中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

フリードリヒ大王のゲーテ論

2015年11月17日 | 
 プロイセンのフリードリヒ大王が大変なフランスかぶれで、軍人王の異名をとる父王から「女の腐ったような奴」と罵られ続け、あやうく殺されかけたことは「危険な世界史 血族篇」(角川文庫)に書きました。

危険な世界史 血族結婚篇 (角川文庫)

 彼の「おフランスざんす」は一生を通じてのものだったので、ドイツ語は馬丁の話す言葉だとして蔑み、公的にも私的な場でもフランス語で読み書き会話していました。50代になっても「ドイツ語はまわりくどくてメロディがなく、野蛮人のようなものだ」と言い、70代になっても「ドイツ人は趣味が欠如しているから、シェークスピアのくだらない模倣「ゲッツ」(ゲーテの戯曲)に拍手を送っている」と言い放ちました。

 まるでフランス人に生まれなかったのが痛恨事だったかのようです。プロイセンを大国に押し上げ、ハプスブルクとブルボンを相手に戦争し、後世のドイツ国家の核を作り上げた大王だというのに、全く不思議としかいいようがありません。

 若きゲーテやシラーが、宮廷人らのこうした異国文化依存へ反旗を翻し、ドイツ語の美しさを市民に訴え、まことにドイツ的な芸術を再創造せんと格闘したことはよく知られるところです。モーツァルトもヨーゼフ2世から初めてオペラを依頼されたとき、従来のイタリア語オペラではなく、「ドイツ語オペラを書かせてください!」と言ったのは同じ志からでした。

 現代日本も英語、英語と草木もなびいておりますが、小・中学校でまず第一にやるべきは、国語ではないのかな。それとも政府は日本人をアメリカ人に変えたいのかな。

 いや、それともフリードリヒ大王をはじめとした当時の各国宮廷が、フランス語を話すエリート少数派と、フランス語の命令形だけ理解するドイツ語大衆に分断したように、いずれは日本語のできない英語エリート族が、英語で命令されることは理解しても日常は日本語を使う一般ピープルを差別するための、要するに階級分けの手段にしようとしているのかな。怖ろしい。。。

 日本語は、八百万の神が住まう温暖な気候と美しい大地から生まれた言葉です。そして言葉は国家であり、国民そのものです。いついつまでも絶やさぬようにしなければ。


☆☆☆今後の講演予定

・11月26日(木)19時~20時半 「プラド美術展」講演in集英社アネックスビル8F
https://art.flagshop.jp/news/detail/724
http://mimt.jp/event/?m=2015

・11月30日(月)女子美術大学特別公開講座(一般の参加もOK)~萩尾望都さんとの対談。
http://www.joshibi.net/ad/koukai/uchuart/index.html#k09

・12月4日(金)16:30~18:00
都留文科大学比較文化学会講演会『絵画から読み取る当時の生活』
会場:都留文科大学2号館2102教室 入場無料・予約不要
http://www.tsuru.ac.jp/event/20151117hibun/index.html

・2016年1月16日(土)2時~4時。NHK文化センター青山教室

・2016年2月14日(日)2時~3時半。静岡県立美術館「風景画展」
http://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/japanese/exhibition/kikaku/2015/05.php


☆最新刊「残酷な王と悲しみの王妃 2」(集英社)

残酷な王と悲しみの王妃2

☆『「絶筆」で人間を読む - 画家は最後に何を描いたか』(NHK出版新書)
 2刷になりました♪

「絶筆」で人間を読む―画家は最後に何を描いたか (NHK出版新書 469)

☆「中野京子と読み解く 名画の謎 対決篇」(文藝春秋)

中野京子と読み解く 名画の謎 対決篇
「青い日記帳」さんが紹介してくださいました。素敵な紹介で嬉しいです♪
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=4050

☆文藝春秋WEBサイトでは、短いですけどわたしのインタビュー記事も載りました。お読みくださいね!→http://hon.bunshun.jp/articles/-/3935


