最新刊『編集会議』11月号の「特集;書店で目立つ!」には、グラフィックデザイナー奥定泰之氏が近年手がけた7冊の本の装丁が紹介されています。ぜひお読みください。
どの装丁もすばらしいですが、とりわけ斬新なのは『わたくし率イン歯ー、または世界』(川上未映子著)。もともとタイトルが「え?」なのですが、さらに表紙がそれを強調しています。7度左に傾いた大きな文字が、まるで叫んでいるかのようでインパクトがあり、しかも「世界」の「界」の字が帯に少し隠れて不安感を漂わす。まさに「書店で目立つ」本になっています。
『石の葬式』(パノス・カルネジス著)の字体もすばらしい。これは「中国の墓石に刻まれた文字をもとに」、奥定氏自らが書き起こしたのだそうです。「タイトルに用いた金色をところどころ剥がすことで「ゴツゴツ感」を出し、石を想起させるという凝りよう」がみごとな効果を上げています。
毎日200冊の新刊が出るという凄まじい出版事情ですから、本好きでさえ書店でどれを選んでいいか迷ってしまいます。そんな本の洪水のなかオーラを発するには、装丁の重要度がますます高まっていくでしょう。
『怖い絵』の装丁も、奥定氏が手がけてくださいました。ラ・トゥールの絵画「いかさま師」の一部を使い、タイトルは「怖い」と「絵」の間を大きくあけることで独特の余韻と怖さをかもし出しています。字体はA1明朝体で、これは「この字体の持つデジタルフォントらしからぬ人間っぽさ、口から出た言葉っぽさが、本の雰囲気にぴったりだった」からとのこと。
画期的なのは帯の使い方で、これは本の3分の2の太さを持ち、ラ・トゥールの女性の横目のすぐ下まできています。白い透けた紙を使用しているので、邪悪な横目の下がどうなっているかぼんやり見え、それがまたいっそう謎を深めます。この本はいろんな反響をいただいていますが、「装丁がすばらしい」という声がとても多いのです。
2刷以降の帯は、太さが通常のものに変わりました。今度は帯の「絵」という文字の下に、真っ赤な血しぶきのような塊が散り、女性の白い胸、背後の黒い闇、文字の鮮やかな赤と、実に美しい!
著者というものは、たいていそうだと思いますが、自分の本がいったいどんな表紙にくるまれるのか、出来上がるまでとても不安なものなのです(装丁が悪いから売れなかった、と文句を言う作家は少なくありません)。ですから自分のイメージどおりの、いえ、それ以上の装丁で自作が完成したとき、つまりこの『怖い絵』のようなとき、「わお!!」と嬉しくて飛び上がってしまうのです♪
今後の日本のグラフィック界を引っぱってゆくであろう奥定氏の、今後ますますのご活躍を期待しています。
☆朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第83回目の今日は、「アル中&ゲキ太り女王アン」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/10/a_2d9f.html#more
☆「怖い絵」、おかげさまで3刷りになりました。ありがとうございます♪
☆☆女性誌「eclatエクラ」11月号228ぺージに、斉藤美奈子さんによる書評が載りましたのでごらんください。
☆マリーもお忘れなく!(ツヴァイク「マリー・アントワネット」(角川文庫、中野京子訳)
![マリー・アントワネット 下 (3)](http://images-jp.amazon.com/images/P/4042082084.09.MZZZZZZZ.jpg)
どの装丁もすばらしいですが、とりわけ斬新なのは『わたくし率イン歯ー、または世界』(川上未映子著)。もともとタイトルが「え?」なのですが、さらに表紙がそれを強調しています。7度左に傾いた大きな文字が、まるで叫んでいるかのようでインパクトがあり、しかも「世界」の「界」の字が帯に少し隠れて不安感を漂わす。まさに「書店で目立つ」本になっています。
『石の葬式』(パノス・カルネジス著)の字体もすばらしい。これは「中国の墓石に刻まれた文字をもとに」、奥定氏自らが書き起こしたのだそうです。「タイトルに用いた金色をところどころ剥がすことで「ゴツゴツ感」を出し、石を想起させるという凝りよう」がみごとな効果を上げています。
毎日200冊の新刊が出るという凄まじい出版事情ですから、本好きでさえ書店でどれを選んでいいか迷ってしまいます。そんな本の洪水のなかオーラを発するには、装丁の重要度がますます高まっていくでしょう。
『怖い絵』の装丁も、奥定氏が手がけてくださいました。ラ・トゥールの絵画「いかさま師」の一部を使い、タイトルは「怖い」と「絵」の間を大きくあけることで独特の余韻と怖さをかもし出しています。字体はA1明朝体で、これは「この字体の持つデジタルフォントらしからぬ人間っぽさ、口から出た言葉っぽさが、本の雰囲気にぴったりだった」からとのこと。
画期的なのは帯の使い方で、これは本の3分の2の太さを持ち、ラ・トゥールの女性の横目のすぐ下まできています。白い透けた紙を使用しているので、邪悪な横目の下がどうなっているかぼんやり見え、それがまたいっそう謎を深めます。この本はいろんな反響をいただいていますが、「装丁がすばらしい」という声がとても多いのです。
2刷以降の帯は、太さが通常のものに変わりました。今度は帯の「絵」という文字の下に、真っ赤な血しぶきのような塊が散り、女性の白い胸、背後の黒い闇、文字の鮮やかな赤と、実に美しい!
著者というものは、たいていそうだと思いますが、自分の本がいったいどんな表紙にくるまれるのか、出来上がるまでとても不安なものなのです(装丁が悪いから売れなかった、と文句を言う作家は少なくありません)。ですから自分のイメージどおりの、いえ、それ以上の装丁で自作が完成したとき、つまりこの『怖い絵』のようなとき、「わお!!」と嬉しくて飛び上がってしまうのです♪
今後の日本のグラフィック界を引っぱってゆくであろう奥定氏の、今後ますますのご活躍を期待しています。
☆朝日新聞ブログ「ベルばらkidsぷらざ」で連載中の「世界史レッスン」第83回目の今日は、「アル中&ゲキ太り女王アン」⇒ http://bbkids.cocolog-nifty.com/bbkids/2007/10/a_2d9f.html#more
☆「怖い絵」、おかげさまで3刷りになりました。ありがとうございます♪
☆☆女性誌「eclatエクラ」11月号228ぺージに、斉藤美奈子さんによる書評が載りましたのでごらんください。
☆マリーもお忘れなく!(ツヴァイク「マリー・アントワネット」(角川文庫、中野京子訳)
![マリー・アントワネット 上 (1)](http://images-jp.amazon.com/images/P/4042082076.09.MZZZZZZZ.jpg)
![マリー・アントワネット 下 (3)](http://images-jp.amazon.com/images/P/4042082084.09.MZZZZZZZ.jpg)
「怖い絵」、いま読ませて頂いております。
帯は確かに秀逸でした!女いかさま師の目が異様に際立って、思わず「おお!」唸ってしまいました。
地域や時代が違えば、文化も違う。ドガの「踊り子」の絵やブリューゲルの「絞首台の上のかささぎ」など印象深かったです。
読んでくださっているとのこと、嬉しいです。
いろいろな媒体で感想をいただきますが、たまにブログでさんざんにけなされているのを目にすることもあり、著者としてほんとうにへこんでしまいます。しかもそういうのに限ってちゃんと読んでいなかったり、故意に誤読したり、「そんなことは知ってるよ」と自分の知識をひけらかしたり、あげくに全否定ですから、辛いものがあります。
愚痴ってごめんなさい。