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はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part202 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第101譜

2021年01月26日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第101譜 指始図≫ 2二角まで

指し手 ▲2二竜 △同玉 ▲3一銀 △同玉 ▲3二歩 △同玉
    ▲4三銀 △同玉 ▲5五桂
 


   [夢をみたのはどっち?(Which Dreamed It ?)]

「ねえ、キティ、いっしょに考えてみようよ、あの夢、だれが見ていたのか。これはだいじな問題なんだから、ねえ、そんなふうに手ばっかりなめてないで――今朝ダイナがちゃんと洗ってくれたじゃない。いいこと、キティ、あたしか赤の王さまか、そのどっちかよね、きっと。赤の王さまはあたしの夢にでてきたわ、もちろん――でも、あたしだって、王さまの夢のなかにいたんだ!夢を見たのは赤の王さまかしらね、キティ。あんた、お妃(きさき)だったんだから、知っているはずよ――ねえ、キティ、どっちに決めるか、手伝ってよ。お手々なんか、あとでいいでしょ!」でも、子猫ったら、にくらしいことに、アリスの質問なんかてんできこえないふりして、もう片っぽの手をぺろぺろなめはじめたんだね。
 さて、きみたちは、どっちだと思う?

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 アリスは、この「鏡の国」という夢は、自分が見ていた夢なのか、それとも「赤の王さま」の見ていた夢に自分が入りこんだのか、それを一緒に考えてみようと、子猫キティ(赤の女王)に言っている。
 夢を見ていたのは、どっちなんだろう?



<第101譜 一番勝負、振り返り(四)>


≪最終一番勝負 第101譜 指始図≫ 2二角まで

 ここは「4一竜」として、次に3二銀(あるいは1五桂)をねらうのが最も勝ちやすい手だろう。
 「2二同竜、同玉、4三銀」でも先手勝勢だ(後手に飛車を渡しても先手玉は詰まない)
 他に、「3二銀」と打つのもある(この後の変化は前譜にて示している)


 ただ、ここは後手玉に “詰み” も生じている。
 後手が「7七歩成、同玉」を入れたのでこの詰み筋が生まれたのであった。

 ▲2二竜 △同玉 ▲3一銀

 実戦で我々は、その「▲2二同竜、△同玉、▲3一銀」以下の、後手玉を詰ますという「着地の形」を選んだのだった。
 我々には「激指」という心強い味方がおり、その「激指」が詰みを読み切っている(そうでなかったらここで詰ますという選択はできなかっただろう)



≪途中図1 3一銀まで≫

 しかしこの “詰み” は、わりとギリギリの詰みなので、慎重な読みが必要だ(駒を渡すことになるので、読み抜けがあったら大事件になってしまうこともある)
 であるが、詰みを読み切っていたなら詰ますのも着実な勝ち方といえる。

 ▲3一同玉 △3二歩



≪途中図2 3二歩まで≫

 △3二歩 に、 “4二玉” は3一角、4三玉、5五桂以下、早詰め。
 また “4一玉” と逃げるのは、4三香(5一玉には6三桂、4二銀合は同香成、同玉、3一角)から詰む。

 したがって、後手は △3二同玉 と取り、以下 ▲4三銀、△同玉、▲5五桂 と進める。



≪最終一番勝負 第100譜 指了図≫ 5五桂まで

 さあ、この後手玉を詰めてしまえば、この「一番勝負」、ついに終盤探検隊の勝利が確定する。
 とはいえ、後手に「飛銀銀」と駒を渡している。正しく指さないと、逆転されてしまう。


第102譜につづく





[振り返り part.4]

 前譜の[振り返り part.3]のつづき。

一番勝負70手目
▲6九歩

 一番勝負70手目、△6六歩(図)に、6九金または7九金ならはっきり先手良しだった。
 6九金、6七馬、7八歩、3四馬、5一金のように進むと―――(次の変化図)

変化6九金図01
 はっきり先手良し。

 ところが―――

一番勝負71手目
△6七馬 ▲7八銀

 ところが ▲6九歩(図)と指してしまった。「悪手」だった。

一番勝負73手目
△7四香

 6九歩が悪手だというのは、「△6七馬、▲7八銀」と進んだときに、「7八同馬」があったからである。
 「7八同馬」、同玉、8八銀、同飛、同桂成、同玉、6七歩成と進めると―――(次の変化図)

変化7八同銀図01
 どうやら後手良し。

一番勝負74手目
▲7五歩 △同香 ▲7七歩 △4四歩 ▲7九金 △3四馬

 しかし後手も優位をつかみ切れない。「7八同馬」を見送り、△7四香(図)を選ぶ。
 以下、▲7五歩、△同香、▲7七歩 と進んだ(ここは単に7七歩もあるところで、このあたりは変化が複雑)

 ▲7七歩と打ったとき、実戦中は(特に根拠もなく)これで先手良しかとも感じていた。
 しかし実際は「先手やや苦しめ」といった形勢だった。6八桂成(同歩、7六歩)なら後手良しだったという “戦後研究” の結果もある。

 後手は4四歩とした。以下▲7九金に△3四馬と、自陣の安定を図る。

一番勝負80手目
▲7六歩 △4三馬

 △3四馬(図)と引いて、次に6七歩成をねらいとする。
 それを受けて6八歩があるが、それは4三馬、9七玉、9六歩、同玉、9八歩、8五歩、9九歩成という “入玉をめぐる決戦” になる。「形勢不明」だが、先手をもってあまり自信のない戦いである。

 やはりこのあたりは「やや先手苦しい形勢」と感じる。4筋のキズを消され、先手は “歩切れ” になっている。
 しかし、ここは歩切れを解消する9五歩なら「互角」だったかもしれない。以下6七歩成、同銀、同馬、7八金打、3四馬、5四歩、4二銀、6一竜‥‥
 けれども、これは実戦中には見えていなかった順である(6一竜の効果がわかりづらい)

 実戦は ▲7六歩 を選んだ。

 後手は△4三馬。
 この手では代えて6七歩成で後手良しだったというのが、やはりこれも “戦後研究” で明らかになった。後手も最善手を逃している。

一番勝負82手目
▲6八桂 △7六香 ▲同桂 △7五歩 ▲7七金

 そこで8八玉なら「互角」だった可能性がある。つまりこのあたり、相当難解な形勢。
 先手(終盤探検隊)も後手(≪ぬし≫)も、お互いに最善手を逃してきている。つまり「泥沼の闘い」なのである。
 
 実戦は▲6八桂と受けた。

一番勝負87手目
△7六歩 ▲6六金 △9六歩 ▲5九香 △7四桂

 “戦後” の研究でやっとわかったことだが、ここは先手苦しい。
 ▲7七金に代えて、6八歩や8八玉もあるが、先手有望の道は見つからなかった。

一番勝負92手目
▲5三香成 △同馬 ▲7六金 △7五香 ▲5四歩 △同馬 ▲6五金打

一番勝負99手目
△6五同馬 ▲同金 △7六金 ▲8八玉 △7七歩 ▲7五金

 ところが▲6五金打(図)とした、この図になると、どうやら「先手良し」になっている。
 つまり、87手目(▲7七金)から、99手目(▲6五金打)のどこかで、形勢が入れかわっているのである。

一番勝負105手目
 ここまでくると、はっきり「先手良し」。
 そして12手進んで(以下、棋譜は省略)―――

一番勝負117手目
 こうなった。4二角と打ったこの図では、「先手勝ち」がほぼ確定している。

 勝負を分けた87手目~99手目の内容については、またあらためてその研究結果を明らかにする。

一番勝負140手目
 そしてこの図(今回の第101譜≪指始図≫)になって、2二同竜以下、後手玉を詰ましに行った。


 これにて、この「最終一番勝負、棋譜振り返り」は終了となる。
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終盤探検隊 part201 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第100譜

2021年01月22日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第100譜 指始図≫ 3一竜まで 

 △指し手  △7七歩成  ▲同玉  △2二角


   [ダイナはいったい何になっていたんだろう?]

「スノードロップのいい子ちゃん」アリスは肩ごしに白の子猫の方を見やった。こっちは相変わらずおとなしく母猫におめかししてもらっているところだ。「ダイナったらいつになったら白の女王さまのお化粧がすむのかしらん。それであんた、あんなにだらしない恰好(かっこう)で夢の中にでてきたのね。ダイナ!あんた、いまこすってあげてるのが白の女王さまだってこと、わかってるのかな?あんたってもう、ほんとに礼儀知らずなんだから!
「だけど、ダイナはいったい何になっていたんだろう?」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)




<第100譜 一番勝負、振り返り(三)>


≪最終一番勝負 第100譜 指始図≫ 3一竜まで

 ▲3一竜(図)で、後手玉に詰めろが掛かっている。

 実戦はここから △7七歩成、▲同玉、△2二角 と進んだが、ここで「9七歩成」の変化にはどう対応するのが良いだろうか?

