昨年5月に「ナッシュ均衡」(Nash equilibrium)のジョン・ナッシュさんが交通事故で亡くなったとの訃報に接し、「そういえばオレ学生時代にゲーム理論のゼミに半年感だけ所属してたわ…」とはたと思い出し、数年前に買ったままタンスならぬ本棚の肥やしになっていた本書を手に取り、読み始めたものです。ナッシュさんはノーベル経済学賞を受賞していたのでてっきり経済学者と思い込んでましたが、数学者だったんですね。恥ずかしながらで今回初めて知りました…。
さて、本書のテーマであるゲーム理論というのは、今起きている問題がどのような構造で、何が原因で起きているのか、その全貌を「ゲーム」と捉え、その解決策を模索するものです。もともとはチェスやポーカーといったゲームで勝つ戦略の研究から生まれたもので、それがやがて数学の一分野として発展してきたものとされています。ここでいうゲームとは、①2人以上のプレーヤー、②戦略、③利得で構成されます。
上記①のプレーヤーとは、参加主体で意思決定者で、経済学で言う「合理的行動を取る個人」が想定されます。そしてここでいう合理的行動とは、③の自らの利得(利益)を最大化するような行動を指します。②戦略とはゲーム中でプレーヤーがどう行動するか、つまり局面局面でプレーヤーが利得を最大化するためにどう行動するかです。最後の③利得とはプレーヤーがゲームの中で得られる利益です。プレーヤーAとBがいた場合、Aの執る戦略と、Bの執る戦略により、それぞれが得られる利得は数値化されます。
また、ゲームには(1)同時ゲームと交互ゲーム、(2)協力ゲームと非協力ゲーム、(3)完全情報ゲームと非完全情報ゲームといった形である程度類別することができるとされます。同時ゲームは競争入札のようにみんな同時に意思決定するゲーム、交互ゲームは将棋やチェスのようなもの。協力ゲームと非協力ゲームとは、文字通りプレーヤー同士が敵対関係か共存関係か。そして完全情報ゲームと非完全情報ゲームも文字通り、各プレーヤーがゲームをめぐる環境について情報を得られているかどうか。有名な「囚人のジレンマ」(Prisoner's Dilemma)もここから生じます。
冒頭の「ナッシュ均衡」の話も出てきますが、これはつまり、多人数で交渉するような場合に、プレーヤーそれぞれがお互いベストな戦略を取ると、どの人も戦略を変更したくなくなる。つまり、必ず手詰まりになることを証明したものです。本書では、ゲーム理論の基本的な構造に加え、こうした膠着状態を脱する方策に関するヒントも含めて割りとわかりやすく紹介されています。とは言っても、日常の人間関係やビジネスはゲーム理論の「さわり」だけでどうこうできるほど単純ではなく、かつ人間はいつでも合理的な判断をするわけではないので、あくまで状況の理解や判断の際の「一助」になる程度のもの、ということなのだとは思いますが。
実際のところ、この理論は、ジャンケンから企業間の値引き競争、選挙、はたまた国際政治や貿易交渉までいろいろな「ゲーム」に応用はききそうではあります。ただ、結局のところ、自らの「利得」をどう定義するかによって「ゲーム」の内容や方向性が大きく左右されるところも大きいので、そのあたりに大きく主観や価値観の入り込む余地が大きそうではあります。
最後に余談ですが、ハリウッド映画「ビューティフル・マインド」(01年)はナッシュさんをモデルにした映画のようなので、ヒマな時にでも借りてきて見て見たいな、と思っています。
さて、本書のテーマであるゲーム理論というのは、今起きている問題がどのような構造で、何が原因で起きているのか、その全貌を「ゲーム」と捉え、その解決策を模索するものです。もともとはチェスやポーカーといったゲームで勝つ戦略の研究から生まれたもので、それがやがて数学の一分野として発展してきたものとされています。ここでいうゲームとは、①2人以上のプレーヤー、②戦略、③利得で構成されます。
上記①のプレーヤーとは、参加主体で意思決定者で、経済学で言う「合理的行動を取る個人」が想定されます。そしてここでいう合理的行動とは、③の自らの利得(利益)を最大化するような行動を指します。②戦略とはゲーム中でプレーヤーがどう行動するか、つまり局面局面でプレーヤーが利得を最大化するためにどう行動するかです。最後の③利得とはプレーヤーがゲームの中で得られる利益です。プレーヤーAとBがいた場合、Aの執る戦略と、Bの執る戦略により、それぞれが得られる利得は数値化されます。
また、ゲームには(1)同時ゲームと交互ゲーム、(2)協力ゲームと非協力ゲーム、(3)完全情報ゲームと非完全情報ゲームといった形である程度類別することができるとされます。同時ゲームは競争入札のようにみんな同時に意思決定するゲーム、交互ゲームは将棋やチェスのようなもの。協力ゲームと非協力ゲームとは、文字通りプレーヤー同士が敵対関係か共存関係か。そして完全情報ゲームと非完全情報ゲームも文字通り、各プレーヤーがゲームをめぐる環境について情報を得られているかどうか。有名な「囚人のジレンマ」(Prisoner's Dilemma)もここから生じます。
冒頭の「ナッシュ均衡」の話も出てきますが、これはつまり、多人数で交渉するような場合に、プレーヤーそれぞれがお互いベストな戦略を取ると、どの人も戦略を変更したくなくなる。つまり、必ず手詰まりになることを証明したものです。本書では、ゲーム理論の基本的な構造に加え、こうした膠着状態を脱する方策に関するヒントも含めて割りとわかりやすく紹介されています。とは言っても、日常の人間関係やビジネスはゲーム理論の「さわり」だけでどうこうできるほど単純ではなく、かつ人間はいつでも合理的な判断をするわけではないので、あくまで状況の理解や判断の際の「一助」になる程度のもの、ということなのだとは思いますが。
実際のところ、この理論は、ジャンケンから企業間の値引き競争、選挙、はたまた国際政治や貿易交渉までいろいろな「ゲーム」に応用はききそうではあります。ただ、結局のところ、自らの「利得」をどう定義するかによって「ゲーム」の内容や方向性が大きく左右されるところも大きいので、そのあたりに大きく主観や価値観の入り込む余地が大きそうではあります。
最後に余談ですが、ハリウッド映画「ビューティフル・マインド」(01年)はナッシュさんをモデルにした映画のようなので、ヒマな時にでも借りてきて見て見たいな、と思っています。
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