はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

『勝負』

2006年05月07日 | ほん
「泳いどる魚がつかめだしたのは十三歳のときです。六,七年かかったわけですが、それまでの苦心というものは並大抵じゃなかった。
 なぜ出来るようになったかというと、人間、あまりに苦心すると、あきらめがでてくる。結局ね、つかむというより、愛情をおぼえだしたんです。魚に。
 そうなると今度は、驚かしたりびっくりさすという気がなくなるわけだ。実にこころは平和でね、魚よ来いとじいーッとしとるわけだ。すると不思議にね、それは何年という歳月の関係でできた体質でしょうかね、魚がくるんだな。もう恐れないんだ。
 とにかく、くるんです。
 ところがこいつがまた、どこの場所でもつかめるというものでもないんです。が、だんだんとカンが働いて、この川ではこの場所、この辺ではここということがわかるようになってきた。そうなると面白いもんでね。
 それで私は、魚がつかめる人というのは、魚とともに遊べる人、愛情の持てる人でないとダメだと思った。ナニ、私がとるんじゃない、魚のほうからくるからとれるんですよ。 
 つかめるようになると、とって食う気がしない。あんなに親しそうにやってきたやつですからね。焼いて食うなんて、これァ可哀そうで出来ませんよ。
 面白いもんですな。」

あんた、やっぱり面白いよ、升田さん。
オレのスーパースターだよ。
コメント (2)
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