赤い彷徨 part II

★★★★☆★☆★★☆
こんにちは、アジア王者です。↑お星さまが増えました。

【映画】東京原発

2011-06-11 01:48:51 | エンタメ・書籍所感
震災以降、ネットで話題になっているこの作品をようやく鑑賞する機会に恵まれた。支持率の高い東京都知事が、都の局長級幹部を集めた会議で都内に原発を誘致するというトンデモ宣言を唐突にするところから展開する物語。04年公開の映画で、役所広司、段田安則、平田満、田山涼成、岸部一徳、吉田日出子ら、豪華俳優陣を揃えながら、原発事故前には自分も含めて世の中にはほとんど知られることのなかった作品。無論、知名度が低い理由というのは、恐らくは電力会社から相当な圧力が各方面にかかったんであろうことは今となっては想像に難くない。

鑑賞前はコメディ作品を想像していて、実際に全体的にはコメディタッチで描かれてはいるのだが、メッセージ性が非常に高く、時期的にも、関東地方、というか原発立地のない大都市圏に住む人間としては非常に考えさせられる作品。原発推進派の方も、反原発の方にもおすすめしたい。いや、実はこんな感じの「原発推進派」と「反原発」という"All or Nothing"な切り分け方こそが、両者をしてある種「宗教対立」的な議論に導き、結果として浅はかだった「原発安全神話」なるものを生み出したと最近では思っているので、そういう表現の仕方はできればしたくないのだけれど。

この作品を見て、福島での事故も、JALの経営破綻も、年金制度の破綻も、もしかしたら領土問題だって、どれもこれも、戦後ずーっと突っ走ってきて、今は疲れて足を止めている日本が「臭いものには蓋をしろ」的な感じで敢えて見て見ぬふりをしてきた「レガシーコスト」みたいなもんが噴出している現象なのかしらん、なんて思ったりして。そうそう、この作品の主人公であろう天馬都知事の「政策の打ち出し方」というのも、奇想天外ではあるものの、うなずかされることしきりで、そんなところもとっても勉強になった。

作品中には印象的なセリフが多数だったものの、個人的には「国のやることなんて誰も責任取らねえんだよ!」ってセリフが一番「ずしり」と来たかな。それは今回の原発事故の経緯を見ても明らかなことではある。ただ、他方でワクチン行政のように、行政に責任を負わせた結果として大いに遅れてしまうことになったような分野もあるわけで、橋下大阪府知事のように何でもかんでも行政に責任を負わせるやり方が本当に正しいのかってのは、なかなかハードコアだなあと思ってみたりするわけで。


そうそう、内容について多少の突っ込みどころはあるんだけど、知り合いが原子力関係者に聞いたところによれば、作品中に出てくる「数字」は概ね正確なものらしいので、そのあたりを踏まえてみるとより楽しいかも。

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