≪最終一番勝負 第101譜 指始図≫ 2二角まで
指し手 ▲2二竜 △同玉 ▲3一銀 △同玉 ▲3二歩 △同玉
▲4三銀 △同玉 ▲5五桂
[夢をみたのはどっち?(Which Dreamed It ?)]
「ねえ、キティ、いっしょに考えてみようよ、あの夢、だれが見ていたのか。これはだいじな問題なんだから、ねえ、そんなふうに手ばっかりなめてないで――今朝ダイナがちゃんと洗ってくれたじゃない。いいこと、キティ、あたしか赤の王さまか、そのどっちかよね、きっと。赤の王さまはあたしの夢にでてきたわ、もちろん――でも、あたしだって、王さまの夢のなかにいたんだ!夢を見たのは赤の王さまかしらね、キティ。あんた、お妃(きさき)だったんだから、知っているはずよ――ねえ、キティ、どっちに決めるか、手伝ってよ。お手々なんか、あとでいいでしょ!」でも、子猫ったら、にくらしいことに、アリスの質問なんかてんできこえないふりして、もう片っぽの手をぺろぺろなめはじめたんだね。
さて、きみたちは、どっちだと思う?
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
アリスは、この「鏡の国」という夢は、自分が見ていた夢なのか、それとも「赤の王さま」の見ていた夢に自分が入りこんだのか、それを一緒に考えてみようと、子猫キティ(赤の女王)に言っている。
夢を見ていたのは、どっちなんだろう?
<第101譜 一番勝負、振り返り(四)>

≪最終一番勝負 第101譜 指始図≫ 2二角まで
ここは「4一竜」として、次に3二銀(あるいは1五桂)をねらうのが最も勝ちやすい手だろう。
「2二同竜、同玉、4三銀」でも先手勝勢だ(後手に飛車を渡しても先手玉は詰まない)
他に、「3二銀」と打つのもある(この後の変化は前譜にて示している)
ただ、ここは後手玉に “詰み” も生じている。
後手が「7七歩成、同玉」を入れたのでこの詰み筋が生まれたのであった。
▲2二竜 △同玉 ▲3一銀
実戦で我々は、その「▲2二同竜、△同玉、▲3一銀」以下の、後手玉を詰ますという「着地の形」を選んだのだった。
我々には「激指」という心強い味方がおり、その「激指」が詰みを読み切っている(そうでなかったらここで詰ますという選択はできなかっただろう)

≪途中図1 3一銀まで≫
しかしこの “詰み” は、わりとギリギリの詰みなので、慎重な読みが必要だ(駒を渡すことになるので、読み抜けがあったら大事件になってしまうこともある)
であるが、詰みを読み切っていたなら詰ますのも着実な勝ち方といえる。
▲3一同玉 △3二歩

≪途中図2 3二歩まで≫
△3二歩 に、 “4二玉” は3一角、4三玉、5五桂以下、早詰め。
また “4一玉” と逃げるのは、4三香(5一玉には6三桂、4二銀合は同香成、同玉、3一角)から詰む。
したがって、後手は △3二同玉 と取り、以下 ▲4三銀、△同玉、▲5五桂 と進める。