変化9七歩成図01
 「9七歩成」には、同玉、2二角、同竜、同玉、4三銀(図)と応じて、先手勝勢。
 先手玉に詰みはない。3一香と受ければ、4一角とすれば、もう後手に受ける手段はない。



≪最終一番勝負 第100譜 指了図≫ 2二角まで

 ▲3一竜 に、後手の ≪ぬし≫ は、△7七歩成 とし、以下 ▲同玉、△2二角(図)と進んだ。

 いよいよ「フィニッシュ」だ。さあ、どうやって「着地」を決めるか。

 ここは4一竜で “安全勝ち” するのがベストであろう。
 また3二銀とするのもある(以下3一角、同銀不成、3二飛、2二銀打、同飛、同銀成、同玉、4二飛、3二銀、4一銀、3一銀、5四角で、後手受けなし)

 ここは実は2二同竜以下、後手玉に “詰み” がある。
 我々はそれが見えたので、「詰ましに行った」のであった。

 その “詰み手順” を考えてみてほしい。むずかしくはないが少々長い詰手順である。
 


第101譜につづく




[振り返り part.3]

 前譜の[振り返り part.2]のつづき。

一番勝負47手目
△3一銀 ▲3三歩成 △同歩 ▲7七歩 △同歩成 ▲同香
△7六歩 ▲2五飛

 一番勝負47手目、「千日手ループ」を打開して▲7九香(図)と打ったところ。
 この手は3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛の攻めをねらっている。5二角成で角を切った後に、後手7九角の手を消しているのが「7九香」である。
 これには、△3一銀が最強の応手になる。

一番勝負55手目
△3二銀 ▲5二角成 △同歩 ▲5五飛 △4一桂

 以下手が進んで、▲2五飛(図)と打った。この攻めが予定だったが、代えて3四歩という手もあり、後でしっかり調べるとその手のほうが勝ちやすい。
 しかし「2五飛~5五飛~5九飛」の展開は、気持ちの良い手順で、実戦ではこの手順を指したくなる。たしかにこの順でも厳密には先手良しのようだが、まだ形勢は「互角」に近い。

一番勝負60手目
▲7六香 △同桂 ▲5九飛 △7七角

 4一桂(図)が、我々が少し軽視していた手(3一桂を予想していた)
 指されてみるとこの手が最善の応手で、形勢はまだ難しい(厳密には先手良し)

一番勝負64手目
▲8九飛 △6八角成 ▲4四歩 △9五歩 ▲8七玉 △6六歩

 64手目△7七角では、代えて9五歩という手があり、それに対しては「7八金、7七歩、5三飛成、同歩、5一竜」と指せば先手良しだが、実際にこの手順を発見できていただろうか。

 実戦では、後手は、△7七角(図)と指してきた。
 以下、▲8九飛 △6八角成と進み、そこで▲4四歩(好手)と攻め味をつくる。同歩なら4二歩、同銀、4三歩で、先手優勢になる。

一番勝負70手目
▲6九歩

 問題はここ。
 ここは、6九金、または7九金なら、わかりやすく「先手良し」を拡大できていた。
 変化の一例は、6九金、6七馬、7八歩、3四馬、5一金(次の参考図)

参考図01
 7七歩、4一金、1四歩、2六桂(参考図)

参考図02
 以下5六馬なら、3一銀、1三玉、2五金で先手勝ち。
 3五馬には、3一銀、1三玉、1五金という決め手がある(1四同歩に、8四馬)

 このように、6九金なら先手がリードできていた。

一番勝負71手目
 ところが、▲6九歩と指してしまう。
 実戦中は自覚がなかったのだが、これで形勢は逆転し、「後手良し」になっていたのである。
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終盤探検隊 part200 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第99譜

2021年01月18日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第99譜 指始図≫ 7七歩まで

指し手 ▲7七同金 △7六歩 ▲6七金 △7七歩成 ▲同金 △7六歩
     ▲6七金 △9六歩 ▲3一竜



   [返事はゴロゴロ]

 子猫ってほんとにこまったもので(アリスもいつかそういっていたけれど)、こっちが何いったって返事はきまってゴロゴロなんだね。「はいっていうときだけゴロゴロで、いいえのときはニャオっていうとか、なにかそういったきまりさえあれば、お話ができるのに!いつだっておんなじ返事しかしないひとと、どうやってお話しできる?」
 子猫に返事はこのときもゴロゴロばかり。はいなのか、いいえなのかも見当がつかなかった。
 そこでアリスはテーブルの上のチェスの駒(こま)の中から赤の女王を見つけだしてね、それから暖炉(だんろ)のまえの敷物に膝(ひざ)をついて、子猫と女王さまを向いあわせにおくと、「さ、キティ!」と、どうだ、まいったかとばかり手をたたき、「これに化けたって正直におっしゃい!」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 猫の「ゴロゴロ」は、嬉しくてしかたのないときに、“全身から発する声” である。




<第99譜 一番勝負、振り返り(二)>


≪最終一番勝負 第99譜 指始図≫ 7七歩まで

 △7七歩(図)と後手の ≪ぬし≫ は攻め合いの手を選んできた。
 代えて、2二角と受けても1五桂でどうしようもないし、6四角と打つのも、3二歩、2二銀、3一銀で、"受けなし" になる。
 だから、△7七歩 なのだが、後手の持駒は角だけなので対処はたやすい。手を抜いて3一竜でも、先手玉は詰まないので先手勝てる。

 しかし実戦では、我々終盤探検隊は、手堅く、▲7七同金、△7六歩、▲6七金 と指した。
 5五角なら、7九玉とし、7七歩成、3一竜で―――(次の変化図)

変化5五角図01 
 先手勝ちになる(7八歩は打ち歩詰めの禁じ手で打てない)



≪途中図 6七金まで≫

 つまりもう後手は “手がない” のである。投了してもよいくらいの形勢の差がもう開いている。
 だが、≪ぬし≫ は指し続けた。

 △7七歩成、▲同金、△7六歩、▲6七金、△9六歩 と進んだ。

 そこで、▲3一竜 と銀を取った。



≪最終一番勝負 第99譜 指了図≫ 3一竜まで


第100譜につづく




[振り返り part.2]

 前譜の[振り返り part.1]のつづき。

一番勝負20手目
▲9一龍 △5九金

 19手目▲3四歩に、20手目△4二銀左(図)と引いたところ。この手が、先手の我々にとっては “意表を突かれた手” で、あわてた。しかしこの「最終一番勝負」は、時間無制限という特殊な闘いなので、“時間との闘い” にはならなかった。はやく指したいという心をいさめ、もう一度方針を確認するという、“自分との闘い” であった。
 後で調べると、後手の△4二銀左としたこの図ではいろいろと先手の勝ち筋があった。多すぎて迷ってしまうほどにいろいろと。
 たとえば「5八金、同と、9一竜」など。実戦中はこの手順には気づいていなかったが。

 実戦で我々終盤探検隊は、▲9一龍 以下の手順を選んだ。これも「いろいろある先手勝ち筋」のうちの一つであった。つまり、ここでのわれらの選択に問題はなかった。

一番勝負22手目
▲6六角 △5五銀引 ▲9三角成

 ここでも先手にいろいろな「勝ち筋」があったことが、“戦後研究” によってわかっている。
 「2五香」、「2五飛」、「4一角、3二歩、3三香」など。

 しかし我々(終盤探検隊)はもう方針を決めていたので、ここはそれほど深くは考えなかった。

一番勝負25手目
△9四歩 ▲9六歩 △8四金 ▲8六歩

 △9四歩が後手の好手だが、想定内。これには▲9六歩とし、△8四金(これは先手玉の入玉を阻止するために必然の一手)に、▲8六歩―――こう指すのが我々の予定であった。

一番勝負29手目
△5六と ▲7三歩成

 8六歩(図)は、先手玉の可動範囲(8七玉~9七玉)を広げた手。
 この図の形勢は、最新ソフトでも「後手寄り」の評価値(-400くらい)が出てくるが、厳密に調べると先手良しのようだ(我々がこの変化を選んだのは “勝負の勘” というしかないが、それは間違っていなかったようだ)

 後手は△5六と。
 問題はここであった。ここで 8七玉なら先手は「勝ち筋」に乗っていた のである。

 ところが、▲7三歩成 と指してしまう。「悪手」だった。
 (なぜ7三歩成を選んでしまったのか、この当時の心理状態を思い出せない)

一番勝負31手目
△7三同銀

 ▲7三歩成のこの瞬間、形勢は逆転し、後手に「有利になる筋」が生まれている。6六とまたは7五銀なら後手良しである。そう指されていたら、おそらく負けていただろう。
 ところが、後手も “悪手のお付き合い” をしてしまう。

一番勝負32手目
▲4一角 △3二歩 ▲6七歩 △6四桂 ▲8七玉 △6七と

  △7三同銀(図)が後手のお付き合いの「悪手」で、形勢は「先手やや良し」に戻った。
 つまり我々は “命拾い” したのだった。

 ▲6七歩 が好手。

一番勝負38手目
▲9七玉 △7七と ▲7八歩

 ここでは先手にいくつもの「勝ち筋」が生じている(たとえば3三香)
 しかし先手が選べる手は一つ。我々は▲9七玉を選んだ。

一番勝負41手目
△7六歩 ▲7七歩 △同歩成 ▲7八歩 △7六歩 ▲7九香

 「7八歩、7六歩、7七歩、同歩成、7八歩、7六歩」と、「千日手ルート」に入った。
 けれども我々は千日手にするつもりは全くなかった。「どの手を選んで戦うか」を考慮していた。先手有利になる順はあると感じていたが、どれも「わずかに先手良し」という程度だったので、慎重にどの手を選ぶかを模索した。

一番勝負47手目
 選んだのは、「7八歩、7六歩」を入れた状態での、▲7九香(図)
 この手は相棒の「激指」が発見してくれた手だった。我々はいいチームだ。


 [振り返り part.3]につづく。
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終盤探検隊 part199 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第98譜

2021年01月15日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第98譜 指始図≫ 3一金まで

指し手  ▲3一同馬  △同銀  ▲4一竜  △7七歩


   [すてきな夢だった]

「赤の女王さまのくせして、そんなにゴロゴロいうんじゃありません」アリスは目をこすりながら、うやうやしく、でもちょっときつい口ぶりで子猫に話しかけた。「あんたのせいで目がさめちゃった、せっかくすてきな夢だったのに!あんただって、ずうっといっしょだったのよ、鏡の国でさ。ね、わかってる?」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 アリスの「鏡の国」のたのしい冒険は終わった。
 アリスは、黒の子猫キティ(=赤の女王)に話しかけている。



