経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

総合アドバイザーは受動型か能動型か

2007-08-06 | 知財業界
 知的財産推進計画2007の知財人材育成に関する項に、弁理士の資質向上の1項目として、中小・ベンチャー企業に対する「コンサルティングやマーケティング、知財戦略策定等を含めた知的創造サイクルの全般にわたった総合アドバイザー」という理想像が示されています。
 この問題を考える際には、
<受動型> マーケッティング等の諸問題も理解して、経営者の意図を反映して知財業務を進める。
<能動型> 知財の知識を活かして、マーケッティングや研究開発その他の経営全般に対する提言やアドバイスを行う。
の2つのタイプに大きな差異があることをよく理解しておくべきだと思います。私個人の意見としては、専門職である弁理士は受動型に軸足を置くべきであり、能動型のスタイルには基本的には慎重であるべきだと考えています。
 
 ベンチャーキャピタルで投資を担当していたときの話ですが、あるベンチャー企業の社長といろいろ議論をして、その企業への投資を行うことがほぼ固まりました。ところが、その時期に資金的には余裕があったこともあり、顧問の会計士から「こんな時期に増資をするなんて、ベンチャーキャピタルの私利私欲に騙されてはダメだ」との横槍が入り、増資の話は流れてしまいました。資金に余裕があっても増資による財務体質強化の意味はある、我々は資金を出して一緒にリスクをとるんだ(逆に会計士はノーリスクで意見を言っているだけではないか)、ということを説明したのですが、ベンチャーキャピタルの一営業マンの言葉と偉い先生の意見では、全く重みが違って勝負になりませんでした。
 左程間のないうちに、その企業は資金繰りに行き詰って倒産してしまいました。純粋に資金繰りの問題であったなら、増資をして借入を圧縮していれば耐えられたかもしれません。

 そのときの経験から痛感したことは、
会社は、お勉強の成果を測るための実験動物ではない。リスクを共有する立場にない者(アドバイスが失敗に終わった場合に痛みを共有する立場にいない者、とりわけ中立性や専門性から経営者に信用されやすい立場にある者)が、経営判断を左右するようなアドバイスを軽率に行うべきではない。
ということです。そうした経験もあって、専門職として経営的な問題に関わるとしても、基本的には受動型に軸足を置くべきであり、能動型で関与していきたいのであれば、責任あるアドバイスができるような相応の経験を積むか(MOTで勉強してきたとかいうレベルの話ではありません)、あるいはリスクを共有するような立場に立つべきではないかと思います。尤も、そうしたレベルに達せずに能動型で関与しようとしても、そもそも経営者が耳を貸すかどうかが問題でしょうが。