経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

リレーションシップパテントオフィス

2007-08-19 | 書籍を読む
 「地域金融論」をとても興味深く読んでいます。4年ほど前から金融庁主導で、地域金融機関(地方銀行や信金、信組)の戦略として「地域密着型金融(リレーションシップバンキング)」がキーワードになっており、取引先への経営支援や資金調達の多様化という部分で、知的財産もいくらか関係してくると思われます。

 それはそれとして、地域金融機関の抱える問題やその対策について読んでいると、何やら「地域金融機関」が「中小特許事務所」のように思えてきます(随分スケールが違う話ではありますが)。メガバンクの進めるトランザクションバンキングが、徹底した合理化による価格競争力の強化であるのに対して、地域金融機関は異なる攻め方をしていかないととても対抗できない。それが、顧客密着型のリレーショナルシップバンキングである、ということです。ここでいう顧客密着型とは、足繁く通って仲良しになればよいというような意味ではなくて、要すれば顧客をよく知り、顧客の収益向上に貢献することによって、「定価販売」であっても顧客に選ばれるような関係を作っていくということだそうです。スモール事務所の弁理士が集まるといつも出てくる話と、そっくりのような気がします。
 この本では、「定価販売」を実現するサービス業のビジネスモデルとして、
①コンビニエンスストア型(顧客の利便性を追求する)
②高級ホテル・高級旅館型(「おもてなし」で差別化)
③マツヤデンキ型(単なる量販ではない「街の家電アドバイザー」)
の3つを挙げ、①はコストに見合わない(サービス提供側が持たない)、②は顧客層がちょっと違うので難しい、よって③が最も近いモデルだろう、という分析をしています。こうやって当てはめてみると面白いですね。特許事務所も③が一番現実的な感じがしますが、「おもてなし」の意味によっては②もありかもしれません。が、少なくとも①(24時間オープンの特許事務所)は避けたいところですね・・・

地域金融論―リレバン恒久化と中小・地域金融機関の在り方
多胡 秀人
金融財政事情研究会

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