<第98譜 一番勝負、振り返り(一)>

 先手の勝利はもう、間違いない。


≪最終一番勝負 第98譜 指始図≫ 3一金まで

 △3一金(図)に、「4三馬」(次に3二歩をねらう)でも、「4一馬、同金、同竜」でも、先手が勝てる。

 実戦は、▲3一同馬。これで問題ない。
 
 △同銀、▲4一竜、△7七歩 と進む(次の図)



≪最終一番勝負 第98譜 指了図≫ 7七歩まで

 もう、“大差” の形勢である。


第99譜につづく




 先手の「勝利」はもう確かなので、あとは棋譜を最後まで見るだけ。

 以下は、この「亜空間最終一番勝負」を初手からざっと「振り返り」をおこなうことにする(何回かに分けて記していく)

[振り返り part.1]

一番勝負初形図(亜空間入口図)
▲3四玉 △5二金

 この図が、「亜空間の入口図」である。初手は3四玉しかない。
 ▲3四玉 に、後手の2手目は、最新ソフト的にも「4二金」が “第一感” の手のようである。ところがこの手は、3一銀で先手良しになることを我々は発見している。3一銀、同銀、同竜、3三銀に、4五玉と逃げる手が好手で、これで先手勝ちになるのだ(4五玉には5三金が心配だが、それは2一竜、同玉、6一飛、3一歩、3二角以下後手玉詰み)

 ▲3四玉 には、△5二金 が最善手となる。

一番勝負02手目
▲3一銀 △5一歩 ▲2二銀成  △同玉

 △5二金 にも、▲3一銀 と打つ。そこで△5一歩。この受けがあるのが5二金の意味。

一番勝負06手目
▲4二銀

 ここで先手の勝つ手が見つからず、これで「後手勝ち」かとも思ったが、苦労の末、▲4二銀 を発見した。“奇跡の発見” であった。
 我々終盤探検隊はこのとき、「激指13」を使っていたが、その手はまったく示されていなかった。我々の「あきらめない気持ち」がこの手を発見したといえる。この手が見つからなかったら、この戦いはここで終わっていた。

一番勝負07手目
△3三銀打 ▲4五玉 △4二銀 ▲5四玉 △5三銀 ▲6五玉
△6四銀打 ▲7六玉 △5八金

 ▲4二銀 には、3三銀打 が最善の応手。
 (4二同金は3一角以下先手良しになる。その解説はpart.55で行っている)
 以下、上に書いてある手順で進み、次の図に至る。

一番勝負16手目(夏への扉図)
▲3三歩 △同銀 ▲3四歩

 この図を「夏への扉図」と名付け、徹底的に研究した。その結果、ここは「先手良し」で、いくつかの勝ち筋があることが今ではわかっている。
 「3三歩、同銀、3四歩」で後手陣を弱体化させる。

一番勝負19手目
△4二銀左

 我々がこの「最終一番勝負」の前に研究していたのは、3四同銀以下の変化だった。それが本筋と判断し、そう進むと思っていた(その変化は後で触れる)
 しかし、それを、後手の ≪ぬし≫ ははずしてきた。△4二銀左と、銀を引いたのだ。

一番勝負20手目(4二銀左図)
 この手はまったくの予想外だったので、我々は意表を突かれ、動揺してしまった。この手に対する準備はまったくしていなかったからである。

 この後の進行は次譜の「振り返り part.2」で。



[3四同銀の変化の研究(新研究を含む)]

変化3四同銀図00(3四同銀図)
 この変化図は、▲3四歩に、「同銀」の図。

 この「3四同銀」に対しては、〔あ〕3三歩 が予定だった。以下3一歩に、4一飛と打つ(次の図)

変化3四同銀図01
 この攻め手順を「赤鬼作戦」と呼んで準備していた。以下3三玉、3一飛成、4四玉に、6五歩で先手が勝てそう―――というのが、我々の事前研究だった。

変化3四同銀図02
 「3四同銀図」では、他にも先手が良くなる順はある。
 「一番勝負」の準備でも実戦中でも気づかなかったのが、「3四同銀図」から〔い〕8二飛(図)と打つ手である。これは最新ソフトの指摘で見つかった手。
 ほおっておくと(つまり5九金なら)5一竜があるので、6二歩と受けるが、そこで8三飛成として“入玉”をめざすのが狙いとなる。8筋に二重に飛車の利きがあることが大事なところで、これで先手玉の "入玉" はできそうだ。ただし、“入玉作戦” なので、勝ちがはっきりするまで手数はかかる。

変化3四同銀図03
 さらにこれも“戦後”の最新ソフトを使った研究でわかったのだが、〔う〕4一角(図)からも先手の勝ち筋が見つかった。
 「4一角は、3一歩で勝てない」というのが実戦での我々の判断だった。以下3三歩は4二金で後手良しだったので。しかしそれが覆された。
 3一歩 に、「3二歩」があるとわかったのだ(次の図)

変化3四同銀図04 
 ここで、後手〈a〉3二同歩、〈b〉5九金、〈c〉4二金 が考えられる応手。
 〈a〉3二同歩 は、5二角成、同歩、2一竜(!)、同玉、3三桂(次の図)

変化3四同銀図05
 これで後手玉は詰んでいる。3三同歩に、5一飛、3一合、1一金以下。
 この変化がわかっていれば、「3二歩」が可能性のある手だとすぐに検討したと思うが、戦闘の当時は見えていなかった。

変化3四同銀図06
 「3二歩」を放置して〈b〉5九金は、3一歩成(図)となり、以下8四桂、7七玉、6五桂、7八玉、6七と(次の図)

変化3四同銀図07
 6七と(図)を同玉は7七金以下詰んでしまうので、8九玉と逃げる。
 以下3三玉、1一角、2四玉、3六歩、2五金、2六金、1四歩、2二角成(次の図)

変化3四同銀図08
 2五金(同玉は2六飛まで)、同銀、2三角成までの、“詰めろ”。
 先手勝勢である。

変化3四同銀図09
 〈c〉4二金(図)の変化は、3一歩成、同玉 には、5二飛がある(次の図)

変化3四同銀図10
 これで、先手勝ち。
 以下3二歩に、5一飛成で、後手 "受けなし" である(2二玉は3二角成、同金、1一角、同玉、2一竜まで詰み)

変化3四同銀図11
〈c〉4二金(図)、3一歩成に、(同玉 に代えて)4一金(図)の変化。角を取った。
 4一同と では、6七角、8六玉(7七玉)、1四歩で、この変化は後手良し。
 ここは 2一と が正解手で、同玉なら3三桂、3二玉、4一桂成で、これは先手良し。
 よって2一とに、後手3三玉と逃げ、1一角、2四玉に、2六飛と打つ。
 対して2五桂なら、4六飛(1五銀以下の詰めろ)で先手良しになる。
 しかし2五銀の応手があり、今度は4六飛は(後手玉への詰めろになっていないので)6七角、8六玉、5九金で先手苦戦となる。
 3七桂打が正解手である(次の図)

変化3四同銀図12
 この3七桂打(図)が好手(1五金でもやや先手良しだが3七桂打のほうがより良い)
 後手3三桂と受けても、2五飛、同桂、1五銀、3五玉、2六金、3四玉、2五金までの詰み。
 4七角としても1五金、3五玉、2五金、同角成、同飛、3六玉に、3八銀としばって先手勝ち。

 しかしまだ6五銀という手があって油断がならない。同玉なら4七角があり後手良しになる。
 よって先手は7七玉と逃げ、さらに6七とがある(同玉なら3四角、5八玉、2六銀で形勢不明)
 8六玉とかわし、6四角、8五玉、3七銀不成、1五金(次の図)

変化3四同銀図13
 後手は6四角~3七銀不成で先手の桂馬をはずしたが、1五金(図)がある。
 以下3四玉、2五金、4五玉、3七桂、同角成、5八金で、先手勝勢。

 以上が3四同銀に〔う〕4一角 の研究である。
 〔う〕4一角 でも先手に勝ち筋があると新たに明らかになったわけである。そして、わかってみれば、この〔う〕4一角 からの勝ち筋が、最も紛れが少ない「3四同銀図」からの勝ち筋だったと思う。

変化3四同銀図00(再掲 3四同銀図)
 つまりこの図からは、〔あ〕3三歩、〔い〕8二飛、〔う〕4一角 の先手勝ちの道があるということである。
 さらに〔え〕6五歩 でも先手が勝てそうだと、これは実戦中からの準備研究でわかっていた。

 また〔お〕9一竜もあり、これは≪亜空間戦争≫としてこの「最終一番勝負」の前にずっと終盤探検隊と≪ぬし≫とで闘ってきた形である。形勢は難解。

 後手の ≪ぬし≫ は、これらの先手終盤探検隊の研究をはずして、△4二銀左 を選んできたということであろう。



一番勝負20手目(再掲 4二銀左図)
 つまりこれ(△4二銀左)が ≪ぬし≫ の、“用意の一手” なのだ。
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終盤探検隊 part198 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第97譜

2021年01月11日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第97譜 指始図≫ 4二角まで

指し手 △3一銀 ▲1一銀 △同玉 ▲3一角成
     △2二銀 ▲3二馬 △3一金



   [愛すべき人たちに会いにゆこう]

鏡の向こうは
なんだって思い通り
行ったり来たりも
決めるのは自分次第で

わたしは一体いつから
わたしになって
なにでできているんだろう

世界に散らばった
愛すべき人たちに会いにゆこう
確かめたいんだ
ひとりふたり集まって
3人4人5人6人まだまだ、もっと
本当のこと知っちゃうのは時にとても辛いけど
世界はまだまだ
ずっときっともっとこの先も
捨てたもんじゃないって

