中野京子の「花つむひとの部屋」

本と映画と音楽と。絵画の中の歴史と。

カルメンがホセに投げつけた花は?

2006年03月13日 | 音楽&美術
 「わたしは目をあげ、あの女を見ました(・・・)。一目見て、嫌な女と思いました」(メリメの原作から)

 ホセがカルメンに初めて会ったシーンです。「嫌な女」と思ったのは怖いから。この女性によって、今までの世界ががらりと変わると予感したからです。嫌だと感じた瞬間から、恋はもう始まっているのです。

 それが証拠にホセは、カルメンが投げつけた花をこっそり拾い、ポケットに隠す。しかも何日も肌身離さず持っていて、彼女をしのぶよすがとしました。

 オペラの舞台では、真っ赤な薔薇が使われることが多いようです。見映えがいいし、カルメンの燃えるようなイメージにもぴったり。闘牛のときの赤い布と同じで、観客自身もこの色に反応して興奮するからでしょう。

 ところが原作は違います。カルメンが口にくわえていたのは、野生のカシア。色はおそらく淡い黄色。かなりみすぼらしい花でした。その代わりこの花は、薔薇のようにすぐ萎れることはないし、「枯れてなお芳香をはなつ」強さがある。まさにカルメンにぴったりの花といえるかも。

http://www.saela.co.jp/

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5 コメント

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Unknown (遅咲くら )
2006-03-14 08:18:50
 そういえば、今を去ること、ン十年まえ、中学時代に初めて「カルメン」という映画を観たときは、バラではなかったような……しおれた花だったような気がします。

 そのころは、恋のなりゆきはわからず、どうして牛をあんなふうに殺すのか、かわいそうではないか、と家族に言って困らせた記憶があります。
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カルメンの花 (703x)
2006-05-03 21:27:11
大学時代に先生の「西洋音楽史」を取っていた703xと申します。

今こちらのブログを偶然発見して大興奮です。



「カルメン」ですが、去年の夏にボヘミア歌劇場の来日公演を観に行きました。

プログラムに「運命の女は真紅の花を投げつけた」と書いてあったのに、舞台で投げられていたのが白い花で、心の中で思いっきり突っ込んだ覚えがあります(笑)

でも赤いバラを投げる、なんて決まりはなかったのですね。

面白いお話をありがとうございます。
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Unknown (703xさんへ(kyoko))
2006-05-03 22:57:57
おやおや、こんなところで再会とは嬉しいこと!今はもう社会人として活躍中と思います。

またときどき訪問してくださいね。
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おはようございます (ぽえむくん)
2016-05-08 03:14:21
赤い薔薇の説明にと・・検索してましたら、
ここにたどり着きました。幸いに、カルメンの
赤い薔薇の由来を、知ることができ、嬉しいです。
小説「カルメン」は、遠い昔に読んだことがあります。
参考にさせて頂きます、ありがとうございました。
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Unknown (ぽえむくんさん(kyoko)
2016-05-09 11:21:21
 ご訪問、ありがとうございます♪
 カルメンのオペラと原作の違いについては拙著「おとなのためのオペラ入門」(講談社+α文庫】に詳しく書きましたので、読んでみてくださいね~
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