中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

マルガリータちゃんin NHK教育「知る楽」

2010年02月16日 | 音楽&美術
 昨夜は「知る楽」第三回目でした。
 スペイン・ハプスブルク家の落日に、数奇な運命を負って生まれてきた王女マルガリータ、王子プロスペロについてお話しました。

 名だたる名品が大画面いっぱいにくりひろげられたので、きっと堪能していただけたのではないでしょうか。

 冒頭のカルロス一世(=カール五世)とフェリペ二世の肖像は、イタリア人画家ティツィアーノです(昔の小説にはよく「ティツィアン」と表記されていました)。宮廷画家なので理想化はしているのですけど、恐ろしいばかりの人物把握ぶりですね!

 マルガリータ、プロスペロ、フェリペ四世は、スペインが誇るベラスケス。ゴヤは「ベラスケス、レンブラント、そして自然が自分の教師」と言っていました。

 画面にはプラド美術館で「ラス・メニーナス」の前に人だかりがしているシーンがありました。この大傑作は門外不出なので、マドリッドへ行きたい!と思った人も多いのでは。

 おとなになってからのマルガリータを描いたのは、ヤン・トーマスといってあまり有名な画家ではありません。でも彼女が幸せそうに微笑んでいるので、わたしはけっこう好きな絵です。

 お家断絶の幕を閉じた最後の王、カルロス二世を描いたのは(一見ベラスケス・タッチですけど彼はこのころもう亡くなっていますから)、カレーニョ・ミランダという宮廷画家です。

 血族結婚くり返しの果てに滅んでいったスペイン・ハプスブルク家については、『怖い絵2』と『ハプスブル家12の物語』で詳しく取り上げたので、ぜひお読みください。導入の絵は、前者が「カルロス二世」、後者が『ラス・メニーナス』です。
 プロスペロ王子の子ども服については『怖い絵3』で書きました。

 来週はいよいよ、誰が見ても、何の説明もいらず、掛け値なしに怖い、ゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」です。お楽しみに!


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15 コメント

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泣けました・・・ (トクちゃん)
2010-02-16 09:45:21
昨晩の「スペイン・ハプスブルク家 運命の子どもたち」・・・泣けました・・・
ここ1年、日本にやってきた可愛いマルガリータちゃんの絵を思い出し、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を聴いても泣けます♪
私もマルガリータちゃんの新婚時代?!の夫レオプルト1世と対になっている絵の優しい表情、好きです。昨夜友人からは「平民で良かった・・・」と感想メールが。
近いうちに実家の父と京都へ行って来ます。
「怖い絵」で親孝行が来ます。
来週も楽しみです・・・絶対怖いこと間違いないけど・・・!
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興味深く拝見しました (hos)
2010-02-16 15:30:01
実際に、プラド美術館でそれぞれの絵を見たことがあります。ラス・メニーナスやマルガリータの絵は覚えていますが、カルロス2世の絵もあったはずなのに記憶に残っていませんでした。その時にこの話を知っていたら、もっと興味深く鑑賞できたのにと、とても残念に思いました。いつかまた見に行けたらと思います。
カルロス2世の絵を見ていて、目元の感じが、ダウン症の症状と似ているような気がしたのですが・・・。