(アニメ『アリスと蔵六』エンディング曲『Chant』より 一部抜粋
                  歌 toi toy toi 作詞 コトリンゴ)




<第97譜 勝利は間違いない>


≪最終一番勝負 第96譜 指始図≫ 4二角まで

 この ▲4二角(図)は、「亜空間初形図」から数えて117手目の着手となる。

 もう先手の勝ちは間違いない。

 ここで後手は[A]3一銀 と指したのだが、他の手としては[B]1一玉、[C]2四歩、[D]1四歩 がある。
 [B]1一玉 は、3一角成で、本譜の[A]3一銀、1一銀、同玉、3一角成 の図に合流する。

 [C]2四歩と[D]1四歩 の変化を見ておこう。

 [C]2四歩 には、3一銀、2三玉、7五角成 と進める(次の図)

変化2四歩図01
 7五同金に、2二金と決め(この場合は後手玉を中段に誘うほうが攻めやすい)、3四玉、7五馬、6六角、同馬、同桂。
 そこで3五歩と打つ(次の図)

変化2四歩図02
 3五同玉なら9五竜と竜を活用できる。
 なので4三玉と引くが、6五角と打って、以下5四銀、同角、同玉、5七香(次の図)

変化2四歩図03
 先手勝ち。


変化1四歩図01
 [D]1四歩 は、3一銀、1三玉、7五角成、同金、同馬と進む。
 そこで6六角は、同馬、同桂に、5七角で “王手桂取り” ではっきり先手良し。
 それなら、6六銀でどうか(次の図)

変化1四歩図02
 以下2五金(1四金以下詰めろ)、2四金、6六馬(2二銀までの詰めろ)、2五金、5七馬、2四歩、1七桂(次の図)

変化1四歩図03
 6六角、同馬、同桂、2五桂、同歩、5七角(次の図)

変化1四歩図04
 結局、5七角の “王手桂取り” が実現した。先手勝勢。


 実戦の後手の指し手は、[A]3一銀 だった。



≪途中図1 1一銀まで≫

 △3一銀▲1一銀(図)と進んだ。

 △3一銀 に、うっかり「7五角成」だと、同金、同馬、6六角、同馬、同桂で、これは形勢が「互角」に戻ってしまう。一手一手油断しないように手を進めなければいけない。

 ▲1一銀 が正解になる。△同玉▲3一角成 と進む(次の図)



≪途中図1 3一角成まで≫

 ここから、後手は △2二銀 と打って、▲3二馬△3一金 と進んだが、ここで後手「2二金」なら、どうなるのだろうか。 
 その手には4三歩の用意がある(次の変化図)



 4三歩(図)で、先手が勝ちになる。
 4三同銀ならもちろん4一竜だし、8六桂なら4二歩成が詰めろになるので先手勝ち。そして2四歩には、やはり4二歩成で次に3二とが間に合う。また7七歩なら同玉と応じて、7六歩に6八玉と右辺に逃げるのが勝ちやすい。



≪最終一番勝負 第97譜 指了図≫ 3一金まで

 というわけで後手は △2二銀 とするが、以下 ▲3二馬△3一金 でこの ≪指了図≫ である。


第98譜につづく
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終盤探検隊 part197 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第96譜

2021年01月07日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第96譜 指始図≫ 1一玉まで

指し手  ▲3一銀不成  △9七歩成  ▲同香  △2二銀
     ▲同銀成  △同玉  ▲4二角




  [やどりぎを手にもつてあるきだす子供]

「あいつは昨日、木炭すみのそりを押して行つた。砂糖を買つて、じぶんだけ帰つてきたな。」雪童子(ゆきわらす)はわらひながら、手にもつてゐたやどりぎの枝を、ぷいつとこどもになげつけました。枝はまるで弾丸(たま)のやうにまつすぐに飛んで行つて、たしかに子供の目の前に落ちました。
 子供はびつくりして枝をひろつて、きよろきよろあちこちを見まはしてゐます。雪童子はわらつて革むちを一つひゆうと鳴らしました。
 すると、雲もなく研(みが)きあげられたやうな群青(ぐんじやう)の空から、まつ白な雪が、さぎの毛のやうに、いちめんに落ちてきました。それは下の平原の雪や、ビール色の日光、茶いろのひのきでできあがつた、しづかな奇麗な日曜日を、一そう美しくしたのです。
 子どもは、やどりぎの枝をもつて、一生けん命にあるきだしました。

   (中略)

「さうして睡(ねむ)つておいで。布団をたくさんかけてあげるから。さうすれば凍えないんだよ。あしたの朝までカリメラの夢を見ておいで。」
 雪わらすは同じとこを何べんもかけて、雪をたくさんこどもの上にかぶせました。まもなく赤い毛布も見えなくなり、あたりとの高さも同じになつてしまひました。
「あのこどもは、ぼくのやつたやどりぎをもつてゐた。」雪童子はつぶやいて、ちよつと泣くやうにしました。

   (中略)

 ギラギラのお日さまがお登りになりました。今朝は青味がかつて一そう立派です。日光は桃いろにいつぱいに流れました。雪狼(ゆきおいの)は起きあがつて大きく口をあき、その口からは青い焔(ほのほ)がゆらゆらと燃えました。
「さあ、おまへたちはぼくについておいで。夜があけたから、あの子どもを起さなけあいけない。」

     (宮沢賢治著 童話『水仙月の四日』より)



 ヤドリギの花言葉は「困難に打ち克つ」である。
 欧州の先住民ケルト人の伝説では、ヤドリギは「不死・活力・肉体の再生」の象徴としてイメージされている。

 「水仙月の四日」、雪童子(ゆきわらす)は、雪婆んご(ゆきばんご)の吹雪を起こす仕事を手伝う。「水仙月の四日」とはそういう日なのだ。
 これから吹雪を起こす予定の場所に、「赤毛布ケットの子供」が歩いている。
 その子供の前に、雪童子はなにげなく “やどりぎの枝” を落として拾わせる。
 そして吹雪がはじまり、雪童子は「カリメラの夢を見ておいで」と、激しい風と雪のためにもう動けなくなった子供にささやく。“カリメラ”とは、砂糖のかたまりのことである。つまりこれは、“赤い砂糖からつくるわたがし” を、雪童子が子供に持たせて、「大丈夫」と励ましている図なのである。 “やどりぎの枝” は、“わたがし” と形がそっくりだ。
 人間に姿の見えない自分の投げた “やどりぎの枝” を子供が拾ってくれたので、雪童子はうれしくて泣いたのだった。そしてこの子を吹雪からまもってやろうと決めたのだ。
 そして「水仙月の四日」――吹雪の夜――が終わった。子供は雪の中に埋もれてしまっている。
 夜が明けて、日が昇り、雪の中に埋もれた子供を、雪童子は雪狼(ゆきおいの)を連れて雪中から救出にいく。




<第96譜 朝の光(二)>

 夜が明け、朝の光が照らしはじめた。「勝利の朝」がおとずれたのである。


≪最終一番勝負 第96譜 指始図≫ 1一玉まで

 ▲4二銀 に、△1一玉(図)

 もう先手の勝利は間違いない。“正しく指せば” の絶対条件付きだが。
 我々終盤探検隊には「激指」がついている。ここから勝ちを逃すことはない(でも油断してはいけない)
 この図の「激指14」の評価値は +777 (候補手は3一角)

 ここは、「3一角」、「3一銀不成」、「7七歩」が先手有望な候補手になる。
 (それ以外の手では先手の勝ちはない。4一銀不成は7七歩で先手負け)

 実戦で我々が選んだのは ▲3一銀不成 だが、「3一角」 の変化を確認しておこう。


変化3一角図01
 ≪指始図≫から勝つためには、この「3一角」(図)が最も早かっただろう。
 対して後手2二銀では同角成、同玉、3一銀、1一玉、8四馬で先手勝ち。
 よって2二金と受けるしかないが、これを先手はどう攻略するか。
 5一竜と竜を活用するのが良い(次の図)

変化3一角図02
 5一竜(図)。一見これは詰めろに見えないが、じつは “詰めろ” になっているのである。2二銀成、同玉、3一銀不成、同玉、4二金、2二玉、3二金、同玉、5二竜‥‥このときに後手は「角金銀銀」の持駒なのでこのどれかを合駒するしかなく、すると4三銀以下後手玉は詰みというわけだ。
 この詰みは防ぎにくい。4三銀打とすれば一応は受かるが、4一銀不成で後手に勝ち目はない。

 したがって後手は2四歩とする。2二銀成、同玉となったときに、2三玉から上部脱出できるようにした。
 先手は5二竜。次に4一銀不成で「先手勝ち」が完成する。
 よってしかたなく後手は4三銀打と銀を受けに投入するが、2三香の決め手がある(次の図)

変化3一角図03
 2三同金に、4一銀不成、同銀、3五桂(次の図)

変化3一角図04
 先手勝ち。

 このように、「3一角」 のほうが勝ちが早かった。



≪途中図1 3一銀まで≫

 実戦では、▲3一銀不成(図)を選んだ。
 ここから後手は △9七歩成 とし、以下 ▲同香△2二銀 と進んだ。
 後手が「9七歩成、同香」を入れたのは、8六桂と跳んだとき、9八金のような手があるという意味。

 ▲3一銀不成 に対し、「2二金」 という変化を見ておくと―――(次の図)

変化2二金図01
 「2二金」 には、4三香(図)と打つのが明快な先手の勝ち方になる(4三歩でもよいが4三香のほうが勝ちが早い)
 4三同銀は4一竜で後手に受けがなく先手勝ち。
 2四歩が考えられるが、4一香成として、桂馬を取れば3五桂などで後手玉の上部脱出が防げるというわけ。これも先手の勝ちは動かない。



