経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

見られて伸びる、期待されて伸びる

2014-01-10 | 企業経営と知的財産
 「活かすべきは『休眠特許』ではなく『開放特許』」のエントリに書きましたが、今年度は、大企業の開放特許を中小企業にライセンスして新しいビジネスを創出する、いわゆる「知財マッチング事業」に関する調査事業のお手伝いをさせていただいています。その関係で年末に、ライセンスを受けて製品開発を行った中小企業2社を訪問させていただく機会がありました。
 その話の前に、この「知財マッチング事業」について、眠れる資産=大企業の「休眠特許」の有効活用する、といった文脈で説明されていることがありますが、「活かすべきは『休眠特許』ではなく『開放特許』」のエントリに書いたとおり、それは明らかな誤解です。対象となる特許は、休眠しているかどうかではなく、開放されている(=ライセンスしてよい)かどうかが条件であり、大企業自身が利用している特許も含まれます。というか、ライセンスを受ける中小企業からすると、大企業も使っている=用途がイメージしやすい&製品化しやすいステージにある、といった特許のほうが好ましく、自ずと「休眠していない特許」が対象になることが多くなっています。
 さて、その2社を訪問したときの話ですが、こういうお話をされていたことが大変印象的でした。
「この事業でライセンスを受けて製品を開発したことがきっかけになって、当社を訪ねてこられる人の数がとても多くなった
「ライセンスを受けて開発した製品が各所で取り上げられたことがきっかけで、『こういうことはできないのか?』というリクエストがいろいろ入ってくるようになった
 いずれもライセンスによる直接の効果ではありませんが、中小企業にとっては大変意味のあることであるはずです。訪問する人の数が増えればビジネスチャンスも増えるだろうし、訪問すれば社内を見学することも多いので、そこで働く社員の皆さんには「見られている」という意識が仕事へのモチベーションを高めることにつながる。リクエストが増えることも同様に、ビジネスチャンスの拡大につながり、「期待されている」ことがモチベーションにプラスにはたらく。
 おそらく多くの中小企業にとって、コピー商品に対処する、知財権の侵害リスクに備えるといったこと以上に、ビジネスチャンスの拡大やモチベーションの向上は、より一般的かつ優先度の高いテーマであるはずです。中小企業と知的財産の関わりを考える際に、こうした側面もしっかりと意識すべきだということは拙著(元気な中小企業はここが違う!)にも書いたとおりですが、自社で特許等を取得して自信をつけるということだけでなく、大企業の開放特許のライセンスを受けて自社製品を開発するというパターンでもそうした効果が生じ得るわけであり、これもまた知的財産のもつ可能性の1つといえるのではないでしょうか。

 知的財産というオンリーワンの素材を利用して自社の強みを表現することによって、注目される機会が増えていく。そして、見られて伸びる、期待されて伸びる、というプラスのサイクルが生じてくる。
 そうした狙いで今年度もう一つお手伝いさせていただいているのが、横浜市の知財みらい企業支援事業で行われている「知財情報を活かして自社の強みをPRしよう」という取組みです。具体的には、会社をPRするコンテンツ(動画・パンフレット等)を製作し、その中で会社の独自性や強みを知財情報を使ってわかりやすく説明しよう、という試みで、昨秋に参加企業の皆様と何度か検討を重ねて、現在コンテンツを製作中です。その取組内容も含めて、2月7日(金)にテクニカルショウヨコハマの併催行事として開催される横浜市知財経営促進セミナーでお話させていただく予定ですので、中小企業の知財業務で何か新しいことをやってやろう、という気合いの入った皆様、ぜひご意見をお聞かせください。ご参加をお待ちしております。

 2月7日(金)10:00~12:00 横浜市知財経営促進セミナー「社長も気づいていない 会社を元気にする知財活動の秘訣」
  【場所】 パシフィコ横浜アネックスホール(展示会場2階)
 詳細はこちら → http://www.tech-yokohama.jp/tech2014/cosp.html#cosp04


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