☆「名画の謎 ギリシャ神話篇」(文春文庫)

名画の謎 ギリシャ神話篇 (文春文庫)


☆「愛と裏切りの作曲家たち 」(光文社知恵の森文庫)

愛と裏切りの作曲家たち


☆「マンガ西洋美術史03」(美術出版)

マンガ西洋美術史03 「市民社会」を描いた画家」 ブリューゲル、フェルメール、ホガース、ミレー、ゴッホ



☆「マンガ西洋美術史02」(美術出版社)
マンガ西洋美術史02「宗教・神話」を描いた画家  ボッティチェリ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ティツィアーノ、エル・グレコ、ルーベンス


☆「危険な世界史 運命の女篇」(角川文庫)

危険な世界史 運命の女篇 (角川文庫)

☆「マンガ西洋美術史01」監修(美術出版社)
マンガ西洋美術史01 「宮廷」を描いた画家 ベラスケス、ヴァン・ダイク、ゴヤ、ダヴィッド、ヴィジェ=ルブラン


☆「ヴァレンヌ逃亡」(文春文庫)
ヴァレンヌ逃亡 マリー・アントワネット 運命の24時間 (文春文庫 な 58-2)


☆「名画で読み解く ロマノフ家12の物語」(光文社新書)2刷になりました♪

名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書)   

☆「印象派のすべて」(宝島社別冊ムック)
印象派のすべて (別冊宝島 2200)

☆「名画に見る 男のファッション」(角川書店)
名画に見る男のファッション (単行本)

☆「橋をめぐる物語」(河出書房)
中野京子が語る 橋をめぐる物語

☆「中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇」(文藝春秋) 3刷になりました♪
中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇

☆「残酷な王と悲しみの王妃」(集英社文庫)4刷になりました♪
残酷な王と悲しみの王妃 (集英社文庫)

☆「怖い絵」(角川文庫) 単行本に新しく書き下ろし2作を加え、全22作品です。6刷になりました♪
怖い絵  (角川文庫)

☆「はじめてのルーヴル」(集英社)2刷になりました♪
はじめてのルーヴル (集英社文芸単行本)

☆「名画の謎 旧約・新約聖書篇」(文藝春秋) 5刷になりました♪
中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇

☆「怖い絵 死と乙女篇」(角川文庫) 5刷になりました♪
怖い絵  死と乙女篇 (角川文庫)

☆最新刊「名画と読む/イエス・キリストの物語」(大和書房) 3刷になりました♪
名画と読むイエス・キリストの物語

☆「危険な世界史 運命の女篇」(角川書店) 2刷中。
危険な世界史 運命の女篇

☆「危険な世界史 血族結婚篇」(角川文庫)6刷になりました♪
危険な世界史 血族結婚篇 (角川文庫)

☆「怖い絵 泣く女篇」(角川文庫)~「怖い絵2」の文庫化~ 11刷になりました
怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

☆『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(文藝春秋) 6刷になりました♪
中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇


☆「印象派で「近代」を読む ~光のモネからゴッホの闇へ~」(NHK新書)4刷になりました♪
印象派で「近代」を読む―光のモネから、ゴッホの闇へ (NHK出版新書 350)

☆「『怖い絵』で人間を読む 」(NHK出版生活人新書) 11刷になりました♪
「怖い絵」で人間を読む 生活人新書


☆光文社新書「名画で読み解く ブルボン王朝12の物語」 6刷になりました♪
名画で読み解く ブルボン王朝 12の物語 (光文社新書)

☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書) 19刷になりました♪
名画で読み解く ロマノフ家 12の物語 (光文社新書)

☆「芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)
芸術家たちの秘めた恋 ―メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代 (集英社文庫)

☆「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫) 2刷になりました♪
おとなのための「オペラ」入門 (講談社+α文庫)

☆「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
恐怖と愛の映画102 (文春文庫)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。
歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫)