≪途中図2 2二銀まで≫

 △9七歩成▲同香△2二銀(図)と進んだ。

 実戦では、「▲2二同銀成、△同玉、▲4二角」を選んだが、ここは「単に4二角」もあったところ。
 その変化を以下研究してみよう。


変化4二角図01
 「4二角」(図)と打ったところ。
 (l)3一銀、同角成、2二銀と進む変化は、本譜(実戦の進行、次の譜以降に解説する)に合流するので、その変化はここでは省く。
 他に考えられる後手の手は、(m)1四歩 と(n)2四歩 だが、(n)2四歩 は、2三香、同銀右、2二銀成、同玉、3一銀、1一玉、8四馬で、先手勝ち。
 (m)1四歩 以下を考える。
 2二銀成、同玉、3一銀とする。1三玉と、まんまと後手玉を逃がしてしまうようだが、7五角成として―――(次の図)

変化4二角図02
 7五同金、同馬として先手の玉の上部を制して、先手が勝ちやすい状況になる。
 そこで後手6六角があるが、同馬、同桂に、5七角の返し技が用意されている(次の図)

変化4二角図03
 2四歩に、6六角。桂を入手できたことは後手玉を攻略するのに大きい。
 ここからは後手の手を絞りにくいが、変化の一例を示しておく。
 7七歩、同金、7六歩、同金、5八角、7七金打(次の図)

変化4二角図04
 これで先手勝勢。
 たとえばここから6七銀なら、3五桂(7六銀成、同金、同角成なら2二銀で後手玉詰み)で。
 このままなら、1五歩、同歩、2六桂をねらっていけばよい。


 実戦の進行は、「▲2二同銀成、△同玉、▲4二角」だった。



≪最終一番勝負 第96譜 指了図≫ 4二角まで

 結局、少し前に「4二銀」と打った手を反省して、「4二角」と打ち換えたことになった(「9七歩成、同香」が入っているという違いはあるが)

 この図を「激指14」で調べると、評価値は +1924 まで上がっている。



第97譜につづく
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終盤探検隊 part196 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第95譜

2021年01月06日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第95譜 指始図≫ 7五金引まで

指し手 ▲4二銀  △1一玉



   [東の海のはては睡蓮の花ざかり]

「スイレンでございました、陛下。」とライフネルが、ボートのへさきに立ちあがって、大声で知らせました。
「何と申したのか?」とカスピアンが、ききかえしました。
「スイレンの花ざかりでございます、陛下。」

  (中略)

 たぶんその花は、スイレンではないのでしょうが、スイレンそっくりでした。そしてしばらく相談したあげく、潮流のほうへむきをかえて、そのスイレン池、あるいは銀の海(一同はこの二つの呼び名を使いましたが、いまもカスピアンの地図に記しとめられている名は、銀の海です)を東にむかって進みはじめましたが、それがこの航海でいちばんふしぎなことのはじまりになりました。船がはなれた何もない海面は、まもなく西の水平線の細い青すじだけになってしまいました。花の白さは、ほのかな金色をどこかにまじえながら、四方八方に船をかこんでひろがり、ただ船尾のところだけは、航路がついて、スイレンをおしわけ、水尾(みお)を残しましたので、そこだけが濃い緑のガラスのようにかがやくのでした。

 (C.S.ルイス著 ナルニアシリーズ『朝ひらけ丸東の空へ』瀬田貞二訳 岩波書店 より)





<第95譜 朝の光(一)>


≪最終一番勝負 第95譜 指始図≫ まで

 「激指14」評価値は +485 。「激指」がここまでプラスに振れたことはこれまでにはなかった。

 「先手勝ち」になったのではないか、と我々(終盤探検隊)は思った。


 その感覚は正しかった。ここは、「4二銀」と「4二角」があって、どちらでも先手の勝ち筋に入る。
 ついに我々は、“抜け出した”のだ。暗黒の、苦しいトンネルを。




≪途中図 4二銀まで≫

 ▲4二銀(図)と打った。

 この手は後手玉への詰めろにはなっていないが、後手〈ア〉8六桂 なら、3一角、1一玉、8四馬で、先手勝ちが決まる。

 また〈イ〉3一銀 と受ける手には、4三歩がある(次の図)

変化3一銀図01
 4三同銀は4一竜だ。8六桂や7七歩には、3一銀不成、同玉、4二角、2二玉、3一銀、1一玉、7五角成。
 先手勝勢である。


変化2四歩図01
 他に、〈ウ〉2四歩(図)と受ける手が考えられる。
 これをどう攻略すればよいか。
 3一角、2三玉、4一銀不成とする(次の図)

変化2四歩図02
 4一同銀、同竜、8六桂で先手玉に詰めろが掛かるが、7五角成で―――(次の図)

変化2四歩図03
 7五同金、同馬で、先手勝勢。

変化2四歩図04
 ということで、「変化2四歩図02」に戻って、後手7七歩(図)の変化。
 これを同金は、7六歩できわどい勝負になる。
 ここは3二銀不成、同玉、7五角成、同金、同馬とするのが良い。
 以下7八歩成、同玉、4五角、6七香(次の図) 

変化2四歩図05
 6六歩なら、4一竜以下後手玉に“詰み”がある。それを受けて8一金としても、4三金、同玉、3五桂、3四玉、2三銀、3五玉、5七馬以下、詰んでいる。
 先手勝ち。



≪最終一番勝負 第95譜 指了図≫ 1一玉まで

 ▲4二銀 に、△1一玉(図)としたのが、実戦である。



第96譜につづく
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終盤探検隊 part195 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第94譜

2021年01月05日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第94譜 指始図≫ 7五金まで

指し手 △7八歩成  ▲同金  △7五金引



  [あけぼの]

春はあけぼの。
やうやう白くなりゆく山ぎは、
すこしあかりて、
紫だちたる 雲のほそくたなびきたる。

 (清少納言著『枕草子』より)




<第94譜 曙光(二)>

 もしかしたら、先手良しになったのではないか、と感じていた。


≪最終一番勝負 第94譜 指始図≫ 7五金まで

 以下、△7八歩成▲同金 と進む。



≪途中図 7八同金まで≫

 後手としては、ここで「7五同金上」としたいところのはず(次の図)


変化7五同金上図01
 7五金上(図)で、先手玉には、後手8七銀(金)以下の “詰めろ” が掛かっている。
 ここは7五同馬と馬を切るのが先手の唯一の対抗手段になる。同金に、4二角と打つ(次の図)

変化7五同金上図02
 この4二角が “詰めろ金取り” になっている。
 そうなるとこれで先手優勢に見えるが、まだ難しい。というのはすんなり7五角成とはできないからだ。
 ここで【A】3一銀 と、【B】6六角 とがある。

変化7五同金上図03
 【A】3一銀(図)に、7五角成では、6六角、同馬、同桂で後手良しになる。
 よってここは1一銀、同玉、3一角成とし、以下2二銀、3二馬、3一金、同馬、同銀、3二歩と進めるのが正しい攻め手順である(次の図)

変化7五同金上図04
 3二同銀は3一銀だし、2二銀にも3一銀で先手勝ち。つまりここではもう後手は受けがない。
 しかしこの瞬間は後手玉は詰めろではないので、攻めてくる。
 7七歩、6八金、8六金、3一歩成、9七角(次の図)

変化7五同金上図05
 3一歩成で後手玉に詰めろがかかった。後手は9七角(図)
 9七同香、同歩成、同竜、同金、7七玉、6五角、7六銀(次の図)

変化7五同金上図06
 後手6五角は "詰めろ逃れの詰めろ" だったが、7六銀(図)と受けて、先手勝勢である(7五香は同銀と取って大丈夫)
 なお、6五角に代えて5四角では先手玉に対して詰めろになっていないので、3二歩で先手勝ち。

変化7五同金上図07
 先手の4二角に対し、 後手【B】6六角(図)の場合。この角打ちは7五金にひもを付けている。
 7七歩に、1四歩。これはつまり持駒をすべて攻めに使いたいということだ。
 先手は6八香(次の図)

変化7五同金上図08
 6七歩、同香、5七角成、5八歩、4八馬、3一銀、1三玉、1五歩、2四玉、3六歩(次の図)

変化7五同金上図09
 先手の持駒も金のみになって心配だが、7五角成で金を取る手と、4一竜で桂を取る手があるので補充できる。
 次の先手3五金の詰みを後手は受けなければいけないが、3四銀 なら2六金と打って、先手優勢(次に7五角成を狙う。6四歩とそれを受ければ9五竜)
 また 2五金 には2六歩がある(同馬は7五角成)

 よってここは 後手 3四玉 と横移動で受けるが、3五金、4三玉、5一角成とする。
 8六桂なら、4二銀成、5四玉、7三角成で先手勝ち。
 6六歩と先手の香車の利きを止める手には、6一竜だ(次の図)

変化7五同金上図10
 これで後手は受けがない。5三金なら4二銀成、5四玉、7三馬。6二金なら同馬、同銀、同竜でよい。
 先手勝ち。後手8六桂が跳んでくる前に後手玉を捕らえることができた。



≪最終一番勝負 第94譜 指了図≫ 

 「7五同金上」では後手勝てないということがわかった。
 それなら、△7五同金引(図)とするしかない。

 「金を引くしかないのなら、ここは先手良しではないのか」―――それが戦闘中の、我々の感想だった。


第95譜につづく
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終盤探検隊 part194 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第93譜

2020年12月31日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第93譜 指始図≫ 6五金打まで

指し手 △7七歩  ▲7五金



   [夜明けの空]

