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鳥越さんの都知事出馬と、がんという病気について

2016-07-15 20:44:14 | 徒然

ジャーナリストの鳥越俊太郎さんが、都知事選に出馬をした。
一部では「がん患者に都知事が任せられるのか?」という、声があるようだ。
確かに、世間一般のがん患者に対するイメージは「余命いくばくもない」という、イメージだろう。
しかし、現実は「余命いくばくもない、死を間近にする病気」ではなくなりつつある。
むしろ、長期的治療を要する病気(=「慢性疾患」)と言われ始めている。

その大きな理由が、「抗がん剤」の進歩だ。
毎年のように、新薬が認可され、多くの患者さんが治療のために使うようになってきている。
今年の初めごろ、高額ながん治療薬として話題になった「オプジーボ」と呼ばれる新薬は、日本の小野薬品が創りだしたこれまでとは全く違う発想の「新薬」で、「免疫療法薬」として注目を浴びた。
(WEBで見かける「免疫療法」は、効果が確認されていない治療法である、ということも知っていただきたい。)
それだけではなく、数年前までは入院を必要とした「抗がん剤治療」も、通院で対応できるようになってきている。
それだけ「がん治療」の環境は、大きく変わってきているのだ。

もう一つは、がんという病気は「がん対策基本法」に基づいて、他の病気よりも様々部分で「手厚い看護」が受けられるようになっている。
「看護」というと、「病院で治療を受ける」という部分だけのように思われるかもしれないが、がんによる離職者(治療開始前に離職する人のうち、早期患者が25%くらい含まれており、離職に伴う経済的損失が指摘されるようになってきている)が多いから、仕事の継続や再就職のサポートの必要性なども、検討されるようになってきている。

にもかからわず、一般的なイメージは上述した通りの「余命いくばくもない、死を間近にした病気」になっている。
社会的イメージと現実とのギャップが、がん患者さんの就労の問題などを引き起こしている、という現実がある。
その意味で、鳥越さんが都知事選に出馬されたというのは、意味があると思う。

既に鳥越さんの場合、最後のがん治療を受けられてから7年ほど経過をしている。
再発のリスクは「0」ではないが、仕事をしたりすることには支障がないくらいの状態のはずだ。
鳥越さんのような状態であれば、「がん患者に仕事ができるのか?」という指摘は、実は的外れな指摘でもあるのだ。
むしろ鳥越さんが、元気に選挙戦を繰り広げることで「がん患者」のイメージが、変わるかもしれない。
そして、鳥越さんの選挙戦を通して「がん」という病気を知ってもらうことが、日本の医療不信を少し変えることになるかもしれない、と思っている。