☆以下の単行本は絶版としました。文庫本をお求めくださいまし~

☆「怖い絵」16刷中。怖い絵

☆「怖い絵2」、9刷中。 怖い絵2

☆「怖い絵3」 6刷中。 怖い絵3










 


 
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5 コメント

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都留にいらしていただけるなんて! (ゆきんこ)
2015-11-20 01:50:22
コメント失礼いたします。

わたしは、都留文科大学の初等教育学科に通う、4年生の学生です。

先々週もコメントに書かせていただきましたが、私は高校生の時に中野先生の「残酷な王と悲しみの王妃」に出会い、それから先生の大ファンになり、大学生になってからも、専攻とは関係がありませんが、世界史や芸術の世界に魅了されつづけています。

そんな世界史や芸術の世界との素敵な出逢いをさせてくださった、中野先生が自身の通う大学で講演をしてくださると知り、とてもとても嬉しい気持ちでいっぱいです( ; ; )。
ポスターを観た時には恥ずかしながら感動のあまり涙が…( ; ; )

私的なことばかり書いてしまい申し訳ありません。本当に楽しみなもので、つい…( ; ; )

都留は自然に囲まれたとても小さな田舎町ですが、先生がお越しくださることを心から楽しみにしております。

P.S.12月の都留は標高のせいか、朝晩とっっっても寒いので、暖かくしてお越しくださいね。
返信する
Unknown (ゆきんこさん(kyoko))
2015-11-21 09:28:07
 なんと、先日初めてコメントいただいたばかりで、ご縁ですね~ 講演のとき、お声かけください♪ 
 都留は寒いとのこと。あやうく東京の感覚で出かけるところでした。冬コートを着てゆきます。
 あいにく翌日にTV収録が入ってしまったので、町を見る時間もなくすぐ帰らなくてはならないのが残念。
返信する
ゆきんこさん、中野先生 (ササイ)
2015-11-21 11:16:51
いつもありがとうございます。
都留文科大学の比較文化学会事務局員の笹井です。
たまに先生のブログを拝見しておりましたが、こんなに喜んでくれている先輩がいて企画した私たちも嬉しいです。
事前勉強会もありますので、ゆきんこさんも、是非お越しください。

今週、ポスターを貼りましたが、学生や先生の反応がとても良いです。

もしかすると、教室が2101教室という200名入る所に変更になるかもしれません。
申し訳無いんですが、その場合、メールで中野先生にまたご連絡致します。
返信する
Unknown (carpediem)
2015-11-21 20:44:19
どんな言語でもキレイに聞こえるかは、その言葉を話す人によると思うので、私も人前で話す仕事の為キレイな日本語を話さないといけないなと思っています。でもフリードリヒ大王に限らずフランス語を話すことをひとつの教養・ステイタスと思っている欧米人・その他も今だに多い気がします。例えばモロッコ人はアラビア語の方言のモロッコ語で話すよりフランス語を話す方が自分の教養の高さを示すようです。その為ガイドさんはフランス語で話す方がいろいろと交渉事がうまくいくので、ホテルなどではフランス語で話しています。
私は英語に関しては、どんなところに行ってもサバイバル出来る為に英語くらいは話せたほうがいいのではないかと思っています。母国語並みになるのは8歳までに話した言語で、8歳~12歳の間は母国語になるか第二外国語になるかの端境期だそうです。早く勉強するに越したことはない…!?
返信する
Unknown (ササイさん&carpediemさん(kyoko)
2015-11-24 09:58:06
ササイさん
 教室変更の件、了解。
 大勢の方に来ていただけると嬉しいです。ただそうなると質問コーナーが収拾つかなくなりませんか?それがちと心配。

carpediemさん
 モロッコ人の事例、知りませんでした。アメリカでは相変わらずフランス語のできることがものすごいステイタスですよね。ハリウッド映画もそれを踏まえているので微笑ましい?ほどです。
 日本の教育に関しては、わたしはやっぱり読み書きソロバン(日本語と暗算能力)が先だと思っているんですよね~
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