したいことが見つけられないから
急いだ振り 俯くまま

転んだ後に笑われてるのも
気づかない振りをするのだ

形のない歌で朝を描いたまま
浅い浅い夏の向こうに

冷たくない君の手のひらが見えた
淡い空 明けの蛍

 (ボーカロイド初音ミク楽曲『夜明けと蛍』作詞作曲 n-buna より 歌詞の一部抜粋)





<第93譜 曙光(一)>


≪最終一番勝負 第93譜 指始図≫ 8八玉まで

 後手 △7六金 に、▲8八玉(図)まで進んだところ。

 ここで後手「8六金」は、7五金と香を取る手があって無効。
 また「8六桂」は、7七歩、7八桂成、同金と進んでみると――(次の図)

変化8六桂図01
 後手に有効手がなく、困っている。8六金は7五金がある。
 7七金、同金、同香成、同玉、3一金と進むのなら、5四桂と打って、5三銀には、5一竜として次に4二銀をねらう。
 これは先手良しである。

変化8六桂図02
 「8六桂」に対しては、7五金(図)でも先手良しになる。
 以下7八桂成、同金、7五金上、同馬、同金、4二角と進んで―――(次の図)

変化8六桂図03
 これは、先手の戦力が強すぎて、後手に勝ち目がない。先手勝勢。

 ということで、≪指始図≫ では、後手は △7七歩 とする(次の図)



≪途中図1 7七歩まで≫

 △7七歩(図)と打って、銀を歩で取りにいく。
 もともとこの歩が打ちたいから、7五香~7六金と指してきたのであるから。

 ここで先手、どうするか。


変化8七銀図01
 △7七歩 には、8七銀(図)いう応手がある。これででどうなるか。
 実戦中、我々はこれでは負けだと判断し、この手を見送ったのであった。8七同金、同玉に、7八銀で勝てないと思ったからである(次の図)

変化8七銀図02
 ところが、戦後調査で、その判断は誤りでこれは「先手勝ち」の変化だ、ということが判明した!
 7八同金、同歩成に、8四馬 が有効手になるのだった!

 8四同銀に、3一銀、同玉、4二金、同玉とし、4三歩(次の図)

変化8七銀図03
 4三同玉なら、5四角以下、後手玉 “詰み” である。3四玉なら2五銀、同玉、3七桂以下、5三玉なら6二銀、4二玉、5一銀不成以下。
 よって4三同銀と取り、そこで「5一角」と打つのが大事な一手(「4三歩、同銀」を利かした効果で後手玉は4三から上部脱出ができなくなっている)
 以下3一玉、4二金、2二玉、3一銀、1一玉、8四角成(次の図)

変化8七銀図04
 “2度目の8四角(馬)切り” というのが面白い。
 この手が "詰めろ逃れの詰めろ" で決め手になる。このための「5一角」であった。

 つまり、8七銀 なら先手勝ち なのだった。




≪最終一番勝負 第93譜 指了図≫ 7五金まで 

 実戦では、先手は、▲7五金(図)とした。

  これは、「8七銀の勝ち筋をのがした」ということになるのだろうか。
 それとも、「7五金でも先手勝ち」となるのだろうか。


 実戦中、我々は、「勝ち」へと続く道筋の “光” が見えてきた気がしていた。



第94譜につづく
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終盤探検隊 part193 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第92譜

2020年12月30日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第92譜 指始図≫ 6五金打まで

指し手 △6五同馬 ▲同金 △7六金 ▲8八玉



  [「違う!」と応えるために少女は海底に戻ってきた]

ある日、少女が戻ってみると
暗い海の底で 鏡が光っていました。

―――あれからずっと 
あなたは海底に沈んだままで

君は「A子ちゃん」のままなのだ。

「あの時、私は応(こた)えられなかったけれど もう言わなくちゃ」
そのために戻ってきたのだ。

少年「なんで僕が 君のこと好きなのか 教えてあげよう
それは 君は僕のことそんなに好きじゃないからだよ」

少女「違う!」

  ( 漫画『A子さんの恋人』 近藤聡乃作  KADOKAWA HARTA COMIX より)





<第92譜 決着は泥の中で(十)>


≪最終一番勝負 第92譜 指始図≫ 6五金打まで

 ▲5四歩△同馬 に、▲6五金打(図)の場面。

 ここは、我々――終盤探検隊――の戦う気持ちが入った場面であった。

 対して、後手7六香、5四金、7八香成、同玉の変化は、先手良し。
 4三馬と馬を引くのも、7五金寄、同金、同馬で、先手優勢。 

 後手の ≪ぬし≫ は、△6五同馬 と応じた(次の図)



≪途中図1 6五同馬まで≫

 ▲6五同金(図)に、7八香成の変化は、同金で、先手良し。

 ▲6五同金 には、△7六金と打つほうが手強い手。
 以下、▲8八玉 と進む(次の図)



≪最終一番勝負 第92譜 指了図≫ 8八玉まで

 ▲8八玉(図)まで進んだ。
 さあ、どうなっているか。



 この手で、「亜空間初形図」(下の図)より数えて、103手目になる。ついに100手を超えた。

亜空間初形図



第93譜につづく
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終盤探検隊 part192 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第91譜

2020年12月29日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第91譜 指始図≫ 7五香まで

指し手  ▲5四歩  △同馬  ▲6五金打


   [描け!]

  ドンドンドンドンドン ガチャ
「おい、何をしよっとか、お前は」
「せ‥‥先生‥‥」
「ごめんアキちゃん お母さん 先生に 電話しちゃった」

  べりべりべりべり
「えっ」
「お母さん 鏡ありますか 大きいやつ」
「えっ あっハイ 鏡台なら‥」
「それ借りていいですか」

「よし 林! 自画像描け!」
「えっ や‥やだ‥ 自画像なんて ダサ‥」
「描けって! 余計なこと考えんでいいから 見たまんま描け」
「せん‥せ‥」
「ホラホラホラホラホラ―――ッ 描け描け描け鏡見て描け―――――――ッ
「ホラホラ早よッ 早よ描け早よ
「ホラホラホラ ホラ
「描けッ」

  (漫画『かくかくしかじか』 東村アキコ作 集英社 より)





<第91譜 決着は泥の中で(九)>


≪最終一番勝負 第91譜 指始図≫ 7五香まで

 後手の ≪ぬし≫ が選んだ指し手は △7五香(図) であった。

 形勢は、どうなっているのだろう?

 最新ソフト「水匠2/やねうら王」の評価は、「互角 +42 」
 一方、この戦争中に使っていたソフト「激指14」は、「互角 +150 」


 先手はここで、▲5四歩 と切り返すのだが、代えて「6五金 という変化」もあったので、その変化を見ておこう(次の図)

変化6五金図01
 6五金(図)に、7八香成(この変化のために7五に歩ではなく「香」を打った)
 7八同玉、7六銀と進む(次の図)

変化6五金図02
 そしてここで先手が何を指すか、という問題になる。
 〈p〉6八玉は、6五銀で後手優勢。
 〈q〉5四歩は良さそうな手であるが、8六馬、同飛、同桂、7八玉、6五銀で、やはりこの変化も後手良し。
 しかし、〈r〉6一竜があった。これで「互角」の勝負になる。
 以下6五銀、同竜、6四銀、3五竜、3四歩、4六竜、6五銀、6八玉が変化の一例(次の図)

変化6五金図03
 形勢不明。

 先手には、この変化を選ぶ権利があった。




≪途中図2 5四歩まで≫

 実戦の先手(終盤探検隊=我々)の手は、▲5四歩(図)

 以下、△5四同馬▲6五金打 と進んだ。

 後手が変化するなら、△5四同馬 に代えて、「6四馬」とする手があった。
 これは、以下6五銀と進む(次の図)

変化6四馬図01
 4二馬、4三歩、同銀、7七銀(次の図)

変化6四馬図02
 この変化も、形勢不明(互角)だ。
 これは後手に選ぶ権利がある変化だ。




≪最終一番勝負 第90譜 指了図≫ 6五金打まで

 実戦は、△5四同馬▲6五金打(図)と進んだ。

 あいかわらず、“戦場” は、盤面左側である。
 しかし、後手の馬が前に出たので「4二」に打ちこみの “スキ” が生まれている。



第91譜につづく
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終盤探検隊 part191 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第90譜

2020年12月25日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第90譜 指始図≫ 7六金まで

指し手  △7五香


   [僕の目ざめを待つ水仙の花]

 春のまだ浅いころ、或る朝、僕は思わぬ寝坊をした。冬のあいだあんなに短い睡眠に自分を馴(な)らしていたのに、時ならぬ暖かさが、心の弛(ゆる)みを作ったのにちがいない。画室の一隅(いちぐう)のソファ・ベッドの白いシーツの上に、僕は起き上がった。そのとき白い枕(まくら)のそばに、一茎の水仙が横たえられているのに気づいた。
 僕は怒ろうとしたが、思い止(とど)まった。枕のかたわらの水仙はいかにも自然に置かれていて、僕の目ざめをまっているかのようである。

  (『鏡子の家』 三島由紀夫著 新潮文庫 より)





<第90譜 決着は泥の中で(八)>


≪最終一番勝負 第90譜 指始図≫ 7六金まで

 今、先手(終盤探検隊)は、▲7六金(図)と、歩を払いながら金を寄って「8六」の地点を受けた。

 ここで後手はどう攻めるか。
 候補手は、たくさんある。
   〔い〕7五歩
   〔ろ〕7五香
   〔は〕9五金
   〔に〕9七歩成
   〔ほ〕6四銀
   〔へ〕8六桂
   〔と〕7七歩
   〔ち〕4三馬

 このような手が考えられる。

 それぞれの手についての調査研究の内容は、この「一番勝負」の勝負の決着を伝えたその後でじっくると伝える予定なので、ここもその解説は省く。

 実戦で、後手番の ≪ぬし≫ が採用したのは、〔ろ〕7五香である。



≪最終一番勝負 第90譜 指了図≫ 7五香まで



第91譜につづく
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終盤探検隊 part190 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第89譜

2020年12月21日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第89譜 指始図≫ 5九香まで

指し手 △7四桂 ▲5三香成 △同馬 ▲7六金




   [目ざめて]

 ――そして、けっきょく、ほんものの子猫(こねこ)になっちゃったんだ。

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第89譜 決着は泥の中で(七)>


≪最終一番勝負 第89譜 指始図≫ 5九香まで

 先手は、▲5九香(図)と打った。

 この手は、攻めては5三香成と銀を取って後手陣を薄くできるし、5四歩と、後手の馬の利きを遮断する受けの用意もある。
 この香打ちは効果手な手には違いないが、しかし、△7四桂 と打つ手を許す。実際、後手の ≪ぬし≫ はそう指してきた。

 この△7四桂を打たせたくないのなら、▲5九香 に代えて、7五歩とすべきところだったかもしれない。
 それで「互角」だった。
 ▲5九香 は、実際どうなのだろう?



