はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

津和野「養老館」

2006年05月06日 | はなし
「暑いのお… 暑い… 」
「じゃあ、養老館行く?」

ヨウロウカン?   なに、それ?

 島根県鹿足郡津和野町の夏は暑い。深いすり鉢状の盆地で風の通りがわるく湿度がたかい。
 高1の7月のある夏の日の放課後、僕らは8人くらいで教室にいた。試験期になり部活がなく、そして田舎なので帰りの鉄道の時刻まで1時間以上ある。かといってこの暑苦しい教室で勉強する気にもなれずにうだうだしていたら、地元津和野のHが(どうでもいいけど彼は天パーだった)ヨウロウカンに行こうかと言い出した。なんだそれ?とおもっいつつ黙ってついて行った。
 ああ、ここか!
 津和野町に観光に行ったことのあるひとならだれもが訪れているはずの殿町通り。白壁と鯉のいる掘割の通りだ。
 だけどあの建物の中がどうなっているか知らなかった。養老館というらしい。しかし養老館なんて高校生に魅力的とはおもえないのだがなにしにいったのか。
 涼みにいったのである。
 養老館の中は冷房が効いていて、机と椅子があって、無料で座れる場所…。薄暗い部屋で、周囲をみれば本棚がある。つまりそこは図書館だったのである。
 「へえ、図書館だったのか。」
 養老館というのは江戸時代につくられた津和野藩の学校で、学問と武術を学ぶ場所だったらしい。医者であり小説家である森鴎外もここで学んでいるという。
 僕らは涼しいその部屋のなかでひっそりとしていた。図書館なので。中高生時代、本をよむという趣味のまったくなかった僕はやがて退屈してきて「なにか読む本はないか」と探しはじめた。それでみつけたのが升田幸三著『勝負』だった。

 ところでこの絵は記憶で描いたのですが、あとで確認するとずいぶん違っていました。それと、今はここは図書館ではないかもしれません。