はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

荷馬車

2006年05月22日 | はなし
 シゲの家は農家で牛と鶏と馬がいました。犬と猫と鳥も飼っていました。僕の家とは畑をはさんで数十メートルの距離にあったので、牛の「ンモー」、鶏の「コッコッコケッ」という声がいつも聞こえてきました。馬と犬は仲がわるかったようです。
 馬は荷馬車を曳くための馬です。農閑期にシゲのお父さんが馬を曳いて荷物を運ぶ仕事を引き受けるのです。県内では「最後の荷馬車ひき」ということでときどき新聞などに載ったりしていました。
 シゲのお父さんは馬の口をひいてポックリポックリと歩いていきます。僕とシゲはそれについていっしょに歩き、空になった帰りの荷台に乗せてもらったりしました。
 いまとなっては僕のなかでも夢のような遠い風景です。