≪途中図1 7四桂まで≫

 △7四桂(図)に、先手(我々=終盤探検隊)は、▲5三香成 で “勝負” (次の図)



≪途中図2 5三香成まで≫

 △5三同馬、▲7六金 と進んだ(次の図)



≪最終一番勝負 第89譜 指了図≫ 7六金まで

 このあたり、勝負所なので、しっかり解説すべきところなのだが、最後にまとめて「何が勝負を分けたのか」をじっくり調べ考えたいと思うので、今はあえてさらっとながして手順を追っていくことにする。

 いま、「8六馬」の後手の狙い(以下8八玉、8七香、同銀、7七歩成で、先手玉詰み)を消して、▲7六金(図)としたところ。



第90譜につづく
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終盤探検隊 part188 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第87譜

2020年12月17日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第87譜 指始図≫ 7五歩まで

指し手 ▲7七金



   [子猫にしてやる]

「あんたなんか、こうやって、子猫にしてやる!」

  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 もともと「子猫」だった赤の女王に対して、「子猫にしてやる!」とアリスが叫んだ。
 これでアリスの「鏡の国」の冒険は終わる。
 「鏡の国」へ入る前のアリスは、黒の子猫(キティ)に対して「(チェスの駒の)赤の女王のマネをして」と命じていたのだが、「鏡の国」の中で「赤の女王」に出会ってからは、それらのことをすっかり忘れてしまっている。
 だから、「子猫に戻す」ではなく、「子猫にしてやる」なのである。
 それでも「子猫」だったことは、こころの表層では忘れていても、こころの底ではわかっていたということであろう。そうでなければ「あんたなんか、子猫にしてやる」なんて発想はでてこない。
 「わかっているのに、わからないふりをして遊ぶ」という、子供のすきな高度な遊びである。




<第87譜 決着は泥の中で(五)>


≪最終一番勝負 第87譜 指始図≫ 7五歩まで

 「最終一番勝負」はこう進んだ。
 我々の相棒、ソフト「激指14」の評価値は +92 。
 我々は「きっと勝ちがある」と割と楽観的に思っていた。根拠はなかったが。

 さて、ここで受けなければいけないが、7七香では、7六歩、同香、7五歩、7七歩、7六歩、同歩、7五歩となって、そこでまた受けがなく窮してしまう。
 では、どうするのか。

7五歩図(指始図)
 考えられる候補手は、次の4つ。
  [A]6八歩
  [B]5九香
  [C]8八玉
  [D]7七金 = 実戦の指し手

 上から順に、それぞれ、どうなるかを追っていく。


変化6八歩図00
 [A]6八歩(図)
 これは、7六歩に、5九香と打ち、6四銀右、7一竜と進む(次の図)

変化6八歩図01
 この7一竜(図)はおそらく最善手である。
 そして、ここで後手に手の選択肢がある。次の4つが考えられる。
 〔ア〕7五銀、〔イ〕7五桂、〔ウ〕1四歩、〔エ〕9六歩

 調査では、〔ウ〕1四歩と〔エ〕9六歩は、先手良しになる(解説は省略)
 〔イ〕7五桂は、9七玉以下、「互角」(これも解説は省略)

 〔ア〕7五銀が、後手最強手である。

変化6八歩図02
 〔ア〕7五銀に対し、このままだと後手7四桂と打たれて先手が苦しくなる。
 ここは、7五同竜(図)と応じるのが、その前の7一竜の意味。以下7五同金、同馬で、“二枚替え”。
 とはいえ、後手の飛車の入手も大きい。4七飛と打つ。
 先手は、5七金(次の図)

変化6八歩図03
 4九飛成、6九金打、7七桂(次の図)

変化6八歩図04
 7七同銀、同歩成、同玉、6四銀打(次の図)

変化6八歩図05
 6六馬、2九竜。
 次に6五銀とされると先手苦しくなるので、3五桂で勝負する。
 以下、3四馬、4三歩、同銀、4六金(次の図)

変化6八歩図06
 1九竜、8八玉、7二香、7六歩、1六竜、2六金(次の図)

変化6八歩図07
 1九竜、2五銀、8九馬、同玉、3二銀、5三香成、同銀、6五角(次の図)

変化6八歩図08
 5四香、5五金、8七桂、8八銀、7九桂成、同金、5九飛(次の図)

変化6八歩図09
 5四金、同銀、3四桂、同歩、4四馬、3三金、5四馬(次の図)

変化6八歩図10
 5四同飛成、同角、7八歩、同玉、7七歩(次の図)

変化6八歩図11
 7七同玉(代えて8七玉は7九竜、同銀、6九角で寄ってしまう)、5九竜、4三銀、5四竜、同銀成、7五歩(次の図)

変化6八歩図12
 後手優勢。7五同歩には6五角。



変化5九香図00
 [B]5九香(図)
 7六馬、8八玉、6七歩成、5三香成(次の図)

変化5九香図01
 5三同歩、4二金、2四歩、6一竜、6五桂(次の図)

変化5九香図02
 8七金、6六馬、9八玉、9六歩、同金、9五香、9七歩(次の図)

変化5九香図03
 7八と、同金、9六香、同歩、9七歩、同玉、9五歩、同歩、9六歩、同玉、9四歩(次の図)

変化5九香図04
 後手優勢。



変化8八玉図00
 [C]8八玉(図)
 7六歩、6八金(後手7七桂に対して7九飛のスペースをつくった意味もある)、6四銀右、7一竜、9六歩、5六香、6五銀、5七金打(次の図)

変化8八玉図01
 5六銀、同金、6四香、8七金、9七歩成、同香、9六歩、同香、9五歩(次の図)

変化8八玉図02
 9五同香、同金、4二歩、同銀、5四歩、7七香(次の図) 

変化8八玉図03
 6六金、同香、同馬、7八香成、同金、5四馬、5九香、6五金(次の図)

変化8八玉図04
 後手優勢。



7五歩図(指始図)
  [A]6八歩 → 後手良し
  [B]5九香 → 後手良し
  [C]8八玉 → 後手良し
  [D]7七金 = 実戦の指し手

 まとめると、こういう結果である。
 つまり今のところ「先手良し」になる手順は見つかっていない。

 実戦は、[D]7七金

 





≪最終一番勝負 第87譜 指了図≫ 7七金まで

 ▲7七金 が、実戦で我々の選んだ着手。
 これは、7六歩に、6六金と6筋の歩を払うという意味である。


第88譜につづく
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終盤探検隊 part187 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第86譜

2020年12月16日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第86譜 指始図≫ 7六歩まで

指し手 △4三馬 ▲6八桂 △7六香 ▲同桂 △7五歩 


   [あんたなんかもう、こうやって――]

――ところが女王さまはもう、となりにはいなくってね――ふいに小さなお人形くらいにちぢまっちゃって、テーブルの上をぐるぐるたのしそうに、うしろにひきずっている自分のショールと追いかけっこをしているところなんだ。
 ほかのときならば、アリスもさぞたまげたにちがいないけれど、いまはもう興奮のあまり、何だってかまいやしない。「あんたなんかもう」くりかえしざまアリスは、そのちっぽけな生き物がちょうどテーブルにまいおりてきた瓶をぴょんととびこえようとしたところをぱっとひっとらえて、「あんたなんか、こうやって、子猫にしてやる!」


  (『鏡の国のアリス』 ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)





<第86譜 決着は泥の中で(五)>


≪最終一番勝負 第86譜 指始図≫ 7六歩まで

 「亜空間最終一番勝負」は、いま、先手を持つ我々終盤探検隊が、▲7六歩 と指したところ。
 だが、これは「悪手」であった。6七歩成 なら「後手良し」だった。
 ―――「だった」と書いたのは、実際はその手を後手の ≪ぬし≫ は見送ったからである。
 (この手が見えないはずはない。見えていて別の手を選んだのである)


 まずは「6七歩成 の変化」について、解説しておこう。



6七歩成 の変化]

変化6七歩成図00
 6七歩成(図)の変化。
 同銀、同馬、7七金と進む(次の図) 

変化6七歩成図01
 後手に7六馬を許すわけにはいかないので、7七金(図)と打つ。
 そこで後手は6六歩もあるが、以下6八歩、8九馬、同金、5九飛、7九桂のように進み、この「6六歩、6八歩」の手交換は、後手にとって少し損。
 なので、ここは単に8九馬といく。同金に、7六香(次の図)

変化6七歩成図02
 あっさりした攻撃手順だが、これが受けにくい。7六同金に、7五歩。
 そこで7七金は、4七飛、6八金、7六歩、同玉、7五銀、8七玉、7六歩で後手優勢になる。
 よって、7五同金と取るが、そこで6四銀右がうまい継続手になる(次の図)

