中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

サトゥルヌスとお岩さん

2010年02月23日 | 朝日ベルばらkidsぷらざ
 朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン<映画篇)」第33回目の今日は、「和製ホラーの原点」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2010/02/post-59a8.html#more
 怖い怖い「四谷怪談」について書きました。

 さて、昨晩のNHK教育「知る楽」の「『怖い絵』で人間を読む」第4回も、お岩さんと同じくらい怖いサトゥルヌスについてでした。

 撮影はそれまでの京都から鳴門へ移動。スタッフさんたちは前日の夜にロケバス(ものすごい機材の量なのです)で現地入りし、翌朝は最終回のドラマ作り。わたしは2日で3本も撮って、めちゃくちゃ疲れたので、その日は京都のホテルで泊まって、翌朝、急行バスで鳴門入り(あんがい近いのでびっくりしました)。

 寒い京都に比べて、鳴門は暖かくて良かった。瀬戸内海が見えて嬉しいわたし。

 しかし実はその朝、ひとりパニックに襲われていたのです。というのは、この8回分を年末の5日間で撮るという大強行軍なのですが、京都入りの前夜までわたしはテキスト書きで死に物狂いだったので、旅行準備がなかなかできず、あたふた衣服を詰めたのですが・・・

 なんと7着しか持ってきていないのに気づいたのです!!うわあ、どうしよう、となったのが、これから鳴門行きのバスに乗るというころ。10時10分発のバスなので、デパートもあいていなくて、京都駅をうろつきまわった末、ユニクロでセーターをやっと手に入れました。あ~あ、なんてことでしょう。めげました。。。

 それはいいとして、鳴門国際美術館は写真もオーケーなので、昨日のテレビではやっとわたしの顔も明るく撮れていて、ほっとしました。

 なにしろ京都ではほんものの名画なので、熱を持たない特別のライトを使いました。絵を傷めないようにということですが、そうなると人間の顔によけいな影が出て、ものすごく写りが悪くなってしまうのです。

 某女優さんは、同じシチュエーションで、「こんなライトならわたしはやりません!」と拒否したというほどなのです。女優じゃないわたしはそうも言えず、ひどい顔に写っているなあ、と3回目までは正直すごく嫌でした。

 それがやっと今回からはふつうのライトになったので、顔の造作は今さらどうにもできませんけど、少なくともいつものわたしに近い顔になって、やれやれ、という感じです。照明の力というのは大きいんですね~

 でももちろん主役はゴヤの絵です。迫力でしたね!

 「我が子を喰らうサトゥルヌス」については『怖い絵』に、傑作「一八〇八年五月三日」(番組ナレーションで一部読み上げられました)は『怖い絵3』に詳しく書きました♪


☆「知る楽」のテキストはこちら(クリックするとアマゾンへゆけます) 2刷になりました。ありがとうございます♪

探究この世界 2010年2-3月 (NHK知る楽/月)


☆「THEハプスブルク」展へいらっしゃる前にはぜひ拙著で予習もお願いします。肖像画に描かれた人々の運命を知ると、絵はきっとまた新たな魅力を増すはずです。

☆「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」(光文社新書)、11刷になりました♪
名画で読み解く ハプスブルク家12の物語 (光文社新書 366)



☆最新刊「恐怖と愛の映画102」(文春文庫)
 恐怖と愛の映画102 (文春文庫)


☆「怖い絵3」♪ シリーズ完結篇です。5刷中♪

怖い絵3


☆「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫)
おとなのための「オペラ」入門 (講談社+アルファ文庫 D 61-1)

☆「歴史が語る 恋の嵐」(角川文庫)。「恋に死す」の文庫化版です。

歴史が語る 恋の嵐 (角川文庫 な 50-1)

☆「危険な世界史」(角川書店) 3刷になりました♪
毎日新聞での紹介⇒ http://mainichi.jp/enta/book/shinkan/news/20080903ddm015070149000c.html

危険な世界史

☆「怖い絵2」、8刷中。

怖い絵2

☆「怖い絵」15刷中。

怖い絵
怖い絵
posted with amazlet on 07.07.14
中野京子 朝日出版社 (2007/07/18)


