経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

知財価値スコアリングの実用性

2007-08-27 | 知的財産と金融
 先週、金融に詳しい3名の弁理士の方(この業界では珍しい存在なので3名というのは凄い話ですが)と議論をさせていただく機会があったのですが、中小・ベンチャー企業への融資の際の「知財のスコアリング」が話題に上がりました。
 先日の記事で「トランザクションバンキング」について書きましたが、最近の中小企業融資では、財務データ等を入力するだけで自動的にスコアリングが行われ、これに基づいて融資を行うという審査業務の効率化が進められています。この傾向からすると、知財担保融資等を普及させるためには、なるべく現場の負荷をかけずに知財の担保価値等がスコアリングできるシステムが要求されるのではないか、という考え方です。
 確かに、効率性の点を考えるともっともな考え方のようにも思えますが、スコアリングというのは統計学の世界ですから、その効果を利用しようと思えば、相応の数量をこなさないと統計を利用した効果を得ることができません。中小企業融資をスコアリングに基づいて行うことができるのは、そのスコアリングに基づいて多数の融資を実行するから全体で見ると貸倒率も想定された範囲に収まってくる、というものであって、そもそも融資の件数が少なくては統計的手法も活きてこないでしょう。同じように、知財もスコアリングに基づいて担保融資等を行うというのであれば、大量の融資を実行しないと統計的手法の効果が得られないことになってきます。とすると、統計の信頼性が明らかにならない時点で大きなリスクをとるかという話になってくるため、なかなか前に進まないのは当然といえば当然の話です。
 やはり知財とファイナンスの融合は、個別対応せざるを得ない→非効率だから普及しない、というところから抜け出すことが難しいのでしょうか・・・


地域金融論―リレバン恒久化と中小・地域金融機関の在り方
多胡 秀人
金融財政事情研究会

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