経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

‘知的資産’に関する問題意識

2009-07-05 | 企業経営と知的財産
 セミナーの宣伝の延長で、‘知的資産’に関する問題意識を少々。
 知的資産の代表例としてよく挙げられるのが、人材、組織力、企業理念などですが、こうした要素が企業にとって重要なのは、あらためて‘知的資産’なんて言われなくても当たりまえのことで、これまでも十分に考えられてきたテーマであると思います。(特にシビアな経営の現場にいる人ほど)言葉を換えて議論することに何の意味があるのか、と思われることも少なくないのではないでしょうか。
 それはおそらくある意味真実であり、知的資産を語ることそのものを目的化した活動は、経営の現場からするとお勉強の世界のヌルい話でしかないでしょう。要は、知的資産の概念を企業活動において合目的的に利用できるかどうか。そこが知的資産の考え方が、企業にとって意味のあるものになるかどうかを分けることになる。その際に重要になるのは、人材だ、ノウハウだと抽象的なレベルの話に止めるのではなく、より具体的なその企業に固有の要素をどこまで掘り進めていけるかということと、それに対して具体的なソリューションを提供できるかどうかだと思います。
 例えば、必要な融資を受けるために自社の信用力をアピールすることが必要な場面で、単に「人材が強み」というだけでなく、そうした人材が育つ理由となっている採用基準や人事制度を特定し(それを何と呼んでもいいけれども‘知的資産’という概念で捉えておく)、その強みが組織的に生み出されるものであることを説明できれば、それは企業にとって合目的的な活動といえるでしょう。
 また、セミナーのテーマであるソフトウェアベンダーであれば、競争力の強化に取り組むために、成績の上がるチームと成績の伸びないチームの差異がどこにあるかを特定し(それを何と呼んでもいいけれども‘知的資産’という概念で捉えておく)、その差異となる要素を他のチームにも展開していくことは合目的的な活動といえるでしょう。
 要は、先にあるのは企業にとっての合目的的な活動であり、そこで扱うある概念(=競争力のコアとなる要素)を便宜的に‘知的資産’として整理することに意味があるのであって、学術的に整理された‘知的資産’の概念を企業に当てはめてどうこうしようとするわけではない。私個人としては、知的資産という概念を用いる意味をそのように捉えています。尤も、合目的的な活動先にありきというのは、価値評価然り、知財信託然りで、知的資産に限った話ではないでしょうが。

※ 知的資産をどうように考えればよいかについては、立命館大学・中森先生の方法論御活動が大変参考になります。


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