コメント (10)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« マルガリータちゃんin NHK教... | トップ | 「死の島」in NHK教育「怖い... »
最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
観ましたよ♪ (山岸浅葱)
2010-02-23 10:19:37
凄く素敵に映ってましたよ!服も素敵でした♪
ところで私は鳴門に大塚国際美術館というそのような美術館がある事は全然知らなかったので、是非とも行ってみたいと思いました。本物を観ることは、もちろん素晴らしいですが、コピーでもそれが本物の実物大とかで展示されてるというところが驚きだし、素晴らしいです。
海外までいけなかったりするものにとっては、疑似体験が出来る素晴らしい美術館ですね♪
返信する
初めまして。 (loro)
2010-02-23 12:58:01
第3回のフェリペ・プロスペロ王子の話から見始めました。
本放送ではなく、2月21日(日)の夜に再放送する予定が組まれているのを番組表で偶然見つけて「ハプスブルク」という言葉に惹かれて番組を見ることにしました。
番組を見る前は、なぜプロスペロ王子の絵が「怖い」のかなと思っていましたが、なるほど、そういう視点で読み解くと中野さんのおっしゃるように恐怖を感じますよね。

今回のサトゥルヌスは、見た瞬間「怖い」と感じられる絵ですが、一番怖いのは「消された」部分ですね。
「そんな」ことになっていたとは・・・。
今この絵を見ても描かれていないので、余計に想像力をかき立てられます。

テキストを買って勉強しようと思ったのですが、在庫切れになっていて入手出来ません。とっても残念です。
テレビの方は最終回まで本放送で拝見します。
マリー・アントワネットとエリザベートの回も再放送してもらいたいところです。
返信する
やはり怖かったです (みるく)
2010-02-23 16:51:16
昨夜の放送を観ました。
やはり、サトゥルヌスの絵は怖くて直視できませんでした(苦笑)
恐怖と共に、慟哭のような悲しみも感じました。
他のゴヤの絵も迫力満点ですね!

大強行軍、お疲れ様でした。
放映の裏側はいろいろ大変なのですね。
鳴門の素晴らしい景色を満喫されて、よかったですね♪

返信する
絵画と神話 (うさこママ)
2010-02-23 22:13:53
「サトゥルヌス」は勿論、恐ろしかったですが、冒頭に一瞬、映ったボッティチェッリ「ビーナスの誕生」が、ここから生まれたとは到底信じられず、夢の様に美しい絵だけに一層、背後に隠れた怖さが深まりました。スケッチ集や「黒い絵」もはっきり見れて、テキストと「怖い絵」シリーズを読んでから、番組を見ると、より面白さが増すのを感じました。西洋絵画を見る上で、聖書と共に神話の知識不足をよく感じるので、「オール読物」に連載なさっている「絵画で読む神話」が早く単行本化されると良いのですが、かなり先の話ですね。
大塚美術館の「ゴヤの家」の再現は、この美術館でなければあり得ないし、ろうそくの光での撮影はとても効果的でしたね。ぜひ、行って見たいです。
さっき、今夜ハイビジョンで放映される「フィリペ2世とエル・エスコリアル」の予告を見ましたが、我が家はデジタルTVを買ったばかりで、ハイビジョン放送が見れるのは来週からなので残念です。再放送されるのを期待しています。
返信する
Unknown (しずか)
2010-02-23 22:22:56
私も大塚国際美術館のことは全く知りませんでした。
こんなところがあったのですか!?
ヨーロッパの有名な美術館はほとんど廻って来たのですが、日本でたとえコピーでも実物大の名画に触れ合えるのはいいことですね。
機会があったら鳴門まで行ってみたいです。
返信する
Unknown (みなさま(kyoko))
2010-02-24 10:44:36
山岸浅葱さん
 ぜひぜひいらしてください!巨大美術書の中へ入り込むようにすばらしいです。レンブラントの自画像がずらっと並んでいたりして、壮観ですよ。
 
loroさん
 ご訪問ありがとうございます♪
 テキストの件、ほんとにごめんなさい。NHK出版の担当者さんもこのコメント欄を読んでくださっていて、謝ってらっしゃいました。明日からまた書店に並ぶはずですので、どうぞお手にしてくださいましね。