変化6七歩成図03
 8四金(6四同銀)に、4七飛と打ち、7七歩、7六歩と進む(次の図)

変化6七歩成図04
 先手、支え切れない。9五歩と脱出に望みをかけるしかない。
 以下7七歩成、9六玉、8四歩、同馬、4六飛成、8五玉、7五銀打(次の図)

変化6七歩成図05
 後手優勢。

 つまり、後手が 6七歩成 を選んでいれば、後手がそのまま勝っていた―――ということになる。

 やはり先手の▲7六歩はキケンな選択だったのだ。
 しかし 6七歩成 を後手は選ばなかったのだから、結果的には先手の指した ▲7六歩 は正解手だったのかもしれない。


≪途中図1 4三馬まで≫

 実戦での後手の ≪ぬし≫ の指し手は、△4三馬
 後手の目には、この手が(6七歩成よりも)より魅力的に映ったということだ。

 先手(我々)は、▲6八桂 と打って「7六」を支えた。

 実戦は先手は ≪a≫6八桂 と指したわけだが、他の手もあったかもしれない。
 他に、≪b≫6八歩≪c≫8八玉≪d≫7七金  の “変化” も考えられたところなので、以下それらの手の検討手順を示していく。


変化6八歩図00
 ≪b≫6八歩(図)には、7六馬がある。以下8八玉に、6七歩成、同歩、6六歩が好手順(次の図)

変化6八歩図01
 この手があるので、どうやら後手良しになるようだ。
 6六同歩は、同馬で、次の7八歩成が厳しく、先手は支えきれない。
 したがって6六歩は取れず、ここで6八桂と受ける。以下6七馬に、6一竜。
 しかし8九馬、同玉、6二飛と応じられ―――

変化6八歩図02
 後手優勢。もう少し続けてみよう。
 6二同竜、同銀右。そのままだと6七歩成~7八歩成で、先手陣は崩壊するので3七飛と受けてチャンスが来るのを待つ。
 以下、5九飛、8八玉、2九飛成、4三歩(次の図)

変化6八歩図03
 4三歩(図)と打って、攻め味をつくる。4三同銀には6五角がある。また、6七桂は4二金で先手良しになる。
 後手は、1九竜、4二金、3一香はあるところだが、もっと早い決め手がある。
 「7八歩成、同銀に、6七桂」とする手順である。これなら、先手玉への詰めろになっている。
 以下8九金に、7七歩(次の図)

変化6八玉歩04
 7六歩、7八歩成、同金、7七歩、同玉、7九桂成、8八金、2八竜、5七飛、7六香(次の図)

変化6八玉歩05
 後手勝ち。7六同桂は6八銀があり、7六同玉は6八竜が6七銀以下の詰めろになる。


変化8八玉図00
 ≪c≫8八玉(図)には、[山]7六馬[川]7六香 とがある。どちらも有力。

 本筋は [山]7六馬 のほうと見るが、先に [川]7六香 から見ておく。

変化8八玉図01
 [川]7六香(図)には、6八歩として後手の6七歩成を消しておく。
 以下7八香成、同金、7七歩、同玉(代えて同金、7六歩、8七金、7七銀の変化は先手悪いと見る)、8二銀打(次の図)

変化8八玉図02
 8四馬、同銀、6一竜(8二竜は5五角で先手不利になる)、7五銀、8七金打(次の図)

変化8八玉図03
 「互角」の形勢。

 つまり、[川]7六香 は 「互角」。

変化8八玉図04
 さて、“本筋” の、[山]7六馬(図)の場合。

 ここは、【ラ】8七金、【リ】6八歩、【ル】6一竜 が候補手だが、正解手は【ル】6一竜 である。
 【ラ】8七金は、同馬、同玉、6七歩成、同銀、7七金、9八玉、6七金と進んで、その局面は後手良し。
 また、【リ】6八歩 だと、上の ≪b≫6八歩 の変化に合流する。それは後手良しだった。

変化8八玉図05
 ということで、[山]7六馬 に、【ル】6一竜(図)。 これが最善手。
 ここで (1)7七歩 でどうなるかが重要な変化。8七銀、同馬、同玉、7八銀(次の図)

変化8八玉図06
 先手は6五角と打つ手が後手玉攻略の期待の手で、3二角成以下の “詰めろ” になっている。
 当面は玉が王手されているが、9八玉だと8九銀不成と王手で取られ、同金、9六歩、8七金、7八歩成、6五角、4二飛で、先手悪い。
 9七玉が正解手で、後手は7九銀成とする(8九銀成は6五角、4二飛、8九金、7八歩成、9五歩、8九と、4三歩で、先手良し)
 そこで6五角と打つ(次の図)

変化8八玉図07
 6五角(図)は、3二角成、同玉、5二竜(6一竜とした意味の一つがこの手にある)以下の“詰めろ”
 これを受けるために後手は4二金とし、7九飛、7八歩成と進む。
 そこで9五歩、7九と、4三歩は、7四銀で後手優勢になる。9五歩~4三歩では遅い。
 3一金が剛速球の攻め手(次の図)

変化8八玉図08
 3一同玉に、1一銀、2二金。
 そこで5一金(次の図)

変化8八玉図09
 7九とに、4三桂(次の図)

変化8八玉図10
 4三同銀には、同角成で、受けが困難(たとえば3二金左には4二馬で詰む)
 よって4三同金、同馬、4二飛と後手は応じる。
 これには6五馬と引き返す。
 そこで9六歩、同玉、9五歩なら、8七玉としておいて、先手は一歩を得たので次に4三歩があって、先手良し。
 後手7八とには、4一金(4一同飛は2二銀成、同玉、3二馬、同玉、5二竜以下詰み)、同銀、5一金(次の図)

変化8八玉図11
 これで先手勝ち。5一金(図)と打って、後手玉に4一金、同飛、2二銀成、同玉、3二金以下の “詰めろ” を掛けた。5四桂なら、8四馬と金を入手した手が、4一金、同飛、4三桂以下の “詰めろ” になっている。4三桂には3五桂とすればよい。

変化8八玉図12
 6一竜に、(2)6四銀右(図)がある。次に6七歩成がある。
 ここで先手の候補手は、〈i〉6八歩 と 〈J〉8七金。
 〈J〉8七金を調べると、「千日手」の結果となった(解説は省く)
 〈i〉6八歩 以下を見ていく。
 これには、7七歩、6九銀(8七銀は同馬、同玉、7八銀で先手悪い。先手6五角が打てないため)で、次の図になる。

変化8八玉図13
 後手としては、ここで 6七歩成 、同歩、6六歩(同歩、同馬なら後手良し)で、攻め切りたい。
 しかし、6八桂、8六馬(6七馬は5四歩で先手良し)、8七金、8五金、8六金、同金、8七金、8五金、9八角(次の図)

変化8八玉図14
 千日手模様だったところを、9八角で打開。角筋が通れば3二角成~5二竜で後手玉に詰み筋ができる。こうなると先手良し。

変化8八玉図15
 ということで、〈i〉6八歩 に、後手は 6五馬(図)とすることになる。
 ここからは変化が多く、調べ切れない。
 「互角」を結論とするしかない。

 以上のような調査内容を経て、≪c≫8八玉 は、形勢不明(互角) とする。


変化7七金図00
 ≪d≫7七金 (図)は、7六香に、6六金と歩と消しながら逃げる手で対応する。
 以下7八香成、同玉、7六歩(次の図)

変化7七金図01
 ソフトの評価値は -350 くらいでやや後手寄り。ここから手も広いので実戦的にはこれからの勝負。
 以下、変化の一例を示しておく。
 6七玉、6四銀右、6一竜、6五銀打、4七金(次の図)

変化7七金図03
 先手は “右側” へ逃げるつもり。
 6六銀、同玉、6五馬。この「6五馬」の位置にいる馬が攻防の要となる。
 5七玉、7七歩成、4八玉、6七と、5九香、4五歩(次の図)

変化7七金図04
 3七玉(対して4六歩には5六金とするつもり)、6六と、3八銀、4六金、同金、同歩、4二歩(次の図)

変化7七金図05
 4八歩と受けるのでは受け一方になって勝ち目がないと見て、4二歩(図)と攻める。
 4二同銀なら5二香成があって勝負形になる。
 後手は5六とで攻め合いになる。以下4一歩成、4七歩成、2六玉、2四歩、4七銀、同と、3一と、2八銀打(次の図)

変化7七金図06
 2八銀打(図)で、どうやら先手玉は捕まっている。
 しかし実戦的にはまだ “あや” がありそう。1七桂と受け、4六と。
 3六歩では4四銀があるので3五金と受けるが、2九銀成で―――(次の図)

変化7七金図07
 後手3四桂からの “詰めろ” で、これは後手の勝ちが決まった。

 ≪d≫7七金 の変化は、手が広いので実戦的な “あや” はあるが、後手に主導権がある局面が続き、正確に手を選ばれると先手が勝てない。



4三馬図(途中図1)
  ≪a≫6八桂 = 実戦の指し手
  ≪b≫6八歩 → 後手良し
  ≪c≫8八玉 → 互角
  ≪d≫7七金 → 後手良し

 この「4三馬図(途中図1)」の調査結果のまとめは、こうなる。
 つまり先手としては、≪c≫8八玉 を選ぶのもあった、ということだ。



≪途中図2 6八桂まで≫

 先手は、▲6八桂(図)として、7六に利かせた。

 以下、△7六香▲同桂△7五歩 と進んだ。




≪最終一番勝負 第86譜 指了図≫ 7五歩まで

 このまま放置すると、7六馬、8八玉、6七歩成で、先手不利になる。
 では、どう受けるか。


第87譜につづく
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