≪最終一番勝負 第100譜 指了図≫ 5五桂まで
さあ、この後手玉を詰めてしまえば、この「一番勝負」、ついに終盤探検隊の勝利が確定する。
とはいえ、後手に「飛銀銀」と駒を渡している。正しく指さないと、逆転されてしまう。
第102譜につづく
[振り返り part.4]
前譜の[振り返り part.3]のつづき。
一番勝負70手目
▲6九歩
一番勝負70手目、△6六歩(図)に、6九金または7九金ならはっきり先手良しだった。
6九金、6七馬、7八歩、3四馬、5一金のように進むと―――(次の変化図)
変化6九金図01
はっきり先手良し。
ところが―――
一番勝負71手目
△6七馬 ▲7八銀
ところが ▲6九歩(図)と指してしまった。「悪手」だった。
一番勝負73手目
△7四香
6九歩が悪手だというのは、「△6七馬、▲7八銀」と進んだときに、「7八同馬」があったからである。
「7八同馬」、同玉、8八銀、同飛、同桂成、同玉、6七歩成と進めると―――(次の変化図)
変化7八同銀図01
どうやら後手良し。
一番勝負74手目
▲7五歩 △同香 ▲7七歩 △4四歩 ▲7九金 △3四馬
しかし後手も優位をつかみ切れない。「7八同馬」を見送り、△7四香(図)を選ぶ。
以下、▲7五歩、△同香、▲7七歩 と進んだ(ここは単に7七歩もあるところで、このあたりは変化が複雑)
▲7七歩と打ったとき、実戦中は(特に根拠もなく)これで先手良しかとも感じていた。
しかし実際は「先手やや苦しめ」といった形勢だった。6八桂成(同歩、7六歩)なら後手良しだったという “戦後研究” の結果もある。
後手は4四歩とした。以下▲7九金に△3四馬と、自陣の安定を図る。
一番勝負80手目
▲7六歩 △4三馬
△3四馬(図)と引いて、次に6七歩成をねらいとする。
それを受けて6八歩があるが、それは4三馬、9七玉、9六歩、同玉、9八歩、8五歩、9九歩成という “入玉をめぐる決戦” になる。「形勢不明」だが、先手をもってあまり自信のない戦いである。
やはりこのあたりは「やや先手苦しい形勢」と感じる。4筋のキズを消され、先手は “歩切れ” になっている。
しかし、ここは歩切れを解消する9五歩なら「互角」だったかもしれない。以下6七歩成、同銀、同馬、7八金打、3四馬、5四歩、4二銀、6一竜‥‥
けれども、これは実戦中には見えていなかった順である(6一竜の効果がわかりづらい)
実戦は ▲7六歩 を選んだ。
後手は△4三馬。
この手では代えて6七歩成で後手良しだったというのが、やはりこれも “戦後研究” で明らかになった。後手も最善手を逃している。
一番勝負82手目
▲6八桂 △7六香 ▲同桂 △7五歩 ▲7七金
そこで8八玉なら「互角」だった可能性がある。つまりこのあたり、相当難解な形勢。
先手(終盤探検隊)も後手(≪ぬし≫)も、お互いに最善手を逃してきている。つまり「泥沼の闘い」なのである。
実戦は▲6八桂と受けた。
一番勝負87手目
△7六歩 ▲6六金 △9六歩 ▲5九香 △7四桂
“戦後” の研究でやっとわかったことだが、ここは先手苦しい。
▲7七金に代えて、6八歩や8八玉もあるが、先手有望の道は見つからなかった。
一番勝負92手目
▲5三香成 △同馬 ▲7六金 △7五香 ▲5四歩 △同馬 ▲6五金打
一番勝負99手目
△6五同馬 ▲同金 △7六金 ▲8八玉 △7七歩 ▲7五金
ところが▲6五金打(図)とした、この図になると、どうやら「先手良し」になっている。
つまり、87手目(▲7七金)から、99手目(▲6五金打)のどこかで、形勢が入れかわっているのである。
一番勝負105手目
ここまでくると、はっきり「先手良し」。
そして12手進んで(以下、棋譜は省略)―――
一番勝負117手目
こうなった。4二角と打ったこの図では、「先手勝ち」がほぼ確定している。
勝負を分けた87手目~99手目の内容については、またあらためてその研究結果を明らかにする。
一番勝負140手目
そしてこの図(今回の第101譜≪指始図≫)になって、2二同竜以下、後手玉を詰ましに行った。
これにて、この「最終一番勝負、棋譜振り返り」は終了となる。
指し手 ▲2二竜 △同玉 ▲3一銀 △同玉 ▲3二歩 △同玉
▲4三銀 △同玉 ▲5五桂
[夢をみたのはどっち?(Which Dreamed It ?)]
「ねえ、キティ、いっしょに考えてみようよ、あの夢、だれが見ていたのか。これはだいじな問題なんだから、ねえ、そんなふうに手ばっかりなめてないで――今朝ダイナがちゃんと洗ってくれたじゃない。いいこと、キティ、あたしか赤の王さまか、そのどっちかよね、きっと。赤の王さまはあたしの夢にでてきたわ、もちろん――でも、あたしだって、王さまの夢のなかにいたんだ!夢を見たのは赤の王さまかしらね、キティ。あんた、お妃(きさき)だったんだから、知っているはずよ――ねえ、キティ、どっちに決めるか、手伝ってよ。お手々なんか、あとでいいでしょ!」でも、子猫ったら、にくらしいことに、アリスの質問なんかてんできこえないふりして、もう片っぽの手をぺろぺろなめはじめたんだね。
さて、きみたちは、どっちだと思う?
(『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)
アリスは、この「鏡の国」という夢は、自分が見ていた夢なのか、それとも「赤の王さま」の見ていた夢に自分が入りこんだのか、それを一緒に考えてみようと、子猫キティ(赤の女王)に言っている。
夢を見ていたのは、どっちなんだろう?
<第101譜 一番勝負、振り返り(四)>

≪最終一番勝負 第101譜 指始図≫ 2二角まで
ここは「4一竜」として、次に3二銀(あるいは1五桂)をねらうのが最も勝ちやすい手だろう。
「2二同竜、同玉、4三銀」でも先手勝勢だ(後手に飛車を渡しても先手玉は詰まない)
他に、「3二銀」と打つのもある(この後の変化は前譜にて示している)
ただ、ここは後手玉に “詰み” も生じている。
後手が「7七歩成、同玉」を入れたのでこの詰み筋が生まれたのであった。
▲2二竜 △同玉 ▲3一銀
実戦で我々は、その「▲2二同竜、△同玉、▲3一銀」以下の、後手玉を詰ますという「着地の形」を選んだのだった。
我々には「激指」という心強い味方がおり、その「激指」が詰みを読み切っている(そうでなかったらここで詰ますという選択はできなかっただろう)

