赤い彷徨 part II

★★★★☆★☆★★☆
こんにちは、アジア王者です。↑お星さまが増えました。

【本】新・マネー敗戦/岩本沙弓

2011-07-29 00:53:10 | エンタメ・書籍所感
仕事の取引先の方に半ば強引に「貸しつけられた」形で、どうしても感想を言わねばならないため(笑)読破したもの。外銀、邦銀のディーラーとして活躍し、現在金融コンサルタントおよび経済評論家として活躍している岩本沙弓氏の著書。読後からかなり時間が経過していることもあり、印象的だった話を列挙する形で。

・一番印象的だったのは、「市場は一握りのライオンと、大多数のシマウマで構成されている」という話。バブル崩壊や金融危機が発生するたびに「市場の信用収縮のリスクを防ぐため」という大義名分のもとに資金供給が積極的に行われる。そして、儲かったライオンの存在は忘れられ、損をしたシマウマの存在だけがクローズアップされて、多額の資金供給が行われる。シマウマの損害は、ライオンに収益として流れる。市場に資金が供給されて復活したシマウマは、またしばらくするとライオンの餌食となる。そんなわけで、著者に言わせれば「いつの時代も政府あるいは中央銀行から流れ出た資金は経済危機を通じてシマウマからライオンへと流れていく。この繰り返しだけのように見える」とのこと。

・マーケットのチャートには密やかに現れていた9・11テロの予兆のようなもの(つまり、事前に「米国に何かが起こる」ことを知っていた誰かがいた?)と指摘は、ある種都市伝説的な話かもしれないが、やっぱり興味深いところ。

・ドルが主軸通貨であることによって米国が享受してきた数々の利益、あらためて説明されると納得。

・ニクソン・ショック(1971年8月に発表された、ドル紙幣と金との兌換停止宣言)とは、(米国からみた)海外からの金の要求に対して、輸入大国となった米国が通貨信認の要である金の流出を恐れるため、「金の受け渡しを拒否した」だけではないかという指摘。金本位制のものでは、物を作らず消費ばかりしている(米国のような)経済は成り立たない、なるほどだった。

・ドルは原油の決済通貨としての地位を保つことにより需要を維持してきた。ドルからユーロへの地位が変わることにより、原油価格との相関性にも変化。イラク戦争など、ドルを原油の決済通貨から外そうとした国に対して米国がとった行動についても、実に興味深い指摘だった。