイティブ、という一面もあったのでは?と思う反面、それよりも「ファストファッション」の台頭による「ファッションそのものの消費化」が、進んでしまったことが要因なのでは?と考えている。

ご存じの通り「ファストファッション」は、毎シーズン発表されるトレンドを見て、安価な服を短期的に作り、売り切ってしまう。
もちろん在庫として残るものの少なくはないなずだが、そのような場合はたとえオンシーズンであっても、どんどん値引いて売り切ってしまう、というのが一般的だ。
このような状況になると、「ファッションを楽しむ」よりも「ファッションを消費する(ワンシーズンで捨てられる服)」を大量に作るようになってしまう。
そのような環境は、ファッションをクリエイトする側としては、自分自身が浪費されているような感覚に、陥ってしまうようなことだったのではないだろうか?
例えば、バブル期にファッションの話題の中心にいて、「リュクス(=豪華で優美)」という言葉を定着させたクリスチャン・ラクロアなどは、舞台衣装デザイナーになっている。
ラクロアのデザインが生きる場所は、ファッション業界ではなく舞台芸術にあった、ということなのだろう。

ファストファッションが悪いわけではない。
ただ、数多くの「ファッションの奴隷」を作り出すような、ビジネスモデルが今という時代に合わなくなりつつある、ということだと思う。
それは「サスティナブル」とか「エシカル」という言葉が、生活者の暮らしの中に溶け込んでいけばいくほど、短期的に流行を生み出し、煽り続けるということができなくなってきた、ということなのだ。