≪途中図1 3一銀まで≫
しかしこの “詰み” は、わりとギリギリの詰みなので、慎重な読みが必要だ(駒を渡すことになるので、読み抜けがあったら大事件になってしまうこともある)
であるが、詰みを読み切っていたなら詰ますのも着実な勝ち方といえる。
▲3一同玉 △3二歩

≪途中図2 3二歩まで≫
△3二歩 に、 “4二玉” は3一角、4三玉、5五桂以下、早詰め。
また “4一玉” と逃げるのは、4三香(5一玉には6三桂、4二銀合は同香成、同玉、3一角)から詰む。
したがって、後手は △3二同玉 と取り、以下 ▲4三銀、△同玉、▲5五桂 と進める。

≪最終一番勝負 第100譜 指了図≫ 5五桂まで
さあ、この後手玉を詰めてしまえば、この「一番勝負」、ついに終盤探検隊の勝利が確定する。
とはいえ、後手に「飛銀銀」と駒を渡している。正しく指さないと、逆転されてしまう。
第102譜につづく
[振り返り part.4]
前譜の[振り返り part.3]のつづき。

▲6九歩
一番勝負70手目、△6六歩(図)に、6九金または7九金ならはっきり先手良しだった。
6九金、6七馬、7八歩、3四馬、5一金のように進むと―――(次の変化図)

はっきり先手良し。
ところが―――

△6七馬 ▲7八銀
ところが ▲6九歩(図)と指してしまった。「悪手」だった。

△7四香
6九歩が悪手だというのは、「△6七馬、▲7八銀」と進んだときに、「7八同馬」があったからである。
「7八同馬」、同玉、8八銀、同飛、同桂成、同玉、6七歩成と進めると―――(次の変化図)

どうやら後手良し。

▲7五歩 △同香 ▲7七歩 △4四歩 ▲7九金 △3四馬
しかし後手も優位をつかみ切れない。「7八同馬」を見送り、△7四香(図)を選ぶ。
以下、▲7五歩、△同香、▲7七歩 と進んだ(ここは単に7七歩もあるところで、このあたりは変化が複雑)
▲7七歩と打ったとき、実戦中は(特に根拠もなく)これで先手良しかとも感じていた。
しかし実際は「先手やや苦しめ」といった形勢だった。6八桂成(同歩、7六歩)なら後手良しだったという “戦後研究” の結果もある。
後手は4四歩とした。以下▲7九金に△3四馬と、自陣の安定を図る。

▲7六歩 △4三馬
△3四馬(図)と引いて、次に6七歩成をねらいとする。
それを受けて6八歩があるが、それは4三馬、9七玉、9六歩、同玉、9八歩、8五歩、9九歩成という “入玉をめぐる決戦” になる。「形勢不明」だが、先手をもってあまり自信のない戦いである。
やはりこのあたりは「やや先手苦しい形勢」と感じる。4筋のキズを消され、先手は “歩切れ” になっている。
しかし、ここは歩切れを解消する9五歩なら「互角」だったかもしれない。以下6七歩成、同銀、同馬、7八金打、3四馬、5四歩、4二銀、6一竜‥‥
けれども、これは実戦中には見えていなかった順である(6一竜の効果がわかりづらい)
実戦は ▲7六歩 を選んだ。
後手は△4三馬。
この手では代えて6七歩成で後手良しだったというのが、やはりこれも “戦後研究” で明らかになった。後手も最善手を逃している。

▲6八桂 △7六香 ▲同桂 △7五歩 ▲7七金
そこで8八玉なら「互角」だった可能性がある。つまりこのあたり、相当難解な形勢。
先手(終盤探検隊)も後手(≪ぬし≫)も、お互いに最善手を逃してきている。つまり「泥沼の闘い」なのである。
実戦は▲6八桂と受けた。

△7六歩 ▲6六金 △9六歩 ▲5九香 △7四桂
“戦後” の研究でやっとわかったことだが、ここは先手苦しい。
▲7七金に代えて、6八歩や8八玉もあるが、先手有望の道は見つからなかった。

▲5三香成 △同馬 ▲7六金 △7五香 ▲5四歩 △同馬 ▲6五金打

△6五同馬 ▲同金 △7六金 ▲8八玉 △7七歩 ▲7五金
ところが▲6五金打(図)とした、この図になると、どうやら「先手良し」になっている。
つまり、87手目(▲7七金)から、99手目(▲6五金打)のどこかで、形勢が入れかわっているのである。

ここまでくると、はっきり「先手良し」。
そして12手進んで(以下、棋譜は省略)―――

こうなった。4二角と打ったこの図では、「先手勝ち」がほぼ確定している。
勝負を分けた87手目~99手目の内容については、またあらためてその研究結果を明らかにする。

そしてこの図(今回の第101譜≪指始図≫)になって、2二同竜以下、後手玉を詰ましに行った。
これにて、この「最終一番勝負、棋譜振り返り」は終了となる。