経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

地域金融機関と知的財産

2013-06-16 | 知的財産と金融
 先日、熊本県信用保証協会さんの職員向け研修で、「金融業務に活かす知的財産の勘所」と題してお話をさせていただきました。経営支援や審査業務に活かせるようにとのリクエストに対応して、「元気な中小企業はここが違う!」のエッセンスに加え、知的財産と資金調達の関連についての総論的なお話(主に「知的財産と資金調達」の論文の内容)をさせていただきました。これまでも地銀・信金などで職員向けのセミナーを担当させていただく機会は多かったのですが、信用保証協会さんからお声掛けをいただいたのは初めてです。支所からも含めて全職員の半数近くの方が参加され、大変熱心にご聴講いただいたのが印象的でした。今回の研修を企画いただいたご担当のセクションが経営支援部ということで、審査の見方や評価云々のみでなく、保証先の中小企業の経営支援に活かしたいというご意向も強かったようです。
 地域金融機関の業務に知的財産が関連し得る場面としては、
(1) 知的財産を担保に徴する
(2) 知的財産の保有状況等の評価を与信判断に活用する
(3) 知的財産を切り口にした支援業務で顧客との関係を強化する
の3つが考えられます。わかり易くニュース性もあるのは(1)や(2)ですが、裾野の広さや本当の意味での実効性から、私が本命と考えているのは(3)です。
 わかり易くニュース性もあるとはいえ、(1)は費用対効果(=担保評価や担保管理にコストがかかり小ロットの融資の利鞘ではとてもペイしない)や担保としての性質(=知的財産の価値の変化は事業価値の変化に連動しやすいので担保処分が必要な事態が生じる際には担保価値も下がってしまいやすい)、(2)はほとんどの場合は与信判断に大きな影響がないという、いずれも構造的な問題をかかえています。一方の(3)は、たしかに直接的な効果をイメージしにくい取組みにはなるのですが、「知的財産」の捉え方によっては(=「特許権や商標権を保有する企業」ではなく「よりよい商品やサービスを提供するために他とは違う『何か』を生み出している企業」と捉える)対象企業の裾野が大きく広がるし、長期的にみれば企業体力の強化(=会社が元気になって収益力が向上する)による債権保全(収益力の強化で返済能力も増す)や、地域の活性化(=地域の企業が元気になって地域経済の活性化に寄与する)にも結びつくと考えられるからです。金融系の出版社である金融財政事情研究会から「元気な中小企業はここが違う!」を出版させていただいたのも、そうした意図によるものです。
 信用保証協会さんというと「保証のための審査=(2)」のイメージなので、今回お声掛けをいただいたのはちょっと意外だったのですが、(3)に対する意識も強いことを大変頼もしく感じました。社内研修等でお声掛けいただいたことは当然ながら普段はオープンにはしないのですが、知的財産と金融業務を結びつけることはおそらく自分の天命でもあり、こういったお話には今後も積極的に対応していきたいと考えているので、今回は熊本県信用保証協会さんのお許しをいただきブログに掲載させていただくことにしました。


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2 コメント

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頑張って下さい (的場成夫)
2013-06-19 12:26:39
 私も、以前から金融関係の方々には、

 1)、2)、3)を紹介し、1)、2)よりも、3)がお薦めです

と紹介してきましたが、なかなか興味を持っていただけませんでした。
 私なんぞがそういう紹介をしてもダメだった理由は、

  a)誰が発言したのか(属性、知名度など)
  b)その「誰」は信用できるのか(経歴、実績など)

という2点を考えれば(土生先生との比較をすれば更に)明らかです(笑)。

 『おそらく天命』とお書きになられていますように、a),b)共にお持ちの土生先生を今、時代が呼んでいる、という気がします。

 最新著作の『元気な中小企業はここが違う』を引っ提げ、これからもご活躍下さい!
楽しみにしております。
 影ながら応援させていただきたく、余計なコメントを投稿させていただきまして、失礼いたしました。
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Unknown (土生)
2013-06-19 13:43:59
コメント有難うございます。
(3)については、おそらくもっと具体的なやり方を示していかなければいけないのだと思います。
「天命」なんて大袈裟なことを書きましたが、的場先生ご指摘の(a)(b)は、まだまだまだまだ・・・です。とはいえ、三つ子の魂百までじゃないですが、同じ知的財産を扱うにしても、社会人になった初めの頃の経験を活かした切り口こそが、その人ならではの仕事に繋がるのではないかと思います。
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