怖い絵シリーズ、これから読んでみようと思っています。
次回も楽しみにしております。
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しっくりきました。 (kiki)
2010-02-16 21:41:47
何気なくタイトルが気になり見たのですが、あの絵にあんな歴史背景があったなんて。何となく以前からマルガリータの肖像画にスペインなのに凄い金髪だなとなんとなく違和感がありました。そうか~なるほどと気持ちがしっくりしました。次回のサトゥルヌスも興味あり~です。
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Unknown (しずか)
2010-02-16 22:07:44
私も昔スペインを周遊した時
プラド美術館に行ったのですが
あまり時間に余裕がなく、駆け足で
見た記憶があります。
絵はたっぷり時間をとって
鑑賞するべきものですね。
その時もっと絵に対する知識が
あったら良かったのに・・・
思うこの頃です。
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お変わりない (sukemaro)
2010-02-16 22:09:30
約20年ぶりに動いて話す先生を拝見しましたが、お変わりないので驚きました。
「怖い絵」ももちろん読みましたが、先生の話を聴くとより引き込まれますね。
以降の回もとても楽しみです。
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運命 (山岸浅葱)
2010-02-17 00:03:01
生まれくる子供には、何の罪もないのに…その選択をせざるをえなかったスペインハプスブルク家…その犠牲となった子供たち…
なんとも苦しくなってしまいます。ただ、フェリペ4世がベラスケスを気に入り、宮廷画家において、数々の残された作品を観られるということには、ただただありがたく、幸せに思うけれど…。
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世界史の授業 (うさこママ)
2010-02-17 00:34:29
私も以前、プラドやエル・エスコリアルを訪ね、厖大なコレクションや壮大な建築に圧倒され、超大国だったスペインを肌で感じたつもりでしたが、ご著書で知った絵の数々にまつわる背景を知った今、スペイン・ハプスブルク家という強烈な一族とベラスケスを、ぜひとも又見に行きたいです。
世界史の授業を思い返すと、神聖ローマ帝国やハプスブルク帝国が登場したり、カール5世とカルロス1世が同一人物という辺りで、混乱してしまい、分らなくなった気がします。
「怖い絵」や「危険な世界史」を副読本として使ったら、頭に入りやすく、もっと歴史に興味がわいたのに……、と思ってしまいました。特に「危険な世界史」には、短くて印象的なエピソードが沢山盛り込まれているので、人物や事件、出来事を印象付ける味付けになって、効果的なのでは、と世界史の先生達に提案したい気がしています。
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Unknown (みなさま(kyoko))
2010-02-17 10:31:58
トクちゃんさん
 マルガリータやプロスペロを見ると、ほんと「泣けます」よね~
 お父様と美術展めぐりだなんて素敵ですね!!

hosさん
 ご訪問、ありがとうございます♪
 プラドは名品揃いなので、案外、見逃してしまう絵ってあるんですよね。カルロス二世はだいぶ前に、ゴヤの「巨人」(弟子の作らしいですが)といっしょに来日したんですよ。やはり異彩を放っていました。
 「怖い絵」シリーズ、ぜひお読みくださいまし!

kikiさん
 日本人にとって「異国の王」というのは盲点かもしれませんね。イギリス王室もドイツ系ですしね。
 次回のゴヤもお楽しみください♪

しずかさん
 プラドやルーヴルは巨大すぎ、作品が多すぎて、こってりフランス料理フルコースという感じですから、胃にもたれますよね。ウィーン美術史美術館くらいの規模で、しかも名品ばかりというのがちょうどいいかも!

sukemaro君
 いやあ、さすがに20年たつと変わるでしょ。でもお世辞にしても嬉しいわん。sukemaro
君「優」、間違いなし、ですね!

山岸浅葱さん
 戦争やれば連戦連敗、狩猟狂いに女狂いの無能王でしたが、祖父フェリペ二世の血をひいて、審美眼はなかなかだったんですよね。よくぞベラスケスを見出した、という感じです。

うさこママさん
 友人情報ですが、誰かのブログで実際に高校の授業で「怖い絵」や「危険な世界史」を使っている、と書いてあったそうで嬉しいな、と思っていたところです。
 歴史は年号で教えられても、とうてい覚えられるものじゃありませんよね。授業時間数が足りないので、そうなってしまうのかもしれませんが。
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京都新聞 (ayachin)
2010-02-18 10:37:33
今朝の京都新聞朝刊のテレビ欄「テレびゅー」というコーナーで、
「知る楽」の第4回が、かなりのスペースを使って採り上げられていました。

なんと、「サトゥルヌス」の絵を背景に語る、中野京子先生の写真付きです!
一地方紙の単独記事かもしれませんが、これでまた多くの方がご覧になると思います。

妹にも「怖い絵」を薦めているのですが、かつて兵庫県立美術館に勤務しているときに、
ちょっと霊的な体験をしたことがある?とかで、ビビッて気乗り薄のようです。
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Unknown (ayachinさんへ(kyoko))
2010-02-19 17:59:30
 お知らせ、ありがとうございます♪
 さっそく京博の担当者さんに頼んで、取り寄せてもらうことにしました。嬉しいな☆
 兵庫県立美術館といえば、去年、わたしも講演をしましたが。。。怪奇現象はとりあえずなくて、ホッ。
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