みるくさん
 夜にテレビで大アップになると怖いですよね~。この撮影のときも、すぐ後ろにこの絵があると、本物じゃなくてもちょっとビビりました。。。

うさこママさん
 「オール」も読んでくださり、嬉しいです♪
 今ちょうど10回なので、あと10回分ないと書籍の分量にならないかなあ。でも来年は出せるといいなと思っています。

しずかさん
 皆さん、最初は本物じゃないし、と軽く思うのですが(かく言うわたしもそうでした)、行けば絶対楽しめます!音楽も、コンサートが一番にきまっていますが、だからといってCDを聴かない人はいませんものね。
 どうぞ一度いらしてみてくださいね!
返信する
第4回 (ayachin)
2010-02-24 14:13:21
テレビとテキストを併用して、楽しく拝見いたしました。
私の順番は、まずテレビを見て、それからテキストを読んでいます。

テキストの「音声を消したホラー映画」の例えは、とてもよくわかりました。
私も、先生がおっしゃるように、「大いなる何もの」かの存在を信じます。

その「何もの」かが、ゴヤという天才画家の手を借りて、後世の私たちに伝えたかったもの。
私たちは、その「何もの」かの真意を、しっかりと受け取らなければならないと思いました。

ゴヤの絶筆、「ボルドーのミルク売り娘」についての記述も、とても印象に残りました。
番組の主旨から外れますが、この絵でエンディングでもよかったかなぁーと思ったくらいです。
返信する
Unknown (ayachinさんへ(kyoko))
2010-02-25 17:59:30
 テレビの場合、あまり多くのことを詰め込むと散漫になるようです。ひとつかふたつに絞って、それで押し通すことで視聴者の印象に強く残るみたい。これは授業の場合と同じだなあと感心しています。その代わり、見た人がみんなテキストや『怖い絵』で補足してくれたらいいな、と♪
返信する
観ました! (ケンジロー)
2010-02-27 20:29:59
はじめまして。『怖い絵』シリーズ大変興味深く読ませていただきました。番組の方も,チャンネルを回していたら偶然たどりついたので,つい最近からなのですが毎回楽しみにしています。

自己紹介が遅れました。私は大塚国際美術館と同じ島(?)にある教育大学出身で,大学の授業で何度か美術館に行きました。圧巻ですよね!現在は他大学に進学して院生をしながら高校の非常勤講師で世界史を教えています。

世界史は,生徒にとって時間的にも空間的にも遠くて,具体的なイメージをもってその時代の特色を理解させることの難しさを日々痛感しています。また,それゆえに教師がつい何もかもしゃべってしまい,生徒の探究心を削いでいる。

そんなふうに思う私だから思うのかもしれませんが,中野さんの言う「怖さ」って,そのまま授業での「なぜ」につながるのではないかと。ドガの『エトワール,または舞台の踊り子」にしろ,『マリー・アントワネット最後の肖像』にしろ,そこには何が,どのように描かれているかを問うていくと,「舞台そでには普通踊り子しかいないはずなのに…」「マリー・アントワネットってもっときれいじゃなかったかな」という疑問に行きつきます。じゃあこの絵を取り巻く当時の社会や出来事はどんなだったのだろうと。

生徒の,絵の怖さへの嗅覚が育てばいいなぁ,なんて思っています。
返信する
Unknown (ケンジローさんへ(kyoko))
2010-03-01 14:54:51
 ご訪問ありがとうございます♪
 >中野さんの言う「怖さ」って,そのまま授業での「なぜ」につながるのではないかと
 ⇒そうなんです!!まさにそう感じてもらえたらいいなあ、と思っています。「なぜ」がなければこの世の何ひとつ、面白くありませんもの。短い授業時間で困難とは思いますけど、生徒さんたちひとりひとりにそれぞれの「なぜ」を植えつけてくださいね!
返信する

コメントを投稿

朝日ベルばらkidsぷらざ」カテゴリの最新記事